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カードレース・スタンピード!!  作者: 能登川メイ
episode 9 愛ゆえのロンド。千里vsアルジ
100/190

恐怖のマグネスイッチ!!千里vsアルジ前編。

千里の親友、傍楽は無理をしている。


金も人質もなく、立場だけをもって千里たちと敵対していると言うが、ならば敵という立場へ縫い止めるものはなにか。


その真意にたどり着くためのパーツはまだ足りない。


探る必要がある。


そのための勝負だ。




先駆千里よ。断じて、蹂躙するのみの戦いにするなかれ。







…………という話の流れになるはずだったが。


「ーーーーふんふふんふーん、ドゥドゥドゥドゥドゥドゥ…………

俺の彼女はキ○ークイーン、右手はレーザービーム砲さ…………アレ、違ったっけ」


「…………」


何故か聞こえてきた歌声に、彼自身への心配の気持ちがみるみる萎んでいく千里。


透明のサーキットを駆けながら、もっと別角度の心配を投げかける。


「……あーあれだ、なんの曲かは知らねーが。自分の曲じゃないなら正確に歌わない事を勧めるぜ。

お前はゲームのキャラクター役で、その立場じゃあJASRACだかなんだかがめちゃくちゃうるせーと思うからよー」


「おっとそれもそうだな。茶目るのもこの辺にして……まずは先行後攻でも決めるか?」


チッ、と舌打ちが出るほどに雰囲気は軽い。


別人を着込んだような気味の悪さに、たじろぎながらも意地を張る。


「そーさな。んじゃあお前好きな方取っていーぜ。俺は『お邪魔させて貰ってる』立場なんだからよ」


「ほう? なら遠慮なく貰うが…………後悔するなよ?」


コキリと骨の鳴る音が聞こえる。


ゾクリと来る威圧が飛ぶ。


「俺のターン、先行ドロー。

…………ファーストマシン、《処方戦車ジェネリック》で走行」




アルジ残り走行距離…………20→19




「そしてその効果を起動。自分ターンに一度、手札を全て捨て、同じ枚数分ドローする」


「…………? なんだ? 手札交換のカード……………?」


手札交換はカードゲームでは良くあること。それ自体は珍しく無いが、


だが、そこに付随する効果は…………




《処方戦車ジェネリック》✝

ギア1マシン サイエンスサンクチュアリ ATK2000 DEF2000

◆【()()()()()()()S/一ターンに一度/走行終了時/手札を全て捨てる】捨てた数と同じ枚数ドローする。この時ギア2を引いたなら、可能な限り場に置いても良い。




「ちょ…………!?」


不穏すぎる文面を見つけた。


マグネスイッチと言えば、たしかかの悪名高い「クソ鳥」のナーフに使われた…………!!


「そして、ドローカードの中からギア2のカードを好きなだけ『スイッチを押して』呼び出す!!

