異世界は一瞬の煌き (第6部)
眩い程の強い光が楓と隆史を包んだ
2人の体はフワリと浮かび上がり
スゥーッと上空に吸い込まれていく
その瞬間、強い閃光とともに
2人の姿は消えた…
次の瞬間…トン…と降りたった
眩い閃光は少しずつ暗くなっていった
周りの景色がボンヤリと見え始める
楓と隆史はお互いの顔を見合わせる
「ここは何処だ!」
困惑したような声色の隆史
楓は隆史さえ知らない場所なのだと
更に怖くなった
そこは隆史がいた世界でも
楓がいた元の世界でもない…
上空にはオーロラの様な
数多の色が混在している
深緑が生茂り今にも恐竜が出てきそうな
そんな雰囲気のある景色が広がっていた
また違う異世界へと来てしまったのか…!?
楓はそう思った…
けれど、ここには かなえも居ない
隆史も知らない場所なのだ
目が慣れてくる…周りをよく見ると
1箇所だけが細い線のように
光っている場所があった…
2人はその光へと向かって歩き出した
地面は硬い場所と柔らかい場所があり
硬い場所は岩の上の様で
柔らかい場所はまるで雲の上にでも
乗っている様に思えた
用心しながら進んで行く
数時間経過した頃
やっとその光の場所へと辿り着いた
それはあの大木と似ていた
しかし…更に時間の経過を感じさせ
老木の様に思えた
隆史はその大木に触れる
「これは同じ大木…何が!どうなってるんだ!」
どういうことなのだろう?
楓は困惑していた
隆史はその大木周辺を注意深く観察していた
楓はその場所から動けずにいた
隆史が何かを見つけ…楓の手を引く
隆史に連れられ、鬱蒼と生茂る緑の中…
掻き分けながら進んだ
目の前にはまるで遺跡の様な建物が見えてきた
楓は目を疑った…
そこは…さっきまでいた
あの世界だった
楓「そんな…そんな事って…‼」
隆史「僕も信じられないよ…少なくとも…
数世紀は経っていそうだ…」
2人はあまりの事に…茫然と見つめていた
ついさっきまで2人が居たあの場所の
変わり果てた姿を…
その時…誰かに肩を叩かれた楓
「キャッ」と声をあげた
恐る恐る顔を上げる
そこには…かなえの姿があった
隆史も驚いた様子だったが、すぐに
「君…誰?…」とかなえに似た女性に聞いた
するとその女性は答えた
「私?…私はかなえよ」と、
けれど
2人が知っているかなえではないと感じていた
楓「あなた…かなえさん?」
かなえ「うん…そうよ」と微笑む彼女
かなえ「あなた達の事知ってるわ…ここどうぞ」
2人はグッと強く手を握り彼女の言う事に従った
かなえは椅子状の様な乗り物に座っていた
スッとその乗り物に手を翳し
撫でる様な仕草をする…すると
スウーと伸びる様に長くなり
2人分のスペースができた
2人はそこに腰掛ける
体が沈み込むような感覚
かなえと名乗る女性はそのまま
手を前に翳し前方へと動かす…
椅子状の車体はゆっくりと無音て動き出した
ゆっくりと動いている様に思えたが
楓が下を見ると深緑の森の景色が
凄いスピードで通り過ぎていた