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心底面倒ですが神様救ってみました  作者: 市川 春
◇蛇の塒にて◇
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趣味の悪い砦とはなんぞ

 



 木々のざわめき、鳥のさえずり、眩しい朝日。



「………………」



 ゆっくりと目を開けて状況を確認する。



 いや、ね。

 塀作りしてて途中から記憶がないんですが何故ですか?



 不思議ですね。



 いくら見回しても私の屋根のあるお家が出来上がってない。あるのはアーチ状の穴が開いた10メートル程の高さの塀。結界の外周の半分くらいに聳え立ってる。



 凄く立派!

 スゴイ。スゴイ。



 自分を褒めてみる。



 強度はそこそこありそうだけど、いずれは表面を補強するべきだと思われる。とりあえず、あと半分完成させないとだな。




「…………」



 現実逃避もこの何もない更地ではネタが無くて続かない。それでも、逃避しないとやっていけないのだ。



 背中には木の幹、ほんのり温かい感覚。



 そして、昨日と同じく、また、シオに肩抱かれてブランケットに包まってる現実。




「ツライ」




 心底辛い。



 ザッと、土が付くのをお構いなしにローリングしてシオと距離をとった。



 別に、シオが悪いとは言わないよ。でも、不快かそうでないかと言われたら全力で不快だと答えるよね。



 倒れた私が悪いとは思う。記憶が残らない程に突然倒れたっぽいのは余程の負荷がかかったって事だ。自己管理できてないにも程がある。



 ちょっとは魔法使うの進歩したんだぜ!

 とか、思ってたあたり、全く進歩してないより結果としてかなり酷い。




「…………騒がしい」



 昨日と変わらない視線と言葉が胸に刺さる。

 シオも結界を張り続けなくてもいいからか、それなりに睡眠をとっていたようで小さくあくびをした。



 今日も変わらず真っ白のシオに声を出す気になれないので、心の中でとりあえずおはようと言っておこう。



 視界の隅でブランケットを片付け始めるシオを一応警戒しつつも、私も自分の体についた土を払う。




 今後の日程を考えて、ふう。

 と、大きなため息をこぼした。

 想像以上にシンドイな。




 塀作りはまだ半分しか終わってないのだから、また倒れる可能性だってある。



 残りの塀を更に半分ずつ日を分けて作るべきか?




「あんなに大きな塀を作るなんて、まるで要塞ではないですか。貴女は戦争でもする気ですか」



 別にそんな気は一切無かったんだけど、シオは心読めたのに私が何を作ろうとしていたか分からなかったの?




「言葉で聞こえて来るので姿形まではわかりかねます。いったい何が起こればあんな要塞が必要になるのですか。家づくりまでしたいと言っていたのだからあんな物を作るとは思いもしませんでしたよ」




 私だって倒れたのは想定外だし、家まで作りたかったのは本心だ。


 アレは塀とは言いません。とか言われてもな。塀が無駄にならないようにいっそのこと戦争でもする?



 宗教戦争。



 この塀、マチは結構あるから大砲とか置けるよね。真ん中あたりに穴をいくつか開けてそこから砲撃とか弓を射てもいい気がする。



 塀の外の溝は水を引かずに蛇でみたして蠆盆とかどうだろう。落ちたらまるで地獄だな。



 水を引いたのなら、土を捏ねてワニを沢山入れるとかどう?? 



 例えばだけど、駆除して回った魔物を落としてワニに死体の処理をしてもらってもいいんじゃないかな。ただ、誤って人が落ちたら取り返しは付かないけど。



 そうなると人員は何処かで確保してこないとだな。



「…………」

「…………」



 沈黙



 シオは今、リザ様カムバックって思ってると思う。



 でも、備えあれば憂いなしって言うしな。いくら結界があるとはいえ目に見えないから、あるのか無いのか不安もあるし、私みたいな魔法? 何それ?? な人間からしたら視覚的な安心感が得られると思うの。


