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カードレース・スタンピード!!  作者: 能登川メイ
episode11 最終決戦の始まり。千里vs???!!
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修行開始。未来へと向かう戦士たち!!

そして電子の世界。


ルイズの管理区域、ラバーズサイバーの地図にも乗ってない空間で。


錚々たるメンバーが、千里の前に立っていた。




《化学の担い手アルジ》✝

ギア4マシン ステアリング POW9000 DEF15000

【ゲーム中一度のみ/このカードを手札から捨てる】自分の残り走行距離を5減らす。

【デミ・ゲストカード】【自分の場にマシンまたはアシストが計四枚以上ある】このマシンはセンターに設置可能となり、【登場時】デッキからギア5カード一枚を選んで手札に加える、を得る。この効果で加えたマシンは、相手ターン開始時にセンターに重ねて呼び出してよい。




一人は、白衣を着込み銀のメッシュが入った青髪を靡かせる少年。




《極上の乗り手ユリカ》✝

ギア4マシン ステアリング POW16000 DEF9000

【デミ・ゲストカード】【センターがギア4である】場のこのマシンをセンターに置ける。

【バトル開始時/自分の下に置かれたカードを一枚疲労】コストカードが持つPOWとDEFを、バトル終了までこのマシンに加える。

【デッドヒート4(相手が走行する度に、自分の残り走行距離を4減らす。デッドヒートは一走行につきひとつしか適応されず、相手が【進路妨害】を行っている場合は適用されない)】




一人は、桃色の髪を広げ鞭を振るう女王。




《剛鬼の狩り手ルイズ》✝

ギア4マシン ステアリング POW  0 DEF20000

【デミ・ゲストカード】【ゴールキーパー(相手が残り走行距離を0にする行動を取るとき、このマシンを手札から呼び出せる。その後、このマシンの効果を先に処理してもよい)】

【二回行動】

【このマシンの、自分の効果による登場時】相手の残り走行距離を8増やし、このマシンは三度目の戦闘まで【進路妨害】を得る。




そして最後の一人は、青い装甲で構成された鉄巨人。


いずれも電子の幹部・Ai‐tubrに選ばれた綺羅星達だ。


「マリスは間違いなく防衛のキモにイベントを使う。その対策は俺たちもきっちりやっておかないとな!」


「ここには三人ものAi‐tubaが揃ってるのよ! 決戦まで一週間余り、なにもしないなんてもったいないじゃない!」


『そういうワケだ。さあ構えよ!!』


「ああまったくだ! んじゃお言葉に甘えさせてもらうぜ!」






「行くぞおおおおおおおおおおおおおおお!!」


今再び、魂の熱を練り上げろ。


さあ修行の始まりだ。













それからの数日は、黄金のように輝く日々だった。


「ーーハイみんな集合!! もうご飯の時間。頑張ってばかりだと体壊すわよ!」


「え、もう時間か! りょーかいすぐ行くぜ!」「拙者は大盛りでたのむ」


取りまとめるのはユリカ。宿泊室を解放し、防音ブースを貸し切りにして戦士たちをサポートした。


「ーーああ食べ終わったか? 片付けならやっておくから先に防音ブースに行っておけ」


「マジ? わりーなサンキュー!!」「拙者も手伝おう」


細かい粗を潰すのは傍楽。その名前の由来に反旗を翻し、傍にいるものの楽しさを保つ。


『ーーゆくぞ千里!! この剛腕を超えて見せよ!』


「おう! 全力でぶつかってやる!」「いざ!!」


厳しさを与えるのはルイズ。親としての視点が染み付いた彼女は、しかし誰よりも教える事を知っいてる。


そしてーーーー







「よっ。まだ作業してたのか?」


「あら千里くん。……ええ。追加しなきゃいけないカードが山ほどあるものね」


深夜、ゲームを修繕するのは良襖。彼女はゲームの創造者としてできることをやっていた。


「イベントカードのメタを構築、エネミーからのランダムドロップに高倍率で突っ込む。本来はAi‐tubaの過半数の指示が要るけど……今はステアリングキーがそれだけ揃ってるからね」


「……お前」


「心配しなくても、悪用なんてしないわよ」


くるりと向き直り、千里へと少し濁った……しかし光を得た瞳を向ける。


「これはあたしの『つぐない』だもの。二度と間違えるもんですか」


「……そっか。なら、いいんじゃねーかな」


「ありがと……あなたはそろそろやすみなさい。マリスとケリを付ける仕事があるんだから……ほら、そこのチエカマニアはグッスリよ」


言って見やるは、幸せそうな寝顔で大の字に横たわる或葉の姿だった……


「むにゃむにゃ……拙者がやるにござ……すやぁ」


「ったく……勝手に修行に付き合って勝手に疲れやがって」


「あら、心強いわよ? ……ああも熱烈なファンが居るってのは、ね?」


「そっか……ならいいよな。んじゃ、おやすみー」


「はーい……っと」


言って、布団に潜る千里とは違い、良襖はまだ作業を続行するつもりだ。


しかしその効率は、はっきり言って全盛期より悪い。


(くっ……魂の力が半分こなのもあるけど、やっぱりチエカの不在が痛いかな。彼女の電算能力には助けられてたものね……)


