異世界は一瞬の煌き(第11部)
楓と隆史は、この世界に、戻ってから
時折、時間が許す限り
あの大樹を、探していた
そして…2人は、見つけた
街からは、少し離れた場所に、大樹はあった
それは、とても大きな楠のようだった
探しあてた2人は、
この大樹だと確信していた
クリスマスイブの夜…
2人は、ここへ訪れた
楠の側へ近付く2人…
辿り着く頃…雪が舞い降りてきた
白く、美しく、ゆっくりと…舞い落ちる
雪が舞う夜空を、見上げる2人
この場所には、2人だけ…
楠に、そっと、2人が手を添えた
目を閉じ、数分後…楠は、淡い光を放った
2人が、手を、添えた辺りだけが
楕円形に、淡く光っていた
その光は、やがて鏡の様になり
その鏡の中に、映し出されたのは…
叶恵の姿だった
叶恵「楓!…隆史!…会えて嬉しいょ…」
楓「叶恵…私も…とても…とても!嬉しいわ…」
楓と叶恵の瞳からは、涙が零れた
隆史も涙を滲ませていた
もう二度と、会うことは、叶わないと思っていた
鏡越しで、あっても
3人に、とって、それは…
素敵な、奇跡の時間になった
2人が去ったあと
異世界は、もとに戻り、今は
穏やかな、
世界に、戻ったのだ、と叶恵は話してくれた
また…2人が、去るときに、伝えたかった
言葉は…信じていれば、会える
それを伝えたかったのだと言う事も…
優しい時間が流れた
時を忘れたように…
話し続けた
叶恵は、2人に…
2人も、また叶恵に
来年、此処で会おうと誓い…
鏡が、淡い光へと変わり、その光も消える頃
雪も止み…静寂がおとずれた
名残惜しく、感じながら、
楓と隆史は、その場を後にした
隔たれた、交わることのない異世界へと行き
過ごした、その月日
それは、夢幻ではなく、存在していた
楓は、異世界へ行った事で…
自分の中の、何かが、確実に変わっていた
この世界に、私が存在している
けれど…
他の世界にも、
もう一人の、私がいる!
異世界の、私は…
今の、私の、選択によって、変わる
叶恵や
また、別の異世界にいる、かなえ、にも
出会えた、けれど…それは、
多分…
私自身が、求めていたのかもしれない?
私の中にある…疑問、のようなものを…
答えが見つからない…思い、のようなものを
楓が異世界で体験した事
その世界の中で…感じ、思った事
それら総ては、楓にとって
大きな、心境の変化も齎していた
毎年、クリスマスイブの日には…
隆史と2人であの楠の場所へと向かい
3人で語り合った…
叶恵は、結婚をし、子供も生まれ
幸せに、暮らしている話しや
楓もまた、隆史と婚約している話しなど
尽きる事なく話した
3度目の夜のこと…
いつもの、場所で、叶恵を待っていた
楓と隆史の前に、現れたのは
何故か…叶恵ではなく、叶恵の夫だった
叶恵の夫は、楓の後輩、佐藤に似ている
叶恵の夫は、楓に
「こちらの異世界へ
もう一度だけ来てほしい!…」…と
慌ただしく
緊張と、焦りの表れた表情で、急ぎ話した
それと同時に…
淡い光とともに、元の大樹へと戻った