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カードレース・スタンピード!!  作者: 能登川メイ
episode 9 愛ゆえのロンド。千里vsアルジ
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友の重み。千里vsアルジ中編・B

激戦の領域サイサンクチュアリ。


赤熱する摩天楼、その戦場はひとつではなかった。


「喰らいなさいわたしの攻撃!! サディスティック・ヘル・ドロップ!!」




WIN ユリカPOW40000vs30000タンジェントDEF Lose




清々しい爆裂。


敵兵の一角を討ち取っても、地獄の女王ユリカの気は晴れることは無かった。


なぜなら…………




『侵入者ヲ排除セヨ』『侵入者ヲ排除セヨ』『侵入者ヲ排除セヨ』『侵入者ヲ』『侵入者ヲ』『侵入者ヲ』『侵入者ヲ』『侵入者ヲ』『『『『侵入者ヲ排除セヨ!!!!』』』』




「ッ……ちょいちょい嘘でしょコイツら何体居るのよ……?」


敵兵の数は膨大。


逐一狩り進めてもキリがない。そもそもが電子の戦力だ。無限増殖する相手に挑み続ける事自体が不毛と言えよう。


「ああもう、こういう時に限ってあの浮世看板娘はどっか消えてるし……ッ!!」


「うヌゥ……ッ!!」


「げっ!!」


と、近所より仲間の苦悶が聞こえた。


敵の海を押し退け、苦戦する少女の元へ。


強引に掴んで撤退を試みる。


「ちょ……或葉ちゃん大丈夫!?」


「ムゥ……かたじけないっ」


或葉を救出し、敵を押し退け、ひとまずはと高台に避難する。


限界だ。


尽きることない人海戦術に勝てるわけが無い。


ぜぇぜぇと息を切らしながら、背後の壁面……否、扉を睨む。


「ああもう……敵の本拠地にはとっくに着いてるってのに……ッ!!」


そう。何を隠そう彼女達は、既に目的地……タギー社の前に辿り着いていた。彼女らもあとは入れば済むと思っていたのだが……




【警告・この先に進むには 《ステアリングキー》が必要です。ただし()()()()()()()()()()()()()()()




「ああもう! 思いっきり施錠済みじゃない!! しかもわたし思いっきりハブられてるしぃ!!」


「その……ステアリングキーとは?」


「あー……わたし達の衣装に、鍵みたいなブローチくっついてるでしょ?」


頭を掻きむしりながらユリカが、胸元に括り付けられた金色のブローチを強調して見せる。


「これがそうよ。幹部Ai‐tubaの共通装飾で、これがくっついてると特別な権限が受け取れるってワケ。

あの看板娘チエカちゃんも、どこかにキー持ちの個体が居るはずなんだけどねぇ……」


「なら、それらを探せば侵入できると……?」


「だといいけど……この状況じゃあちょっとねぇ?」


再び、回転翼の羽音が響く。


「やっぱ来た!! コイツらの相手しながら協力者探しなんてムリ!! あとはわかるわね?」


「うむ……同じAi‐tubaであるアルジを、千里が倒して連れてきてくれるのを信じて待つ……と」


「そーいうこと。……ま、重要な所が人任せってのは気に食わないけどね」


方針は決まった。


ここで逃げたら、次のチャンスがいつになるかも分からない。


仲間を信じて突っ切るしかないだろう。


「全くもう……千里くーん? こんな綺麗どころが期待して待ってるんだから、負けたら承知しないわよー!!」


「それは言い過ぎとしても……まあ、期待には答えてもらわねばの」


そうして、二人の麗しき戦姫は再び敵に挑む。




ーーーー頑張れ、千里。負けるな、千里。


勝利信じてを待つものが居るのだから…………。





4ターン目


千里残り走行距離…………15


アルジ残り走行距離………12




千里の反撃が始まる。


「……俺は手札から 《パイクリート・ライド》を呼び出す。ギア1扱いのコイツが場に出た事でコズミックエッグの効果が起動、同じマシンをもう一台山札から呼び出す……!!」




《パイクリート・ライド》✝

ギア2マシン スカーレットローズ POW8000 DEF8000

◆【ダブルギア1(このマシンはギア1としても扱う)】

◆【センターの一番上がギア2マシンでない場合】このマシンのPOWとDEFは半分になる。




最下級としても扱う、ただそれだけのマシン。


しかしこれが妙に役立つ事を千里は知っている。


「そしてバトルフェイズ。コズミック・エッグで走行して……手札から 《絶影・スナイプシュリーカー!!》を発動」


「ほう!」


アルジが感心したように目を見開く。


それは下で戦っているユリカの必殺技だった。


みしりと、地の底が砕けるような音が響く。




《絶影・スナイプシュリーカー》

ギア1アシスト ステアリング

◆【バトルフェイズ】捨て札から、場のマシンのギア以下のマシン一台を選択し、POW+3000して場に呼び出す。その後、場のマシン一台へ攻撃したものとしてバトルを行う。