うつらうつらと揺らぐ視界。こんな時にも、チエカは七十億を愛する容量をもって元気づけてくれたはずだ。


だがそんな所にこそ、気が利くのが「この」少年だ。


ことん、と置かれたホットココアに、はっと振り返ると。


「……無茶しすぎんなよ。お前に体を壊されると俺が悲しい」


「ありがと。あんたの傍だと楽しく走りきれそう」


「こちらこそありがとう。……転ぶなよ?」


言うだけ言って、傍楽もまた布団に戻る。


ぬくもりを一口すすり、改めて気合いを入れる。


もうひと頑張りだ。







ここに来て、なにもかもが上手く行きはじめている。


そんな感覚を、誰もが抱いていた。


ただ一人を除いて…………








『ーートレーラー!!』


『なんのルイズ!!』


『な……巨影だと!? それじゃこのグレイトフルトレインは動けない!!!』


『そしてアルジャーノンで俺のコンボは完成する……』


『しまった器械コンボか!! ……仕方ないここで絶影を発動だ!!』


『馬鹿な!!! 2枚もだと!!? コイツ正気か!!?』


『『ちぃぃっ!!! サディスティック・ヘルドロップ!!!!』』


サーキットでは千里とアルジの熱い戦いが繰り広げられていた。


だが、高すぎる次元のやり取りについていけなくなっていた戦士が居た。


最初期から千里を支えてきたはずの或葉の姉、男勝りの女……丁場詩葉だ。


「…………レベルがエグすぎてなにやってんのかさっぱりだ」


「? わからんのか。今あそこでは高度かつ頭の悪いやり取りが繰り広げられているのだぞ」


「え、頭悪い戦術なのかアレ!? なんかとんでもなくエグいことやってるように見えたが!」


脳筋的な意味だろうか、と思いながら観察を続ける。


『くっ……俺の五キロ負けか』


『取り巻きが低ギアだったら俺がやばかった!』


『マッチルールによりデッキを弄るぜ。次はお前がステージを決める番だとっとと先行権を切れ』


『先行権は要らん、持て余すからな』『馬鹿な自殺行為だぞ!?』『イベントがあればそれで良い』『なるほどヒットポイントを頼りにしているという訳か!!』『そんじゃー二戦目始めよーぜ』『さあ来い!!』


「…………」


なんか、知らないうちにゲームの仕組みが変わってる気がする。


いや根本は変わってないんだろうが、どうにもアクロバティックなカードが多すぎて理解が追い付かない。


(ちくしょうなんなんだ。この最終決戦間近って時にオレだけなんもわかんねぇよ……)


思えばホムラ戦で瞬殺された辺りから、詩葉はいつも蚊帳の外だった。そしてその間に、ゲームの中身は別物レベルに変化を遂げていた。


状況に取り残された感覚。


異界に紛れ込んだ一般人になった気分。


皆が和解した状況で、ゲーム以外の役割を持てるかといえばそうでも無い。


必然的に、こう思ってしまう。


(オレはもう、お祓い箱なのか…………?)


誰からも頼られないという恐怖を、彼女は感じていた。






そんなある日。


「みんな、クッキー焼けたわよー」


「お、待ってました良襖のクッキー!!」


「なんだか食べるのも久しぶりよの」


ワイワイガヤガヤ、皆が集まる食事の最中千里が気付く。


「……アレ、詩葉は?」


「姉上? ならタバコ吸ってくると言って屋上に上がったが……なんだか話かけて欲しくないような雰囲気であったが」


「そうか? なら……」


「いいや話しに行け」


或葉の意見に割り込むのは傍楽だ。


「こういう時、放って置くのが一番まずい。この手のちっさい綻びが積み重なって俺たちは一度バラバラになったはずだ。だから見逃すな、千里」


「……ああ、お前の言う通りだ傍楽。ワリ、やっぱ話かけに行くわ」


「なに気にするでない。じっくりと話て来るといい」


信頼の目がそこにはある。


よく人の言葉を聞き、よく選び、そして全力で行動するものを止める道理があるものか。


「んじゃ呼んで来る。待てなきゃクッキーは先に食っててくれ!」


そうしてかけ出す千里を見送り、見えなくなった所で傍楽は振り返る。


「さて、千里はああ言ってたが……ここで先に一枚でもクッキーを食べたいと言い出す輩は居るか?」


その言葉に、全員が首を横に振った。






電子の旅路。それは一人の大人の問題提起から始まった。


彼女を抜かした結束など、彼らにはありえない。

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