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カードレース・スタンピード!!  作者: 能登川メイ
episode 10 色彩なき覚悟。千里vs???
141/190

弔いの戦場。千里が捧げる世界への献身!

一人佇む菓子の街。


電子の街角シュガーマウンテンは混乱が続いていた。


マアラ一人を倒した所で、全てが解決するわけもない。


やはりタギー社の長たるマリスを倒さなければ…………。


「…………」


「千里よ!」


「来たか。……終わった。今、終わった所だよ」


千里の元に駆け付けたのは、避難していたらしい或葉だ。随分慌てた様子だが……


「ゲーム全体がとんでもない事態になっている。良襖が権限を使って出入口を作ってくれた、すぐに帰還するのがよかろう」


「そうだな……」


或葉が怪訝な表情になる。千里の異変を察知したか。


「千里よ? いったいどうし……」


「色々聞いたんだ。色々な。おかげで結構、わかったことがある」


回れ右して或葉とともコースを降りる。


その最中に伝える。


「これまでの話をまとめてみると、全部繋がって答えが見えた」


状況そのものはなにも改善してないかもしれない。


それでも答えは得た。


「概要はこうだ。まず最初の問題として、俺が通っていたカードショップ『アーケディア』が潰れることが決まった。

だからアニキは俺のためにアーケディアのを代わりを見繕おうとした。それは間違いない」


借夏は自身のアルターエゴ、チエカと協力することで千里の問題を解決しようとした。


日常に関してはある程度上手く行っていたようだが、そこで調子に乗ったのが運のツキか。


あるいは、幸いか?


「だが、そこで協力者を探しているうちにとんでもない地雷を引き当てちまった。悪いコトする気マンマンのマリスだ」


「うむ。あの悪意の塊と繋がってしまったのは運がないと言うか……であるが、なにも彼にしか頼れないわけでもなかろう? チエカ殿のポテンシャルならば引く手数多であろうに」


「だが回避できない理由があったんだ」


考査はより深く切り込む。


「マリスの悪意には、例えどこにチエカを売り込んでも追い詰めるほどの執念があった。

同時に、チエカシステムがあっさり真似されかねないリスクも自覚しただろうし」


大前提として、借夏個人と大企業タギーとでは財力も権限も違いすぎる。


桁違いの手数が飛ぶのは目に見えてた。現にこうして、世界を壊しつつあるのはチエカシステムを真似て作られたシイカシステムだ。


霊体が霊体を道ずれにする現象は、ゾンビのように感染する権限でもあったのだ。


「地雷が作動するのは踏んだ時じゃない。その後に足を離した時だ。チエカシステムの仕組みはシンプル。ちょっとした気付きで真似されかねない。マリスに会った時点で、借夏には表向き協力する以外の道はなかったんだろーぜ」


故に利害の一致しない共闘が生じた。


このゲーム全体にはびこる矛盾の正体は、彼らふたりに加えて良襖やホムラなど、様々な思想が衝突しあった結果だったのだ。


船頭多くして船山登る。


ならば当然、唯一の頂点を目指す動きが出る。


「そしてマリスは、計画倒産のためのプランを練った。予め衝突しやすい配置にある人材をAi‐tubaとして採用し、ゲームシステムがある程度成熟し次第、余分な要素を切り落とすプランをな」


「では、今まで拙者らが辿ってきた道は……」


「だいたいはマリスの予想どおり。借夏の目的からして俺が確実に遊び来るとわかっていたアイツは、俺の事をAi‐tubaや良襖をすり潰す胃石みたいに使いやがったんだ」


まちがいなく利用されている場面はあった。特に魔王こと良襖を疲弊させてしまったのは千里のミスだ。


もう少し親身になって話していたら、まだ違ったのかもしれないが……。


「でも借夏だって負けちゃーいない」だが今は希望を拾うのが先決だ。「チエカやマアラ、時に自分自身を使って俺の心が折れないように強力にサポートする事で、逆にマリスにぶつける切り札に育て上げようとした。

しかもマリスにも秘密の切り札 《ガイルロードジューダス》まで用意して。おかげでアイツは、後のない戦場に引きずり出されることになった」


借夏にとって嬉しい誤算は、偶然にも良襖が同じ考えだったことだろう。この旅路の転機となったジューダスの目覚めの日、対タギー社の切り札として千里を覚醒させたのは彼女なのだ。


「そして結果は見ての通り。見事俺は悪意に対するカウンターとして成長し、世界を救うべく闘志を燃やす…………と。クソッタレな裏話は以上だ」


「……それは」


「あんまりだ、ってか? たしかに利用されっぱなしなのはいけ好かないし、どうしてちゃんと相談してくれなかったんだっても思ったよ。でもさ」


全てが明らかになった今、あれこれ難しく考えるのも面倒になっていた。


だからシンプルに心情を述べる。


「もういいんだ。今、めちゃくちゃドキドキしてるしよ」


「え……?」


「だってとんでもねー敵との真正面からの対決だぜ? 奴は今も成長を続けて、決戦の日にはどんだけ強くなってるかわかんねぇ」


マリスは明らかに、急速に成長している。自力でカードを作れないから良襖を引き入れたはずなのに、今では芸術品とすら呼べるイベントカードを自力で作成している。


まるで、関わった者の才能を吸収して回っているような脅威がすぐそこまで来ている。


「でも、それでいい。それがいいんじゃねーか。ここまで来たらなんでもこいだ。この際全部の経験をかっさらって思い出に変えてやる。

そんでいつか今日を思い出して笑ってやるんだ! 色々あったけど、結局めちゃくちゃ楽しかったよなってーな!」


「……千里よ」


「つまり、こっから先はムズカシイこと考える必要はねぇ。倒すべきはマリス一人だ。そいつにぶち当たるまで、ただひたすらに突き進みゃーいい!!」


開き直ったポジティブ思考。


肩の力を抜く。


事実は衝撃的なものばかりだが、逆に考えればいい。もうこれ以上の衝撃はないのだ、と。


或葉もそれに同調する。


「うむ。宜しい。大分、話がシンプルになってきたの」


「ああ。こっから先は駆け引きなし。アイツが山のよーにけしかけて来るはずの敵をぶっ倒すだけだ!」


迷いの霧は晴れた。


討つべきはたった一人。


硝煙が香る街角で、千里は唯一の敵を見据える。


ただしもちろん、その前には。


(きっと、アニキとも戦うことになる)


見据える敵がもう一人。


マリスも馬鹿ではない。いざというときの首輪くらいかけているはずだし、それを最大の切り札にしているはずだ。


辿りついた光の出入口に、足を踏み入れながら心だけで語る。


(待ってろよ、アニキ。全部が終わったあとで、全力で文句言ってから、全力で仲良くしてやんよ)

















覚悟を決めよ戦士たち。


これより待ち受けるは更なる激戦。むき出しの宿命は、予想のはるか上より襲いかかると知れ。






LAST battle count…………最後の戦いまであと6→5EPISODE。

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