スタンピードカードMiki 《ショコラクイーン・エレナ》&マアラ覚悟の末路。
《ショコラクイーン・エレナ》✝Chocolat_queen_
Helena…
ギア4マシン シュガーマウンテン POW10000 DEF15000
【進路妨害】
【常時】このマシンはコントローラーのカード効果では破壊されない。
【一ターンに一度/センターの下のマシンを疲労】このカードはターン終了まで、コストとなったマシンの効果を得る。
STPDー1で登場したカード。進路妨害に加え、コントローラーのカード効果で破壊されない耐性、下になったカードの効果をコピーする効果を持つ。
■概要✝
恐怖の暴食マシン 《菓子組みポッポ》と並ぶ、シュガーマウンテンにおける初期パワーカードの代名詞。
まずステータスが素晴らしく、攻撃力を削って程よく防御に振ったおかげで場持ちは上々。攻撃でもまずまずの活躍ができる数値で、進路妨害を含めて基本的な部分での完成度は高い。
それを底上げするのが、自爆への耐性と重なったマシンのコピー。
スタンピードの裁定では『コストで自軍の破壊を要する場合、実際に破壊できてなくとも効果を扱える』となっている。
よってこのマシンはその手のカードへの無限コストとして役立つ。 《魔弾の撃ち手マアラ》とのコンボはまさにベストマッチで、ドローに除去にと大立ち回りすることうけあいである。彼の走行能力は使えなくなるが、こちらが進路妨害で庇う限りマアラは安全のためさほど問題はない。
そしてコピー能力に関しては悪用の余地の塊であり、環境が進むごとにいくつものコンボが考案されてきた。
初期では 《シュクレフィレ・クラウド》の上に重ねてロックをしかけるのがベターだったが、後に登場したギア3ステアリング 《モンテクリスト》によって他の領域のギア2以下もコピーできるようになった。
極め付きはお立ち台とも言えるイベントの実装。【イベントラッシュ】にて 《厄災のパンドラボックス》からの 《絶望ーフィアーリジェクションー》で繰り出すことで、実質あらゆるカードにこのマシンを重ねて置けるようになった。
先に 《マアラ》を呼んでおく事であちらの魔弾を打つことも、素材を妥協した 《原典妖ー妲己威ー》の上に置いて即時覚醒させることもできる、 他のカードを疲労させて自身のパワーを倍化する 《クッキー・ボードアヴェンジャー》の効果を高打点から放つなど、相当に応用の幅が広い。
とはいえ、大半の攻撃用マシンは10000/15000のと防御に振ったこのマシンより自分のステータスを使った方が都合がいい。
色々と悪さはできるが、そもそも手数を使わず勝てるデザインのゲームなのでソリティア的な小細工も流行らないのも理由の一つか。
■環境にて✝
サービス開始直後から、上述の相方たちとともにシュガーマウンテン不動のエースとして君臨していた。
当時は高打点と凡庸性を兼ね備えたカードも希少であり、ロック効果と併用もできるため、このマシンを攻略するには必然的に余分に重量級のマシンを用意せざるを得なかったのだ。
かといって上級を呼ぼうにも、あのチエカでさえ 《必勝・ウイニングチェッカー!!》の直後は手も足も出ず、防御用のマシンとして申し分ないものだった。
結果、このカードの対策のためだけに 《ブラック・グリズリー》のような16000打点バニラを採用する場面さえ出てきた。
その後STPDー2後期頃から環境全体の速度が下がり、相手も腰を落ち着けて高打点の切り札を繰り出して来るようになってきた。
じわじわとインフレの波が迫ってきたが、新能力【デッドヒート】への防波堤の意味も込めて続投。次第に中継ぎの役割へと移った。
その後STPDー3本格期では新カードであるイベントが登場。その対抗策として 《クッキー・ボードアヴェンジャー》の効果をコピーし、たちどころに数万の打点に化けてイベントカードのHPを瞬殺する場面が見られた。
