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カードレース・スタンピード!!  作者: 能登川メイ
episode 10 色彩なき覚悟。千里vs???
136/190

礎の再戦・千里vsマアラ中編!!

時に、皆様はスタンピードカードMikiは読んでいるだろうか。




あれには各種カードの効果、応用法、環境での活躍など、該当カードに関わるあらゆるデータが揃っている。


その中でも必見なのが 《END of THE WORLD~星が終わる夜~》だ。パッと見では理不尽な暴力に見えるカードだが、その実は使用者敵対者の双方にヘイトが貯まらないように計算し尽くされた、芸術品とさえ呼べる一枚である。


しかしここで疑問が残る。


このカードを開発したのはあのマリスなのだ。開発当時、本来の担当である鳥文良襖はとっくに戦線を離脱しているはずだからだ。


何故、他力本願のマリスに、このような完成度の高いカードを作成できたのか?


それは。


ひょっとしたら。








再び舞台はサーキット。


またも対面したイベントに、千里は持てる力を尽くして挑む。


「…………俺はPOW10000になったアビス・ペイントで 《バブルコート》を撃破!!」




WIN アビスPOW10000vs5000→0HPバブル LOSE




痛車に踏み潰され、オーバーキルで弾け飛ぶバリアを眺め、今更ながらに千里は理解する。


「あー、イベントとの戦闘はこう処理すんのな……」


「そんなことも知らなかったんですか? 最強クラスのイベントを撃破して」


イラッと来る言い回しだが、千里は否定できない。


あの時 《~星が終わる夜~》を撃破したのは、良襖があらかじめ設定しておいたメタカードだ。千里だけの力では無いし、イベントカードに対する正攻法でもない。


「そーだよ。示された道を走るだけなら誰でもできるだろって言いてーのか?」


「逆ですよ逆」マアラはチッチッチッと指を振りながら。「あなたは横紙やぶりが過ぎます。基本というものを習おうとしない。基本は大事ですよ?

……バブルコートの破壊時の効果! 菓子組みポッポを疲労させて新たなバブルコートを手札へ!」


「一理ある」


たしかに、と自分を振り返る。


言われて見れば、千里の道筋は脇道裏道けもの道もいい所だろう。


ならばと問う。


「それで? ここでオマエがイベントカードのチュートリアルをやってくれるってのか? ……もう一度、今度はミスタートレーラーで走行!」


「みっちりとやってあげようじゃあありませんか! 手札からもう一度、バブルコートを展開! さあ攻撃してもらいますよ!」




WIN トレーラーPOW10000vs5000→0HPバブル LOSE




再びの破壊。


バブルコートのサーチ効果はコストが無いため使えない。


攻めるなら今だ。


「さあ行くぜ! 最後のアビス・ペイントで走行する!!」


千里のマシンが、ひとつの塊となって加速する。




千里残り走行距離……19→16




「さあ、これでターンエンドですか?」


「ああ、だがもう一手打つさ」


もう一声、それを詰め込んでこそ面白い。


「エンドフェイズ時、二台のアビス・ペイントはデメリットで破壊される。だがここで手札から 《リサイクル・ブースト》を発動!! 破壊されるマシンをアシスト化し、その度に1キロ走行する!」


マシンのマフラーが火を噴く。


圧倒的な加速が、先をゆくマアラを捉える。


「……へぇ?」





《リサイクル・ブースト》

ギア2【設置】アシスト スカーレットローズ

◆【自分のマシンが破壊される時】対象をこのカードの下に重ね、自分は1キロ走行する。





千里残り走行距離……16→15→14


マアラ残り走行距離…………………………14




両者が再び並び走る。


千里の楽しげな声がサーキットに響く。


「……っしゃあ追いついたぜマアラ!」


「ほぅ? この妨害の中でついてきますか」


「おーよ! じゃねーと意味がねえもんな」





「せっかくのイベントバトルだ。近くでもっとよく観ねーとなぁ?」


「なら、せいぜい目を焼かないように……僕のターン、ドロー! 僕は手札から 《シナモン・キャット》を呼びます!」




《シナモン・キャット》✝

ギア3マシン スカーレットローズ POW15000 DEF 0

◆【ダブルギア4】




「ここでダブルギアか……」


ダブルギアは、後に続く数字と同じギアにもなる効果だ。ダブルギア4ならギア4としても扱える。


そしてAi‐tubaのカードはいきなりセンターには呼べない。事前に同じギアをセンターに呼んでから横に並べる必要がある。


彼が来る。


来る!!


「ーーーー白く流れるは入道雲。振りかざすは雷迎の一撃!! 断末の時は来たれり、昇天の刹那に雷迎を聴き遂げるがいい!!」


口上が述べられる。


「現れよ我が移し身!! 《魔弾の打ち手マアラ》ッ!!」


雷光が走る。


音を遅れて連れてくる怪物が、凶暴さとともにやってきた。




《魔弾の撃ち手マアラ》✝Magic_bullet_MARA…

ギア4マシン ステアリング POW   0 DEF   0

◆【デミ・ゲストカード】◆【拘束】◆【自分マシン一枚を破壊/一ターンに二度】このマシンを回復する。この時コストでセンターを破壊していた場合、このマシンをセンターに置く。

◆【このマシンを疲労】以下のうちから一つを選択して使用する。ただし各効果は場にある限り一度ずつしか選べない。

●カードを二枚ドローする。

●相手マシン一枚を選び、ターン終了まで攻守を-15000し走行を禁止する。

●相手のDEF10000以下のマシン一枚を選択して破壊する。

●このマシンが走行可能であるなら使用できる。6走行する。

◆【常時】このマシンによる通常走行距離はゼロになる。





(テキストが、改善されてやがる……!!)


