神は意外と人間臭いようだ
全裸の変態美少年が私の拳で吹っ飛んだ。
飛ぶといっても数歩下がって尻餅をついただけなんだけど、殴られた胸に手を当ててキョトンとした顔で私を見てる。
全裸で股をひろげて座り込んでるソイツは、股の間にあるブツをおったてていて、隠す気もないようだ。年齢は12〜13歳程に見えるが、小柄というわけではないし、言ってしまえば思春期の少年風の百歳オーバーのジジイ。
もうやだ。
死んで欲しい。
「キモい、キモい、キモい。なんなの。股閉じろよ変態。なんなんだよ」
キモい、キモい、キモい。
「リザ様の力が私の体内を巡ってると思ったら、興奮してしまって」
血を舐めて興奮した。と。
やだ。リザを感じれば、リザじゃなくてなくても良いとか恐怖だよ。身の危険を感じるよ。もう、嫌悪感でいっぱいだ。
「もとより、私は人間だったのです。百年以上前に贄として差し出された先で、リザ様によって力を与えられ、神の使いとして白蛇の姿になったのです」
私に言われて股を隠しながらソイツは語った。
「今の姿は、白蛇になる前の姿。与えられた力に差はありますが、今の貴女と似たようなものです」
人間が力を与えられて神の使いになった白蛇。神と同調し力をてにいれた私。確かに、似てはいる。リザは光であり実体が無かったようだが、私たちには肉体がある。同じだ。
つまり、私は白蛇と同じく老いなくなったのか? この先百年以上生きるの?? 何だそれ。絶望。生き地獄。
「とにかく、蛇に戻れ!! 服手に入れるまでは蛇でいろ!!」
「せっかく、貴女に合わせたというのにワガママな」
呆れたようにため息をはく白蛇。
変態よりましだし!!
蛇の姿に戻った白蛇と話し合う。
白蛇に対する不信感は消えないが、私も早急にリザを復活させないといけない理由が出来た。
さっさと復活してもらって、私から不老なんてオプションを取り除いて貰わなければならない。
まずは、文化的に生活できる拠点を作るべきだろう。
あんな湿った洞窟で生活するのはゴメンだし、信仰する対象が土人みたいな生活してたら、どんなに良いことをしても認めたくも信じたくもないだろう。そこそこ豊かな生活は必要だ。
それで、何か使えるものが残ってないか……と、
以前、人の住んでいた集落を白蛇に案内させる事にした。
もちろん、私はリザの力を手に入れたとは言え、能力を把握していないので白蛇の結界の中に入っての移動だ。
森の中を進みながら、ふと、訊ねてみる。
「神って、やっぱり、たくさん居るよな?」
リザだけって事は無いはずだ。リザだけなら、トルニテアには宗教が無いと言うことになるしな。
人間の数はある程度決まってるだろうから、より強い力を手に入れるために、神同士の信仰の奪い合いが起こる可能性も視野に入れて置かなければならないだろう。
多神教であれば問題無いだろうが、絶対神、一柱の神を崇めよ。他宗教の神は邪神だ。なんて教えのある宗教があれば戦争が起こるはずだ。
「えぇ、色々と信仰の規模は異なりますがトルニテアには複数の神が存在します」
元々、神とか信じてなかったけど、目の前で白蛇と会話ができて、不思議な光から謎の力を授かったのだから、もう、存在の否定をする訳にはいかない。
ま、トルニテアに限っての事だけど。
地球にて、神が、しかも複数存在してるってんなら、世界中の不幸をもう少し減らせるだろって思うんだ。
地球での神の役割は、人の心の柱になる事であって、人間の作り出した大変立派な虚像に過ぎない。そう思って生きてきた。
「神は全知全能であり、得意不得意はありますが、基本的に出来ない事はありません」
出来ない事がない?? だとしたら、神って、結構クソ?? 人間駒にしてジオラマ眺めるみたいにして遊んでんの?
「恋愛の神は、他者の恋路を見守るのが好きですし、戦の神は、力を振るうことを好みます。商いの神はお金が好きです」
え、なにそれ。趣味嗜好が影響してるの??
「仮に、あなたが神の力全てを手に入れたとして……不幸な人間を助けますか??」
白蛇蛇の問いに私は迷わず答えた。
「そんな面倒なことしない」
え、ヤダヤダ。他人の面倒なんか見たくない。私みたいな性格の神がいたなら、滅びの道しか歩まないだろ。なるようになるだろの精神で、世界、人間、放置しますわ。
慈悲深い、性格のいい神様ばかりだったらの世の中は平和になるって事だな。人間にも言えるけど……全員が他人を慈しむ心を持っていたなら争いは起こらないだろう。
その点、神もどこか人間くさいとこがあるんだな。と、それなら、世の中が荒れたりするのも納得だ。と、小さく息を吐いた。