 其れに、半分だけゴツイ塀でもう半分は低めの塀とか不格好だし、低いところから攻めてくれと言っているようなものだ。



 トルニテアの世界観はイマイチ分かってないけど日本みたいに神様を蔑ろにしてはいないと思うの。そりゃぁ、日本にも神様をきちんと信仰してる人もいるだろうけど……。



 海外の偶像崇拝禁止! とか言って、雪だるま作るのもダメな国より戦後の日本は確実に宗教に疎いと思う。



 トルニテアでどんな神が信仰されてるのか知らないけど、主たる神がいて厳正な信者がいて、神は生活の一部になってるかもしれない。


 そんな現地人から信仰を得ようとするのは、他の神や厳正な信者に喧嘩を売るようなものだ。



 リザの復活計画は水面下で他の神の地盤を崩していくのと同じ。



 良い暮らしができる基盤を作る。

 他者に好かれる。

 慕われる。


 信仰が生まれる。 



 大っぴらにやらなくてもこれは戦争なのだ。領土を奪いそこに住う人間に宗教を強要するのとなんら変わりはないと思ってる。



 そんなのには、心底関わりたくないが不老とか言うオプションがある状況で苦痛な暮らしはしたくないからな。



 のんびりだけどやってやるよ。というのがリザ復活計画をやる上での私の気持ち。




「ま、時間はあるし、倒れても結界があるし、死にやしないんだから一気にやっても問題ないと思うの」



 えーと、塀の話ね。



「アレだけ私の事を嫌だ気持ち悪いと嫌悪しておきながら、また倒れる気ですか」



 シオは呆れ顔で眉間にシワを寄せて私を見る。そう嫌そうな顔するなよ。私だって嫌だよ。



 だいたい、シオはリザ様の力で溢れる私を抱き寄せられるんだからホクホクだろ。結界が完成してたのだから、魔物の侵入もないし、嫌ならその辺にポイしてても良かった筈だ。



 それをそうしなかったのはシオだし、私はその行動を優しさではなく下心ととる。




「……………………」



 シオは呆れ顔から信じられないと言った驚愕の表情へ、赤いお目目がまん丸になってる。

 悪いけど私の思考回路の問題はね、治らないから置いとくけどさ。



 朝一の今、塀あらため砦を完成させれば夕刻くらいにはもう一回起きれるんじゃ無いかと思うのだがどうだろう。



 家もさ、土で簡易的なドームを作ってかまくらみたいにすれば、屋根とか作らなくてもいいし材料かき集める必要ないし、壊そうと思えばいつでも壊せると思うの。



 崩れてこないか、生き埋めにならないか、雨は染みてこないのか。不安要素はいっぱいあるけどな。



 外よりはマシだと思う。



 ふと、かまくらの中で寝ている自分を想像する。




「…………」



 あれ、私、土の上に直接寝るのかな?



 シオ、ブランケットと一緒にベッドくすねてきてないかな?



 あったとして、シオの事だからシングルサイズ二つじゃなくてダブルとか、クイーンサイズを一つとか、あえてくっついて寝るためにシングルサイズ一つなのではないかと疑ってしまう。



 素っ裸もいいとこな長年の蛇生活、腹を地面に擦り付けて移動していたのだから土が汚いっていう概念も無くしてしまっているのかもしれない。



「本当に貴女は失礼ですね」



 リザが私の身体を乗っ取っていた場合、手持ちの魔石をお金の代わりにして、人の住む町に入り込み宿をとるつもりだったのでベッドは持っていないとのこと。



 あれ?



「私はなぜ、こんなに苦労してココを開拓してるのかな」



 いつでも街に行けたと言うことだよね?

 何日も野宿しなくても良かったって事だよね?




「貴女の場合、トルニテアの常識が無い上に、その外見に見合った魔法も使えません。言葉だって通じない単語があるでしょうし、読み書きもできないのです。とても人前に出せません」



 ディスられてる。



 そうです。そうです。

 私は、リザより劣るやや思考回路に難のある日本の一般人です。だから、やれる事もやる事もシオの思い通りにはならないんです。



「………………」




 私はシオに背を向けて歩き出す。もう、素足で地面を踏む感覚に慣れつつある。



 端まできて地面に手をついた。

 そして、硬くなれ、丈夫になれと念じる。



 地面が盛り上がり勢いよく昨日作った砦と繋がってゆく。グイグイ自分の中のエネルギーが吸い取られてゆくのがわかる。



 地響き、地面の揺れ。目の前で起こる事象はとても信じられない光景だ。



 この現象を、引き起こすエネルギーってなんなんだろう?

 魔力ってやつか?

 無尽蔵にあるものなのか?



 砦が出来上がり、疲労感を感じつつもゆっくりと立ち上がり背後にいたシオにドヤ顔を向けてやる。



 作ってやったぜ!

 倒れてないぜ!

 頑張ったんだせ!



「っ………」



 フッと体の力が抜けた。

 コレね。顔面からズサッと地面にダイブするやつだ。



 意識が薄れる中、シオが私を抱きとめたことと「仕方のない人だ」と呟いたのが聞こえた。





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