この効果は 《極上の乗り手ユリカ》の効果としても扱う。




早い話が強化蘇生。


それもバトル一回のオマケ付きだ。


「効果で甦れ 《ダークキリギリス》! そしてバトルだ、ヴァイラスヴェントに攻撃!!」


周囲に立ち尽くすビル壁が弾ける。


号令に従い、ダークカラーの狩人が復活する。


反逆の始まりだ。




WIN キリギリスPOW7000vs6000DEFヴァイラス LOSE




一閃両断。轟!! と音を立ててまずは一台撃破。


敵機の爆裂を見届けた複眼が、次に睨むは強化をばらまいたモノリスだ。


「続いて、キリギリスと一台目のパイクリートで連携攻撃! 吹き飛べ絶命ドライバー!!」


小豆氷の上に騎乗し、ターゲット目掛け滑走する。


顋が唸る。




WIN 二台連携POW15000vs11000DEF絶命ドライバー LOSE




梵!! とこれで二台目も爆散。


アルジは動かないが、千里は成すべきことを成すだけだ。


「まだだ。自身の効果で回復したキリギリスと二台目のパイクリートで連携攻撃!! 対象はコサインだ!!」


うなりを上げて敵を刈る。


勝利のための殲滅だ。




WIN 二台連携POW15000vs12000DEFコサイン LOSE




三台目も爆破。


前のターンに千里に攻撃を仕掛けたマシンはこれにて一掃された…………が、無論その程度では止まらない。


最下級三枚が場に並んでる。


お馴染みの逆転札の出番だ。


「まだ行くぜ。三台のマシンを重ねて手札から《必勝! ウイニングチェッカー!!》を発動!!」


手札から、勝利に向かう力が溢れた。





《必勝! ウイニングチェッカー!!》✝

✝Winning_ran_checker…

ギア1アシスト ステアリング

【三枚のマシン置き場それぞれからギア1を一枚ずつセンターに重ねる】

◆《勝利の導き手チエカ》一枚を作成し、センターに重ね呼び出す。その後このカードをセンターの下に重ねる。この効果は《勝利の導き手チエカ》の効果として扱う。




今度はチエカの必殺技。


黄金の嵐が吹き荒れる。


三枚のマシンを統合したゲートの向こうから、ノリノリの口上と共に『彼女』はやってくる。


『ーーーーやあ我こそが道しるべ。行先照らす千遠火!! 夜明けを告げよう。この走りこそが勝利を証明すると知れ!!』


「来やがれ看板ド有能!! 《勝利の導き手チエカ》で走行!!」


「あいあいさーッッッ!!」


不敵に戦場に躍り出るは、金髪碧眼の勝利の女神。


我らが最強ヒロイン、御旗チエカだ。




《勝利の導き手チエカ》✝

ギア4マシン ステアリング POW14000 DEF11000

◆【デミ・ゲストカード】

◆【二回行動】

◆【このマシンがバトルに勝利した時】このマシンをセンターに移動できる。

◆【このマシンの破壊時/センターに置かれたカード二枚を取り除く】破壊されたこのマシンをセンターに呼び出す。




「チエカッ…………!!」


「………?」


その姿が躍り出た瞬間、アルジの顔があからさまに曇る。


疑問を感じたが……しかし構うより先に彼を抜き去る。




千里残り走行距離……15→14(コズミック・エッグの走行)

→10→6




王手はかけた。それだけに抑えた。


下手にゴールを狙おうとして、何らかの反撃が飛んで来たら台無しなのは前のターンでわかってる。


「これで俺はターンエンド……ふぃー、何とか次でカタが付く所まで来たか」


「…………」


「…………む」


先程から、アルジの雰囲気は暗い。


どちらかといえば、千里の知る……そして戦闘開始前の雰囲気に戻ったような。


と、()()()()()()()空気を読まずにチエカが煽りにかかる。


「おやおやー? なんかテンション下がってるぽいですけどどーかしましたかねー?

もしかして、わたしが出てきたことでピンチに追い込まれちゃってたりします?」


ーーーーギリィ!!


「ヒッ…………」


「……んや別に。ちょいと腹立つ事思い出しただけだ首を戻せ。……戻せってんだろこっち向くな潰すぞ」


「は、はひ………」


一旦は気圧されるも、一泊置いてから囁くように。


「(()()()()()()()()())」


「(りょーかい。サンキューチエカ)」


連携は阿吽。


ヒントを受け取る流れに滞りはない。


いい加減、彼の心情を暴くべきだろう。


(ーーーーつまるところ、アルジ=傍楽はチエカが邪魔なワケだ)


彼は「立場」にこだわっていたはずだ。


誰かが誰かを嫌うには理由がある。それも、千里達と別れてからできた理由。


(あいつからチエカ嫌いの話なんて聞いたことがない。だったら、チエカはあいつの「今」に関わっている? それも良くない方向に)


「(おいチエカ……お前なにか、アイツにやったか? なんかこう「立場」に関わること)」


「(? なんもしてませんけどねー? ワタシと彼とはサービス開始来の付き合いですけど、険悪になるのはこれが初物ですね?)」


だよな、と向き直る。やはり今更裏切る心当たりに乏しい。


強者にして小間使い。無尽のトリックスター、チエカが彼に対してなんの害を与えただろうか?


彼や千里や或葉の級友にしてゲームマスター・良襖の無二の相棒たる彼女になんの恨みがあると?


少なくとも、今は千里達の味方なのだし害はないと思うが…………


「…………あ」


「……? どしました?」


「いや。わかったかも」


そこで気がつく。


彼は立場にこだわっていた。


そこを軸に思考すれば……


「……………………まさか?」


かちり、と歯車が噛み合う音が聞こえた。


そんな千里の事を構わず、彼はレースを進行させようとする。


「行くぞ、俺のターン…………」


「待った。その前にはっきりさせなきゃならないことができた」


制止。


スピードの世界では愚行とも言うべき手を打ってまで、確認するべき事だった。


ここをはっきりさせなければ致命傷になる事だと直感した。


()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


息を吸い、息を吐き、核心にそして真相に迫る。




「お前さ…………今の『立場』を楽しんでるよな?」




「……………………、」


「千里…………、サン……?」


三者に緊張が走る。


千里は、もはや大局を理解していた。


もつれた蔓の、種明かしが始まる。

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