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心底面倒ですが神様救ってみました  作者: 市川 春
◇蛇の塒にて◇
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この森はどこですか?

 


 いったいどうしたものか。



 頭を抱えてしゃがみこんだ私、緑川 緋乃は無い頭を使って考える。



 この場所に来た原因は部屋で見た白蛇だと仮定する。それ自体が非現実的だが、白蛇が部屋に現れたとか、気づいたら森の中だったとか、今私の身に起こってる非現実的な状況を受け入れるには蛇のせいにでもしないと気が狂いそうだ。



 考えても答えのない状況整理を続けるが、原因と思しき肝心の白蛇はあたりにはいないし、此処がどこかもわからないし、最悪な事に視界の悪い夜、虫を避ける事も出来ない露出の激しい服装……状況は非常によろしくない。



 助けを求めるにも近くに人気はないし、どの方向へ行けばいいかもわからない。



 っていうか、何をしたらいいかも分からない。



 ガチの大自然の中でのサバイバルなんてのはインドア派の私にはかなりハードルが高い。棒高跳び並みにハードルが高い。勘弁してくれ。



 サバイバルには疎い素人の考えだが、まずは水の確保をするべきなのだろうか?? 川を探す?? 探したところで直接川の水なんか飲んだら熱が出そう……。



 そもそも、知りもしない夜の森でウロウロするのは危険だし、この場で夜をやり過ごすにも獣除けに火を焚きつける技術も道具も持ち合わせてはいない。




 どうする事も出来ない絶望感に苛まれる。



 なんでこんな事になったんだか……。深いため息がこぼれた。



 風の音、虫の声。不安と恐怖心。謎の焦り。



 夜目がきく方ではないが流石に目は暗闇に慣れてきたので当たりの様子も若干わかりやすくなったが、依然と月明かり以外の明かりや文明を感じることは出来ない。



 できる事もないので当たりを見回すと、木々の間から空が見えるほどにはひらけた場所だが、月明かりに照らされた地面には、冬というわけでもないのに下草は見当たらない。


 森の恵もあったもんじゃ無い。つまり、随分と痩せた土地なのだ。

 

 枝打ちされていない木々からも手入れのされた森でないことが分かる。人の手の入らない山奥なのかもしれない。



 植物にはそこそこ詳しい方で、街路樹になるようなポピュラーな木はわかるし、雑草なんかも大概の名前が分かる程度には知識があるが、目下、足元に無造作に散らばる落ち葉に見覚えは無い。



 三日月のように細い弧を描く落ち葉の葉脈を目を細めて観察する。変な形の葉……どんな木だろう? 目を凝らし木の上を眺めて絶句した。



 心臓が一瞬脈打つ事を辞めた様にも思えた。




 クリクリとした二つの目が気配もなくこちらを見ていたのだ。夜行性の鳥か? 小型の猿か?



 こ ん な ホ ラ ー は 求 め て な い 。



 怖い。怖い。怖い。怖い。自分以外の生物がいないとは思っては無かったけど、気配もなく姿形のわからない生物に見つめられたら恐怖で泣きそうになる。目をそらす方がいいのか、そらさない方が良いのかも分からないのだ。



 なぜ見つめる? 気配を消して見ていたのが私にバレたというのに、なぜ微動だにせずコチラを見てるんだ?? 私など敵ではないと思っているのか、それとも私が木の上まで行き自身を害する事が無いと思っているのか……。



 私が大きな音を立てれば、逃げ出す様な生き物なのか.襲ってくる生き物なのか……。


 答えを知らないことで恐怖心は膨らむばかりで、異常事態の警報の様にバクバクとなる心臓が非常にうるさい。



 ミシッ



 木の枝が音を立てた。

 謎の生物が脚に力を入れた様に感じた。




 来る。




 私は瞬きを忘れて木の枝からコチラへと飛びかかる生き物を見ていた。



 コレはヤベェやつだ。

 緑川 緋乃23歳。山中にて獣に襲われ死亡。

 亡骸は獣に食われ発見時には体の一部が消失して…………とニュースになるやつだ。




 キキキッキー!!




 それは突然で、もうダメだと思った瞬間に、頭に響く高い奇声。私に飛びかかると見せてドサリと地面に落ちた生き物は月明かりに照らされると非常に醜い猿の様な生き物で……今までに見たこともないブルー系統の配色。



 その喉元には部屋で見た白い蛇。

 毒でも持っているのか、白蛇の方が小さいというのに奇声をあげてのたうち回っていた猿は数秒でこと切れた様に動かなくなった。




 なんだよコレ。



 サーッと血の気が引く。



 なんなんだよ此処。

 どこなんだよ此処は……。



 訳の分からない現実と目の当たりにした弱肉強食の自然の摂理に力なくへたり込んだ私は、逃げ出す事もできずに息の根を止められた猿の首を離れコチラに近づいてくる白蛇から目をそらすことができなかった。




 もう、願うのはどうせ死ぬなら苦しかったり痛いのは勘弁してくださいということばかりだった。




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