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陰キャ根暗のフルダイブ型VRMMO生活  作者: ビッグマグナム佐藤
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第四話 太陽

 ツルギとボクはレムオンの世界で山登りを始めた。

 道中の雑魚モンスターをツルギに全部任せてボクはその後を追うだけ。

 フルダイブ型VRMMO、レムオンでツルギ流の遊び方を教えてもらう予定だ。

 今のところ何が楽しいのかわからない。

 ただただ怠い。

 大体ボクは人のペースに合わせて何かをすることができないし、疲れるので苦手だ。

 マイペースに日常をベッドの中で寝て過ごすのが至高だと思っているし。

 まぁ本音を言うとツルギ流の遊び方なんて言うのに1ミリも興味がない。

 ツルギが面白いと思っていてもボクにとって面白いとは限らないし。

 じゃあなんで付き合ってるのって言えば成り行きで合わせているだけだ。

 ツルギのかなりぶっ飛んだ性格に振り回されているだけ。


 ボクは疑問に思っていたことを聞いてみた。

「ツルギ。なんでボクに粘着するの?」

「粘着? なんのこと?」

「元々なんの接点も無いじゃん」

「んー。同族を見つけたから友達になれたらなぁ、っていう軽い気持ちだけど?」

「同族な訳ない。ボクの何を知っているんだ」

 この短期間で人を知った気になっているこの女に酷く嫌悪感を抱いた。

「それはお互い様でしょ?」

「悪いけどツルギみたいな人には興味が無いね」


 大体ボクは愛想が良いわけでもない。

 学校で誰とも目を合わせないし挨拶もしないしされても返さない。

 透明な空気になることを徹底しているつもりだった。

 それがこのツルギ見たいなモンスターに目を着けられ、粘着され、レムオンと言うフルダイブ型VRMMOの世界に引きずり込まれてしまった。

 恐ろしいことにツルギはマイPCをボクの部屋に持ち込み、すぐ隣でレムオンにフルダイブしている。

 そもそもネトゲなんだから、わざわざボクの部屋にPCを持ち込む必要もないのに……狙った獲物は逃さない、と言わんばかりの勢いを感じる。

 人と関わらない生活を徹底していても時にこのような不幸に遭遇してしまう。


 ツルギはボクと正反対な人間だからなのか、少しだけ引かれる感じもした。

 例えるならボクが影でツルギは太陽と言ったところ。

 ……どこか引っかかる。

 心に芽生えた不思議な蟠りを残し必死に歩いた。


 ツルギの後を追う事30分。

 ついに頂上へ到着した。

 ゲーム内時間で朝の6時くらい。

 空は薄暗い光に覆われ日の出の前。

 頂上にある名も無き丘にツルギと一緒に座った。

「もしかして日の出を見に来させたの?」

「そうだよ」

「ゲームの中で日の出なんか見たって意味なくない?」

「とにかく日の出を見た後に、つまらなかったか感想を教えてね」

 答えはもう決まっていた。『つまらない』そう告げて全てを終わりにする。

 ボク達は日の出を待った。

 徐々に空が明るくなっていく。

 一人で美しい景色を見るのは嫌いじゃなかった。

 けど誰かと日の出なんて見たことは無い。

 気が付くと太陽が地平線から顔を見せた。

 その瞬間ボク達は同時に声を漏らした。

「……ふーん」

「うわ、綺麗! 何度見てもいいね」

 実写以上に美しく幻想的な日の出にボクの心は驚きと感動に満たされた。

 つまらないと答える予定だけど、本音を言うと日の出を見れて良かったと思っていた。

 太陽の光が優しく大地を照らす。

 一日の始まりを告げるその当たり前な光にひと時だけ心を奪われる。


「日の出、綺麗だったでしょ?」

「綺麗だった。でも楽しくはなかった。つまらなかったよ」

「そっか。じゃあ、これでお終いだね」

 ボクの返事を聞いたツルギはギアを静かに外しその場を立ち、マイPCを抱きかかえ家を出ていった。

 玄関の扉が閉まる音と共に、この二日間の出来事が脳裏に蘇る。


 結局、ボクは人を拒絶しているだけの存在でしかない。

 人の好意を無視し一方的に拒絶するだけの存在。

 これで良いんだよ。と心の中の自分が呟く。

「さて、ベッドで寝ようかな」

 ベッドでごろごろ寝るだけの生活がとてつもなく好き。

 そのはずが、ベッドの中に入った途端に『このままで良いのか』という焦りを感じた。

 どうせ明日も暇なのでレムオンを一人でやってみることにした。

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