前述の 《厄災のパンドラボックス》から飛び出るようになったため、彼女自身を指して災いと呼ぶようにもなってしまった。
悪用の余地はまだまだある。彼女の今後は注意深く見守る必要がありそうだ。
■関連カード✝
《厄災のパンドラボックス》
《菓子組みポッポ》
実は、白い少年の話には続きがあった。
「ん……く。ここは……?」
『おはよう、Ai‐tubaマアラ』
暗い空間だった。紫水晶に囲まれていた時点で、マリスの個人空間だとすぐに気が付いた。
水晶が、手枷足枷のように伸びて少年の行動を縫い止めていた。
「……く。そうか、僕は、とらえられたのですね……」
『もちろんだ。詰めの作業の前に、イレギュラーがあってはマズイからな』
視界の少し先。仮面の奥からつまらなそうな声を吐くのは、宿敵マリスだ。
どうやらマアラの魂はこの電子空間に縛られているらしい……。そう整理した辺りで、カリポリと頭のパーツをかきながらマリスが語り出す。
『しかしまあ……やってくれたなこの演技派め。千里との戦いで自我が芽生えただぁ? よくまあ嘘八百を言えたものだ』
「さあ、なんのことでしょう?」
『とぼけても無駄だガキンチョめ。ただのあやつり人形がこの俺さんやシイカの目を誤魔化せるものか、この裏切り者め』
続く指摘に誤魔化しても無駄と悟る。
本当に、人の粗を探す才能はあるなとマアラは思った。
「たしかに……あの葛藤は『すでに通った道』です。なれどあの人との……千里さんとの戦いで再び心がたかぶったのもまた事実」
『だから捧げたっていうのか。理解できないな。だってそうだろう……お前は』
声からして、かわいそうなものを見るようだった。
『お前は……自分自身を倒されるための案山子として提供したんだぞ……?』
「なにをいまさら」
それがどうしたと笑い飛ばす。
彼の葛藤は、先駆の血と出会った時点で消し飛んでいる。
「敵役は倒されるのが仕事。まして本ゲーム最初の試練ともなれば、無限の敗北を味わうのは必然」
遊戯の敗北は罪ではない。
敗れてこそ輝くものもある。
「そしてその心は勝利の提供。僕が負ける時、僕と対面した誰かは勝つ! そこで次へ進む力を与えることこそが……」
ニイッと笑う。
あらゆる自由を奪われ、もう何一つできないというのに。
それでも折れない、綿菓子の中に隠された極太の芯が彼にはあった。
「ーーーー誰かを後押しする事こそが敵役の! 僕の! 衣音マアラの喜びです!!!」
『…………………………………………………ハハッ』
せめて、一矢くらいは報いただろうか。
そんな期待は、彼が相手では無駄なのだろうか?
言葉に打ちのめされたようなマリスも、すぐに持ち直して。
『……すげぇなぁお前。Ai‐tubaの中でイチバンの年下なのに、敵役の鑑みてぇだ』
讃える言葉の最中、水晶の帯が伸びる。まるで拷問ようの鞭のように、無数に構えられていく。
彼は他者の輝きを否定しない。
むしろ輝いたそれらを喰らい、自身の糧としていく。
『それだけの精神性だ、さぞかし借夏からも信頼されていたんだろう。俺が知らないことも知ってるよなぁ? 色々な事を話してもらうぞ、俺が知らない事を含めて…………なっ?』
「ははっ。やれるものならやってみせてくださいよ」
『いい威勢だ。だがそれがいつまでも持つかな?』
水晶の鞭の群れが、斧のような
(これでいい)
ここで退場する覚悟を決める。
(後のことはたのみました。僕のぶんまで電子の世界を盛り上げて……そして守ってください)
そうして眠るように瞳を閉じて…………。
ーーーーーーーーーーーーGOGAGYAGUBAGYAGOSYUBAKIBOKIGAZUGAGUSYAAAAAAAAAA!!
おびただしい数の衝撃が彼を通過した。
決して死は訪れない、世界一安全な『地獄の拷問』が始まる音が響いた。
それでも、マアラは見せつける笑みを崩さない。
決して。
決して……………………………………