俺のドローカード六枚の中にギア2のカードは三枚!! さあマグネスイッチよ起動せよ!!」


一言で言えば制約の無視。


本来は困難なはずの条件が、いとも容易く満たされてしまう。


炸裂する。


理不尽にすら思える戦術が披露される。


「現れよ 《キルハルピュイア》《バイオカプセル》《極楽カラス》ッ!!」




《キルハルピュイア》✝

ギア2マシン ヘルディメンション POW5000 DEF5000

◆【進路妨害(相手は走行及び進路妨害持ち以外への攻撃ができなくなる)】

◆【マグネスイッチN(マグネスイッチSを持つカードの効果で場に出たなら有効)/場を離れた時】カードを一枚ドローする。




《バイオカプセル》✝

ギア2マシン サイサンクチュアリ ATK4000 DEF4000

◆【マグネスイッチN/登場ターン終了時】相手は次に行う走行または攻撃を無効にする。




《極楽カラス》✝

ギア2マシン サイサンクチュアリ POW3000 DEF3000

【極楽カラスの効果は一ターンに一度のみ起動する】

◆【マグネスイッチN/登場時】相手は手札を一枚捨てる。




「ああああああああぁぁぁ!! また来やがったかクソ鳥ィ!」


キルハルピュイア。かつて千里を散々っぱら苦しめた怪鳥だ。


その悪夢みたいなスキル構成のせいで強烈な弱体化(ナーフ)を食らったのだが……タンジェントの能力は、そのナーフを踏み倒すような豪快すぎるものだった。


しかも。


「てか待てよ! サイサンクチュアリでもないそいつが混ざってるって事は…………!!」


「ああそうさ。俺のデッキは【サイサンクチュアリ】と【ヘルディメンション】の混成デッキ。

双方のイメージカラーをもじって【水黒スイッチ】とも呼ばれているな」


となると、先程の手札交換の意味が一気に変わってくる。ヘルディメンションは墓地利用のテーマだ。


大量の手札を捨てられるタンジェントは、極めて優秀な『墓地肥やし』に化ける。


千里史上初めてとなる混成デッキとの対戦。


今から終盤が恐ろしい。


だがそれ以前に、今まさに大惨事が起ころうとしている。


「さあまずはこのゲームのルールを処理だ! カードレース・スタンピードでは往復ターン数を超えるカードが場に出たなら手札に戻す。

だがこの時、登場時及び退場時の効果は発動する!! 三枚分のアドバンテージを取らせて貰おうか!」


戦局が唸る。


三枚のマシンが手札に帰還し、しかし恩恵は全て降り注ぐ。


「まずは極楽カラスの登場時の効果。お前の手札を一枚捨てる!」


虚空より突き出た嘴が、千里の手札が一枚を啄み。


「さらにキルハルピュイアの効果。カードを一枚ドロー!」


怪鳥が撒いた羽のひとひらがアルジの手札となり。


「そして俺はターンエンド。この瞬間、バイオカプセルの効果でお前の行動を制御する!」


ガコン!! と千里が巨大カプセルに幽閉される。


「…………うわぁ………」


遠くを駆けるアルジを眺め、開きに開いたアドバンテージの差を確認する。


こちらが手札四枚に対して、相手は七枚。


しかもこちらの出鼻を挫くカプセルが厄介だ。後攻一ターン目は妨害無しで走行距離を稼ぐチャンスだというのに。


第一。


「どうした千里? この程度の戦術で圧倒されているようじゃあ俺には敵わないぞ?

ましてや俺たちの大将を討ち取るなんて夢のまた夢!! なんのために来たのかわからないなぁ?」


レースが始まってから、なにやら深刻そうなはずだったアルジの態度が別人のように軽い。それまでの心配が馬鹿らしくなるくらいに。


(なんだこの違和感は? だんだん腹たってきたぞ?)


苛立ちは行動へ。


細かい事はぶちのめしてから考える事にする。


「……そーかよ。そーいう態度なら思いっきりやらせて貰うぜ!

俺のターン、カードドロー!! まずは《アドバンス・フォーミュラ》を呼び出す!

さらにファーストマシン《コズミック・エッグ》の効果! 呼び出されたギア1を複製する!」




《アドバンス・フォーミュラ》✝

ギア1マシン スカーレットローズ POW 0 DEF 0

◆【常時】自分マシンの走行距離は全て+1ずつされる。




《コズミック・エッグ》✝

ギア1マシン ステアリング POW 0 DEF 0

◆【潜伏(このカードの効果は、上にカードがあっても適応される)】

◆【任意-自分の場にギア1マシンが置かれた時/このマシンを疲労】発動条件となったマシンと同名のマシン一枚を山札から一枚選び場に呼び出す。




「さらにもう一台!! 《ダーク・キリギリス》をセンターに重ねる!!」




《ダーク・キリギリス》✝

ギア2マシン スカーレットローズ POW4000 DEF2000

◆【二回行動】




カプセルに囚われた千里の回りに三台のマシンが並ぶ。


そして怒りを込めて宣言する。


「アドバンスフォーミュラ……叩き割れ!!」


フォーミュラが後退し、そして加速しーーーーガシャアアアアアン!! とカプセルを叩き割る。


冷めた瞳の千里が、ダークカラーのバイクに跨る。


走り出す。


走り出す!!


「行くぞ。まずはアドバンスフォーミュラで走行!! この走行距離は、フォーミュラ二枚の効果で2追加される!!」




千里残り走行距離…………20→17




「さらにダーク・キリギリスで走行! キリギリスは一ターンに二回行動できる!!」




千里残り走行距離…………17→13→9




一息にアルジを抜き去って、さらに先へ。


コースの半分以上を、最低限の消費で走り抜く。


「フゥウウウウウ…………何が夢のまた夢だって? 生憎とここまでそれなりにヤバい橋渡ってるんだ。

お前んとこの大将の、さらにその上のラスボスみてーなやつだって倒してる! 今更負けてたまるかよ……!!」


「……ほう?」


感心したように言葉を吐く。


だが余裕は崩れない。


まだまだこれからだという空気だ。


「…………俺はこれでターンエンド。お前のターンだぜ!」


「俺のターン、ドロー…………再びタンジェントの走行。と同時に効果発動。八枚の手札全てを捨ててその枚数分ドロー!」




アルジ残り走行距離…………19→18




強烈な手札交換。


無論そのあとは。


「そして、その中にあるギア2を全て場に呼び出す!! 出て来い、俺の愛機共!!」


八枚のドローカードから、当たり前のように三台のマシンが登場する。


その内容を確かめるより先に次の手が来る。


「更に手札から《緊急ピットアウト》を発動。自分のセンターの上に、一つ上のギアを持つマシン一台を重ね呼び出す!

ーーーー神の手に編まれし者よ来たれ!!」




《緊急ピットアウト》✝

ギア2アシスト ステアリング

◆【バトルフェイズ/場のセンターと同じまたは一つ上のギアを持つマシンを選択】選択したマシンを自分のセンターの上に重ねて呼び出し、このカードをセンターの下に重ねる。




「現れよ!《反応炉心コサイン》!!」


宣言と共に、光輝くマシンが現れる。


あれが更なる連撃の起点となるのだろう。


激戦は続く。


アルジこと傍楽の真意はまだ知れない。


千里は思う。


(ものっすごく違和感がある!! 絶対アイツは何かを誤魔化してる筈なんだ。

待ってろ傍楽。そのチャラついた演技の仮面をひっぺがしてやる!!)


改めての決意を胸に、千里は戦場をひた走るのだ。




千里残り走行距離…………9


アルジ残り走行距離……18




圧倒的な距離の差に、しかし千里は慢心しない。

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