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心底面倒ですが神様救ってみました  作者: 市川 春
◇蛇の塒にて◇
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それは窃盗というのです

 なんだか眩しさを感じて目を開けた。鳥が鳴いていたり日差しの入り方からして朝っぽい。集落跡地に着いたのは昼時だったはずだが、いつのまに夜を越えたんだろうか。


 ブラックアウト後、半日以上寝てたんだろうけど、野外でよく寝たなと感心するわ。初日寝ずに夜を過ごしたからというのもあるが、野宿で爆睡なんて信じられない。



「…………」



 ちょっと、まて。



 脳の覚醒と共に自分の状況が頭に入ってくる。場所は集落跡地が視界に入る森なのか。大きな木の幹に背を預けて脚を抱えている。聞こえるのは人間の吐息。肌に触れる違和感を意識した途端に鳥肌がたった。



 なんで、隣に白蛇がいる?

 なんで、人間の姿の白蛇と私が……一つのシングルサイズのブランケットに包まっているんだ。ちょっとあったかいのがかなり気持ち悪い。



 人肌に触れてる感覚が無かったので恐る恐るブランケットめくり眠る白蛇を覗き見ると、長袖の白いシャツと白のパンツを履いている。


 髪も肌も服も白ってなんだよ。真っ白しろすけかよ。



 てか、服とかブランケットは何処から出したんだ。集落跡地にそんな真新しい衣類や寝具が有ったようには思えないのに、どうなってる。



 服の謎もあるが、白蛇が眠る状況は防犯上大丈夫なのか? 結界の維持はどうなってる?




「騒がしい」

「いや、一言も声にしてないからな」

「わたしには考えている事がダダ漏れですから」



 薄っすら瞳を開けて流し目で私をみて言う白蛇。白蛇にとっては、くっついて一つのブランケットに包まっている今の状況はなんて事なくて、一体、何を騒いでるんだ、とばかりに鬱陶しそうにして私を見ている。



 いや、人肌嫌いなんだよ。同性でもダメなんだよ。過剰なスキンシップはダメ。絶対。学生時代の部活の時なんか、ハイタッチまでは許せたが、ハグとか……思い出しただけでも不愉快だ。



「なんて面倒な……」



 呆れるくらいだったらいい加減、私の腰を抱く手をどけろよ。気持ち悪いって思われてんの分かってんだろ。嫌がってんの分かっててワザと続けてるんだったらガチでクソヤローじゃねーか。




「無駄な動きの多いあなたが、結界から出て、また魔物に目をつけられても困りますからかね」



 もっともらしい言い訳ですね。無視できない内容で私も困ります。マジで。


 昨日のゴブリンの件で、私でもなんとか魔物と対峙できるのはわかった。だけど、リザの力を使ってブラックアウトした現実はいただけない。あの時、集落跡地以外……私の攻撃範囲の外にゴブリンの仲間がいたとしたら、私が倒れた後に駆けつけ襲撃されていたら、そう考えると恐ろしくてたまらない。


 あの場は、白蛇が居たからもしかしたら結界で乗り切れたかもしれないが……居なければ間違いなく私はゴブリンの餌食だったのだ。拒絶反応は出るけど、今後、このトルニテアで生きる上では白蛇の存在はかなりありがたいし、無ければ即エンドだ。や、終われれば別に問題ないけどな。終われないのが問題なんだけどな。



 どうしたって生き地獄なんだよな。



「結界の範囲ってどうにかならないの? ずっと四六時中くっついてるのとか無理なんだけど」


「大きめの結界を張ればいいのですが、私は身動きが取れなくなりますね。私がその場に居なくても拠点を守り続けられるような結界を広範囲に張るのであれば、下準備も必要ですし、そのための燃料(エネルギー)も必要です」



 なんとなく、白蛇の魂胆が見える。



 前者は無理だろ? お前一人じゃこの森ウロウロ出来ないもんな。っていうドヤ顔。そして、後者は下準備とか、燃料とか言い訳しておいてやりたくないのをごまかしてる。あわよくば、能力にリザの面影のある私の側に長時間居たいリザの信者だもんなコイツ。


 それを許さないのであれば、エネルギーになる血をよこせと……。クソ野郎。



「…………」



 とりあえず、深呼吸。無理矢理、腰にあった手をどかして話を変える。



「で、このブランケット何処から出した」

「異空間収納です」

「…………」



 猫型ロボットの腹にあるポケットみたいなヤツか。



 すごいな。すごいのは確かだか、「誰でも使えるわけではないんですよ」と自慢してくる白蛇に少しイラッとする。


 さらに、心の中でだけど、人の形をしている白蛇に対して白蛇白蛇と呼ぶと、無視できないくらいの違和感を覚える。すごくモヤモヤする。



「で、その異空間収納の中身は何処で? てか、服も最初から持ってたって事だよな?」



 最初から服をきていれば、私は白蛇肩に乗っけて森を歩く必要が無かったって事だ。したたかと言うか小賢しいというか。まぁ、利用されたと思うと気分は良くない。



「このブランケットも服も貴女の居た世界から拝借した物です」



 お金とか持ってなかっただろうし、買ったりできなかっただろう。つまり……。


 白蛇よ。

 それは、窃盗というのですが。



「……リザ様と快適な生活するためならやむなしと、手段は選んでられませんでしたし」



 出ました。白蛇のリザ様LOVE。

 おそらく、服以外にも色々と拝借してきていると見た。でも、ま、私も地球に戻れないんだから……白蛇の犯した窃盗罪とは関係ないし、それらを使用したところで罪に問われることも無いのでありがたく活用させていただきます。




「私の着れる服もあるよな?」

「えぇ、まぁ」



 白蛇の予定では、リザが私の体を乗っ取る筈だったので、リザ用の服もあると思われる。



 とりあえず、衣食住の衣は確保できたとして、後は、食べ物と住処か……。そう言えば、ここに来てから何も食べてないし、飲んでもいない。一昨日の夜から何も口にしていないというのに全く空腹感を感じていないのを今更ながら不思議に思う。




「今の貴女の体は人間と同じように食物を摂取しなくても肉体を維持できます。まぁ、摂取してもなんら問題はありませんが」



 つまり、大も小も出ないって事ですか。



「そうですが」



 不快そうに白蛇は瞳を細めて私を見てくる。その瞳の赤は綺麗なんだけど、この世のものではないようで若干恐怖を覚える。



「と言うことは、衣食をクリアしたんだろ。あと、住なんだけど」



 視界に入るのは瓦礫となった集落跡地。



 私は額に手を当てため息を吐いた。

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