異世界は一瞬の煌き (第4部)
かなえ
「ここはね…この場所は映像を見るだけじゃないのょ、
異世界への扉の様なものなの
だから、ここには鏡も
自分の姿を移すものもないの」
楓「そうなの…」
楓はここに鏡がないことを理解した
かなえ「あのね…他にも楓を驚かせる事があるの…
行きましょう?」と笑みを浮かべた
楓「えっ!?…まだ他にもあるの?」
かなえ「うん…会わせたい人がいるわ」
楓はかなえの会わせたい人とは誰なのか?
1人だけ思いあたるけれど…
それは叶わぬ思いだった
かなえと楓はゆっくりと歩きだした
暫く歩くと薄明りの中に人影が見えた
楓は…息を呑んだ…遠い記憶の中の
懐かしいシルエットだ
かなえがその人影に大きく手を振ると
懐かしいシルエットもゆっくりと振り返した
シルエットに近付く…楓は確信した
彼だ!…まさか?…そんな!…でも…
複雑な心境だった
彼は楓に「久しぶり…楓ちゃん…」と声をかけた
かなえは笑みを浮かべ…そっとその場を離れた
楓「久しぶり…隆史…さん?」
2人はゆっくりとその場へ腰を下ろした
楓は複雑な心境でありながらも
聞きたい事が溢れていた
隆史は楓の気持ちを悟り、ポツポツと話し始めた
楓は彼の話を聞き終えると
涙が溢れとめどなく零れ落ちた
隆史は楓にとって初恋の人でもあり幼馴染だ
楓と隆史は年の離れた隣人だった
隆史の話は元の世界で亡くなったはずの両親が
この世界では生きていた…だから
迷いはしたものの、この世界へ留まる事を選んだ
そしてこの世界への扉は偶然見つけたものだった
いつもと違う道を通ったその時
自分の目の前一面に広くとてつもなく大きな
見えない硝子の様な…幕の様な物があり
それに触れるとグニャリとした感触が指先に伝わった
その瞬間、引っ張られるような感じがした
気付くとここに来ていたのだ…と
楓は隆史の話を聞き終えて
懐かしい彼の低く穏やかな声と
眼鏡越しの瞳の奥の優しい眼差しに
当時の記憶とともに隆史への想いが込み上げてきていた
楓の涙をそっと拭いながら隆史は楓に…
隆史「家へ行こう…両親も楓を待っているよ」
楓「こちらの世界の御両親は…私の事…」
隆史「知ってるよ、来るかい?」
楓「ええ…行きたい…もっと話たいもの」
2人は並んで歩きだした
楓はかなえの方を振り返る、
かなえは微笑みながら2人に向かって手を振っていた
楓は隆史の家へと向かった
隆史の家へ着くと…この世界の御両親に会い
元の世界の隆史の事を話した…その夜は更けていった
翌朝
隆史「かなえさんが僕に楓を会わせてくれた」
楓「そうね…」楓はかなえの事が過ぎった
隆史「かなえさんなら大丈夫だよ…
楓が居たいだけ僕にの家に居させてくれってさ」
楓「えっ?…」
隆史「暫く居てくれるだろう?」
楓「いいの?…」
隆史「ああ勿論さ…両親も楓が居ると喜ぶよ」
楓「ありがとう…」
楓はもう暫くだけ隆史と共に過ごしたいと思った
楓にはとっては隆史の側に居ることは
幸せだった
もう逢えないかもしれないと思っていた
初恋の人…
そして今も彼を好きだと思う気持ちが
切なく熱く胸の中を占めていた