第一話 レムオン
朝。今日も退屈な日常が始まる。
折り畳み式の勉強机を出しスマホを片手にレポートを書き始める。
あっと言う間に3時間経過。
中々問題が解けずに居たが、なんとか一段落がついた。
レポートを全部終わらせたという訳か。
「はぁ……」
思わずため息が出てしまう。
無駄に時間だけが残り、孤独の時間が始まる。
ふとPCに接続されたギアに目を向ける。
「ツルギ……」
無理やり家に押し掛けてきてREM ONLINE。略して『レムオン』を押し付けてきた謎の女。
嵐のように来たと思ったら嵐のように去ってゆき……あ、そういえば今日、レムオンで待ち合わせしてたっけ?
ボクは昨日の出来事を思い出した。
ツルギはボクのPCを勝手に使いレムオンのセットアップをしてくれていた。
半ば強引にレムオンの世界へ引きずり込もうとしてくるツルギに恐怖さえ感じる。
「帰ってよツルギ」
「やーだ! 絶対にミツルくんもレムオンしたほうが良いって。大体今時の高校生はみんなレムオンしてるんだよ?」
謎のハイテンションで意気揚々とレムオンのセットアップをするツルギ。
ボクの拒絶も空しく着実にレムオンの世界へ引きずり込まれて行く。
「お願いだから帰ってよ! ボクに関わるな!」
ボクの声も空しくツルギはセットアップを止めない。
「あのねぇ。私はミツルくんの事を思ってセットアップをしてるのよ? ちゃんと理解してよね」
「……」
そしてレムオンのセットアップは終了した。
ツルギから渡されたギアを頭に装着する。
「どう? レムオンすごいでしょ???」
フルダイブ型VRMMOの噂は知っていたけど、確かにすごいかもしれない。
自分の意思でゲーム内を自由自在に歩くことができる。
現実に似せた世界はどこか違和感があるけど綺麗だ。
「ちょっとすごいかも」
「でしょでしょ!? じゃあ明日の昼2時にレムオン一緒にしようね! フレンド登録はもう済ませておいたから逃げられないよ!」
そしていつの間にか携帯の番号までバレていた。
昼食。目玉焼きを焼いて食べた。
そのあとソファでゴロゴロして……気が付けば待ち合わせの時間になっていた。
「あ~あ。めんどくさいしぶっちしよ」
そもそも頼んでもいないし望んでもいない。
レムオンで馴れ合い下らない時間を過ごす必要も感じない。
家でゴロゴロして寝てたほうが1000倍はマシ。
と言うわけで眠りについたのだった。