このゲームの進化を見せつけられつつ、余韻を引きちぎる勢いで戦局は動く。


「さあ走行です!! まずはシナモンで走行、続き僕の効果を発動! センターを破壊して僕を移動、効果で走行です!!」


目まぐるしい状況の処理が走る。


菓子の猫が号令と共に加速。木々を蹴飛ばしゴールを目指す。


しかしその速度が落ちかけた時……マアラは猫の頭蓋を砕いたのだ。


クロガネを喰らい、更なる力を得た魔弾でゴールを目指す。


だがそこに食らいつく影があった。


「おいおいつれねーな。そんなに焦るんじゃねーよ」


「!?」


千里だ。炎の塊となり、マアラに食い下がっていた。


相手のターンに走行する手段は、実はこのゲームに乏しい。


つまり。


「さては…… 《緊急サンプリング》と 《死炎印(デッドヒートスタンプ)》のコンボをつかいましたね?」


「おーよ! これでトレーラーを叩き割って、走行のための薪にしたってワケだ」




《緊急サンプリング》✝

ギア2アシスト スカーレットローズ

【使用コスト・自分の場か手札からカード一枚を破壊】

◆デッキから三枚をめくり、コストのギア以下のギアを持つカードのみ手札に加え、残りは捨てる。




死炎印(デッドヒートスタンプ)》✝

ギア3 ステアリング/チューン

《使用条件・自分マシンが破壊されるとき/手札一枚を捨てる》

◆ターン終了まで、このカードは使用条件となったマシンのRUNと同値の《デットヒート(相手が走行したとき、デットヒートの数値分走行する)》を得て設置される。




「こ、これはつまり……」


「俺はサンプリングのコストに、ギア3のトレーラーを選んだ。この炎はそいつの執念だ。オマエが走る度に、俺も三キロ走行する!」




マアラ残り走行距離……14→10→4


千里残り走行距離…………DH(デッドヒート)により14→11→8




食らいつく。


高速のサーキットで、マアラに遅れまいと千里も駆ける。


マアラも手を緩めない。


「最後に、ギア2のジェスターで走行。その後僕の効果で破壊して、効果で二枚ドローします……DrawBullet(ドローバレッド)!!」


「だったら俺もデッドヒートで走行だ! それと忘れてたが、トレーラーの破壊でもリサイクルブーストが起動するぜ?」


マアラが飴細工を踏み台にし、砕きながら加速する。


千里は執念の炎そのものとなり、砕かれた欠片をかき分け先へ進む。


先へ。


先へ!!




マアラ残り走行距離……4→2


千里残り走行距離…………8→5→4





気づけば両者ゴール寸前。


クライマックスはまもなくだ。


「これで僕はターンエンド。さあアナタのターンです」


「俺のターン、ドロー。……さーってとオマエに進路妨害は無し。このままガードがなにもなく攻め放題走り放題ってわけには……」


「この瞬間、手札の 《厄災のパンドラボックス》の効果発動!!」


「……いかねーよな」


苦笑する。


マアラの周囲が、再び壁に覆われて行くのを見た。


ただし、さっきよりも見るからに硬い。




《災害のパンドラボックス》✝

ギア3イベント ステアリング HP25000

◆【進路妨害】

◆【展開時/手札を二枚まで捨て札へ】山札から捨てた枚数+3以下のギアを持つ 《厄災のパンドラボックス》以外のイベントカード一枚を、このカードの下に重ねる。




「僕は手札を二枚捨て 《絶望ーフィアーリジェクションー》を重ねます。さあ、どうします千里さん?」


「……………………、」


簡単な話。


アレは名前通りのパンドラの箱。壊したら中身が出て、より酷い事態になる。


(イベントは、自分からは動けない……ここは様子を見て、次のターンに裏の手で……)


とまで考えて苦笑した。


それじゃぁ駄目だろ、と。


(こっちにいつも都合よくマスター・フォーミュラがあるわけが無い。他に奇策の類いも無い)


もとより、進路妨害がある以上逃げられない。


(だったら打ち破るしかねー。ここで逃げてたら、マリスとの決戦には勝てねぇ!!)


覚悟を決めた。


四枚の手札で打ち破ると。


パンドラの箱も、その中に眠る厄災も打ち砕くと決めたのだ。


「行くぜマアラ」宣言する。「真正面から打ち破ってやる。オマエらの大将がかんがえたさいきょうのカード群ってやつをなァ!!」


ビリリと響く空気が彼らの頬を擦る。


決着は、刻一刻と近づいていた。

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