第六話 旅友
黒猫に言われたようにボクは街のすぐ近くに流れる大きな川沿いを歩いていた。
途中カニの雑魚モンスターを倒したり、追いかけられたりしながら歩いていく。
道中に出会った草花を採取して行く。薬を作成できるらしい。
なんだかんだでレムオンを純粋に楽しんでいる。
今のボクならツルギや黒猫がレムオンの旅人ロールプレイをしているのもある程度納得できる。
やがて時の経過とともに日も落ちてゆき辺りが薄暗くなっていった。
ツルギを探しても見つからないことに気付き、本人に耳打ちでメッセージを送信することにした、が……。
メッセージを送信する瞬間恥ずかしさの余り躊躇った。
「ま、運に身を委ねてみるか」
こういう時は成り行きに身を任し、無理に探す必要もないと察した。
それに、ツルギが教えてくれた新たな遊び方を一人満喫するのも悪くないと思ったのだ。
黒猫の言葉を信じていつかツルギと出会えると思い込むことにした。
川沿いに農場とか水車小屋なんかが並んでいたのだが、気が付くと灯り一つない暗闇へと踏み込んでいた。
その暗闇の中に、自分の目線からやや上方向に小さな灯りが見えた。
ボクはその灯りに向かいゆっくりと歩いて行った。
そこは小さな丘になっており、黄昏るには丁度いい場所だった。
丘を登り始めた時ツルギの声が聞こえた。
「あ。ミツルだ」
「あ、ツルギだ」
ツルギは笑顔で『横に座りなよ』という感じで手招きしてくれた。
少し照れながらツルギの横に並んで座った。
「あはは……私の事探してたんだ?」
「……うん」
「私嬉しいんだ」
「なにが?」
「ミツルくんが旅人になったことが。そして、こうやってまた出会えたことが、ね」
「黒猫の言っていた通りに川沿いを歩いていたら、本当に出会っちゃった」
「黒猫に出会ったんだ? 良い人だったでしょ?」
「うん。なんだかとても懐かしい気持ちになったんだ」
「実は私、黒猫に憧れて旅人始めたんだよね」
「へ~」
少し以外だったけど、納得している自分も居た。
ツルギは急に空を指さした。
「ほら、空を見てごらん」
「綺麗……」
街の灯りが無い為か美しい星空が広がっていた。
「黒猫もこの星空を見ているのかなぁ?」
「見てると思うよ。釣りでもしながら」
「あははっ……ずっと一人旅でこういう場所歩いてたけど、やっぱり誰かと一緒だと楽しさ2倍だね」
「一人旅してきて辛い事とか、わかったことってある?
「あるよ。孤独を楽しむ強さとか、大変さとか」
「良くわからないけど、ツルギって強いんだね」
「強くないよ。ミツルくんが思ってるほどね……」
ツルギと並んで見上げる星空は特別な時間をもたらした。
どこか懐かしい気持ちと、照れくささを感じながら時は過ぎてゆく。
不意にツルギは提案した。
「私たち、これから一緒に旅をする『旅友』にならない?」
「え、旅の友達ってこと?」
「そうそう」
「いいよ。どうせ暇だし」
「ミツルくんって実は素直だよね」
「……」
ボクが素直……?
初めて言われた言葉に戸惑った。
最後にツルギは言った。
「君の笑顔が誰かを笑顔にしていることを忘れないで」
「……ぇ」