やる気のない神は衰退する運命のようだ
歩き始めから二時間程だろうか。
正直、時計無いからわかんないけど……。白蛇があと一時間と言った場所が、歩き始めの場所と洞窟の中点くらいだったから二時間くらいの道のりだったのだろうと予想がつく。
てか、二時間って相当だからな。荷物もなくて身軽だったからそこまで無いけど、足はパンパンだ。
やっとの事で
神のいる洞窟にたどり着き、穴の中に足を踏み入れる。
もちろん、白蛇は洞窟に着いた時点でポイした。
一時間肩に爬虫類乗っけてたなんて……。恐ろしい。
変に力が入って肩が痛いわ。
洞窟の中は暗くて、ジメジメしていて、奥行きや高さはあまりなく、全長10Mほどあるだろうか? 奥の方に少しだけ明かりが見えた気がした。
「ただ今戻りました」
とか、白蛇がテレパシーで神に言ったんだろうな。光の方から「おかえりなさい」と声がした。
おかえりなさい。の声は頭に響くタイプの声ではなく、耳から聞こえる普通の声。なのに、どこかで聞いた事のある声だ。
…………。
あ、
白蛇の声と同じじゃん??
「ついに戻ってきてしまったのですね……」
と、神と思しき光は少し憂鬱そうな声でそう言った。
「私は、蛇達を束ねる神で、名をリザと言います。貴女のお名前をお聞きしてもよろしいですか」
白蛇が心を読めるのなら神も読めるんじゃないの?? とか思ってしまう。捻くれた私。
「緑川 緋乃」
「ありがとう。ヒノが名前でよろしいですか?」
コクリと頭を上下させて肯定した。
丁寧な言葉遣いでえらく腰の低い神だな。なんて思う。
「ここに来るまでは声を出さずに会話をしてきたかもしれませんが、私に仕える彼に人の心を覗く能力を完全に渡してしまいましたので、私とお話しする時は声を出してくださると助かります」
と白っぽい光はそう言う。
なんでも、人の心が読めるのはすごくストレスになるし、面倒かつ不愉快なので白蛇に渡してしまったらしい。
なんていうか、この神……ダメ人間というか、メンタル弱そうだな。
「この度は、全く無関係な貴女を巻き込んでしまった事をお詫びします。ただ、来てしまった以上、簡単には返せないので、この世界で過ごしていただくしかありません。出来るだけサポートはさせていただきます」
「巻き込まれたのは腹たつけど、帰れないとか、その辺は仕方ないし、別に帰る気も無いからいいわ」
どうしょうもない事は考えても仕方ない。
私的にはサポートがどんなモノかが気になるところだ。
この、蛇の神はいったいどう言った能力を持っているのか。
私がすぐに頭に浮かぶ蛇の神はメデューサや女媧。あとは、ラミアとかも含まれるのか? それともあれはモンスター枠?
白蛇が使いの女神なら弁財天もいる。
蛇の神は大層な奴ばかりだ。
まあ、地球上の神話の神々と重ねたところで無駄なんだろうけど……
「そう、言って頂けると気が楽です」
「ところでさ、信仰を代わりに集めろ的な事を白蛇から聞いたけど、そこの所詳しく教えてくれない?」
なんか、色々、衝撃的過ぎて忘れてたけど、今思うとあの白蛇の奴、最初に「神と同調して……」とか言ってた気がするんだよな。聞き違いでなければ。
同調って……なによ?
「信仰を失った神を待つのは死のみです。信仰をするのは人と言う種族に限ら無いのですが、人の信仰を集めるのが、神が力を持つ手段としてとても有効なのです」
因みに、私は人からの信仰はほぼ無くしてます。と付け加えていたが、白蛇から聞いて知ってる。
そもそも、この神は、死ぬのがわかっているのに人の信仰が無くなるのを黙って見てたのか?
何か対策をして、それでも信仰を失ったのか。
「正直、私はこのまま朽ちても構わないのですが……」
「それはなりません!!」
白蛇の言葉が盛大に脳に響く。
「彼が。こう言うものですから、仕方なく私の力を受け入れる事の出来る者を用意出来るのならもう少し足掻いてみます。と、そう彼に伝えたのです」
神はこの世界に自分の力を受け入れる事の出来る者が居ないというのはわかっていたし、見つけて来るのは容易でないと思い白蛇にそう言ったのだろう。
で、白蛇が探しに行ってる内に朽ち果ててしまいたかった。
神は本心で足掻くと言ったと思わせる為に、白蛇に力を授けた。そして、授かった力で白蛇がなんとか私を見つけ出し、私をこの世界に連れてきた。
と言うのが、事の流れのようだ。
現状は神の想定外。白蛇の執念恐ろしや。と言う感じか……
「ですので、あなたには私の力を全てお譲りします。そして、信仰を集めて頂ければと……」
同調というのは神の力を私が貰うって事なのか? むしろ、私の体を奪うような、もしくは共有するようなニュアンスに聞こえるんだけど。まぁ、信仰集めとか面倒だし、苦しまずに死ねるんならそれでも別に構わないが……
「と、言うことで」
さっそく……
なんて、詳しい説明も、心の準備をする間も、拒否する間もなく私は光に包まれた。
そして、目を開けると
洞窟の中の光は消えて私と白蛇だけがそこにいた。




