第十二話 終わりなき旅
あれから色々な場所へ行った。
赤いマグマが噴き出る火山地帯、湿原、レムオン一高い山にも登った。
現在レベル10で初心者丸出しの駆け出しプレイヤーと見られることも多いが、ここ数週間レムオンを旅して色々な場所へ行ったのでマップには少々詳しくなっていた。
ただやはり旅をする上でレベルを上げないと強敵のうろつくエリアを通り抜けるのは神経を使う。
見つからないように姿を消す薬品や足音を消す薬品は常備している。
そして旅先で多々ツルギと出会う事がある。
広大なレムオンの世界で偶然出会うと何とも言えない嬉しさがこみ上げるのだった。
そんな訳で、さきほど偶然出会いボクとツルギは今二人で街を歩いていた。
「シノビオイルにスケルトンパウダーを4ダース購入、と……」
自分が使う量だけ買えばいいのだけど一応ツルギの分も購入しておく。
街ではある噂で人々が賑わっている。
最近、黒猫がログインしていないらしい。
毎日欠かさずレムオンにログインして旅をしていたのに……。
偶然出会ったボク達は成り行きで黒猫を探す旅に出かけた。
「目的を持った旅、か」
「急にどうしたの?」
「黒猫を探す旅なんて、できるとは思わなかったからさ」
「毎日行きたいところに行って、それで綺麗な景色を見て。終わりだから、なんだか新鮮な気持ちだ」
「なるほどね」
最初に着いた場所はツルギと日の出を見た山の途中にある池。
ここで昔、黒猫は釣りをしていた。
そこにはどういう訳か黒猫の釣り竿と鞄が落ちていた。
ボクとツルギは顔を見合わせた後、黒猫の荷物を調べ始めた。
「鞄の中はザリガニでいっぱい。そして無造作に置かれていた釣り竿も特に変わった様子はない」
「……黒猫の旅は今も続いているのかな?」
「ツルギ……」
突然ツルギは下向きになり喋り始めた。
「旅に終わりがあるとしたら、それはこの世界、レムオンからログアウトして帰ってこないってことだよね?」
「まぁそういう事じゃないかな? でも、まだ黒猫はレムオンにログインしている様だ。探してみようよ」
「そうだね」
「次の目的地は星空を見たあの場所へ行ってみよう」
黒猫を探す旅はいつしかボクとツルギの思い出の場所巡りへと変わり、時間はあっという間に過ぎていった。
「さて、黒猫はどこに居るんだろう」
「私思うんだけど、もうレムオンには居ないんじゃないかな」
「……」
フレンドリストを確認すると黒猫はログインしている表示が点滅している。
確かにこの世界、レムオンのどこかに居る見たいだが……。
「じゃあ黒猫は、どこへ行ったと思う?」
ツルギはボクに向き直りボクの手を取り、心臓に手を当てた。
「ツルギ……」
本当に、黒猫は、レムオンから姿を消したのか?