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陰キャ根暗のフルダイブ型VRMMO生活  作者: ビッグマグナム佐藤
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プロローグ

 朝。

 スズメのちゅんちゅんと言う鳴き声と共に起床。

 左手で目を擦りながら右手を使い部屋のカーテンを開けた。

 朝の優しくて眩しい陽光が射した。

 椅子に座り慌ててスケジュールを確認する。

「今日スクーリング日……」


 制服を着てスクーリングの準備をする。

 時間がないので朝食は抜き。

 電車に乗り目的地の教室を目指す。

 駅から降りてすぐに歩く事10分弱。

 ボク達が教室と呼ぶ場所へ無事到着。


 教室に着いて席に着く。

 ボクはこの無駄な時間がとても嫌いだった。

 意味もなく談笑し、馴れ合い、時間を無駄に浪費するだけの空間。

 常套句が飛び交う教室。愛想笑いや何気ない言葉一つ一つに心底嫌悪感を感じてしまう。

 ボクは人間が嫌いだった。

 特に自分が嫌いだ。

 そして何より青春が嫌いで憎んでさえ居た。


 早くこのどうしようもない空間から脱出したい。

 どこへでも良いからどこか遠くへ行きたい。

 正直言って高校卒業資格だけが欲しいから学校へ通っている。

 入学して数週間。友達はまだ一人も居ない。

 むしろ友達を作りたくない。

 人間が大嫌いだから。

 孤独を愛しているから。


 教室の窓から外を眺めてみる。

「……」

 どうしようもないほど見飽きた景色が目に入る。

 街行く人はまるでロボットみたいに同じ動きをし、同じ方向へ歩き通勤通学を行っている。

 見ていて耐えられなくなったボクは机に突っ伏す。


 ボクもあと数年もして社会人になり、今見た人たちと同じく社会の歯車として機能するだろう。

 その生活を考えただけで吐き気を催す。


 日常に変化が欲しかった。

 ただ教室に居る生徒の様に学生を演じることはしたくない。

 退屈な生活を根本から変えてしまうような事ってないの?

 例えば隕石が落ちてきてエイリアンが人間を襲い始めるとか、夢の国に招待されるとか。

 下らないと思いつつもこんな退屈な日常から脱出できるのなら何だって良かった。

 自分から行動をしなければ変わらない。それにも気づいているけど……。


 教室の音が意識から遠くなっていく途中の出来事だった。

 耳元で見知らぬ女の声がした。

 その女はボクの耳元で囁いた。

「みーつーるーくん――」

 その声に体が条件反射的に声の主へ振り向く。

 顔を上げるとそこには見知らぬ女生徒が立っていた。

「……ん?」

 普段人と目を合わせない主義だが、目と目が合ってしまった。

 確かこの子の名前を知っている。

 つ、つるぎ――さんだったかな?

 剣は笑顔で顔を覗き込みながら優しい口調で言ってきた。

「レムオン。もしかしてやってる?」

「なにそれ? ていうか、うざいんだけど。話しかけないでくれる?」

 ボクは率直に感じたことを言う。

 できるだけ突き放す為につい少々キツイ言い方になってしまった。

 そんなボクの言葉に動揺することなくツルギは言ってきた。

「REM ONLINE。略してレムオン。クラスの子、みんなやってるよ? 君もレムオンして、仲間になろーよ?」

 普通、突き放したら逆上する奴が多い。

 だがツルギは違った。

 一切動揺を顔に出さず、笑顔でボクに話しかけてくる。

 予想と反する事態に少しだけツルギに対する興味が湧いた。

「実はさぁ、使ってないギアが一個あるんだよね。レムオン、もしやるならタダであげる」

「は? ギアってなに?」

「みつるくんって、ほんとに何も知らないんだねー。ギアっていうのは端末、PCに接続してフルダイブする為のHMD(ヘッドマウントディスプレイ)の事だよ」

「ふーん……興味ない」

 さっきまで温厚だったツルギは豹変した。

 なにやら興奮した口調で話し始めた。

「端末はもってるよね? よし、決めた! 余ってるギア、みつるくんにあげちゃう。はい、これ!」

 ツルギは鞄の中からギアと呼ばれるフルダイブする為のHMDを取り出し勢いよく押し付けてきた。

 そして有無を言わさず言った。

「難しいセットアップとかは私が全部してあげるから、放課後みつるくんの家に寄らせてね!」


 その日、ボクはREM ONLINEを始めた。

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