悪役令嬢、必要ないからと追い出されたら国が滅びました。
趣味で書いていますので誤字脱字などはご容赦をお願いします。
「ふふふ、今日はよく晴れたわね。久しぶりに町に買い物にでも出掛けてみようかしら?それとも一気に溜まってい洗濯物を片付けたほうがいいかしら」
深い森の奥深くにある小さな家の庭先で家の主である薄紫の長い髪に赤い瞳をした少女が久しぶりに晴れ青空が広がる空の下でお茶を飲みながらこれからの予定を考えて楽しそうに笑みを浮かべていた。
「おいっ!さっきから俺達を無視して何を楽しそうに茶なんか飲んでいるのだ貴様はっ今直ぐに俺達を開放しろ!聞いているのか!」
「ロムド殿下の仰る通りだ!やはりこの魔女はあの時情けを掛けて国外追放などにせずにその場で処刑すべきだったのです」
「そんなに性格が悪いから殿下に捨てられたんだって分からないの!」
「ネフィアさんっ貴方がしていることは断じて許されることではありませんっ!今直ぐに自分がしてしまった過ちを認めて皆に謝罪をしてください!そうすればきっと皆も許してくれるはずです!」
「あーもう、五月蝿いですね、人が良い気分でお茶をしているのに少しは静かに出来ないんですかロムド殿下?他数名」
楽しい気分を台無しにするように響いてきた怒鳴り声に先程まで浮かべていた笑みは消え眉間にシワがよっていた、不快感を顕にしながらネフィアと呼ばれた少女は声がしたほうを険しい目つきで見るとそこには四人の少年少女が動けないように植物の蔦で縛られて地面に転がされているのが見えた。
「ふざけるなよこの魔女が!貴様のせいで我が国がオラガルド王国が今どんな事になっていると思っているのだ!」
ロムド殿下と呼ばれた金髪の少年が今にも噛みつかんばかりの勢いで大声で叫ぶがネフィアはまるで動じることはなかった。
「さぁ?なにせ殿下達に国外追放を言い渡されてオラガルド王国を出てから二年が過ぎてますのであの国が今どうなってるかなど全く分かりませんね」
「あくまで白を切るつもりなのか!貴様が魔物共を操って王国で暴れさせていることはもう分かってるんだぞ!」
「いえ、本当に分からないからそう言ってるだけなんですけど。あと一つ聞きますがさっきからまるで私が元凶のように言うのはどうしてです?」
首を傾げて不思議そうに聞き返してきたネフィアのその仕草に四人は苛立ったのか縛られ転がされている状態だというのに次々と罵声を浴びせていく。
「そんなの決まってるだろう、貴様は二年前に俺達に悪事を暴かれて婚約破棄と国外追放をされたことを逆恨みをして襲わせているのは明らかだろうが!」
「だから俺はあの時に言ったんですよ!こいつは必ず国に害をなすから殺すべきだと!それを殿下やシャルが許してくれたから国外追放で済んだというのに恩を仇で返すとは!」
「まったくだよ!僕もまさかここまで酷い悪女だとは思わなかった!」
「もう私は怒っていませんし陛下も魔物を暴れさせるのを止めるなら恩赦を考えてもいいと言われおりてました。ですからもうこんなことは止めてください!」
「いい加減に少しは静かにしてもらえませんか?それが出来ないなら仕方ないのでこのまま森に捨ててしまいますよ?」
「「「っ!?」」」
ネフィアの声は大きなものではなかったが四人は青褪めて口を閉ざした、なにせこの森は一見平和そうに見えるが実際は強力な力を持つ危険な魔物が跋扈する恐ろしい森なのだ。
そんな森に縛られたまま捨てられたら一時間もせずにあっという間に魔物の餌食になると簡単に予想できる、実際ここ前で来るまでに多くの護衛の兵士達が命を落としているのだ。
口を閉じ騒ぐことを止めた四人だったがその目には怒りを宿しネフィアを睨み続けていたが当の本人はまったく怯む様子もなく逆にゴミを見るかのような目で四人を、かつて婚約者だった祖国オラガルド王国の第三王子であるロムド・ヴィル・オラガルドとその友人であり側近候補である、大将軍を父に持つエクス・ガルモドと宰相の息子であるコラン・ベーガ、そして自分の婚約者を奪った希少な光魔法の使い手である伯爵令嬢のシャルナ・ヒースを見下ろした。
ネフィアは元々は大国オラガルド王国の貴族であり建国時から続く名家マギナス公爵家の当主だった。早くに両親を亡くしたために若くして当主になった才女だったのだが二年前にロムドに婚約破棄をされると同時にやってもいな王太子とシャルナに対する殺人未遂の濡れ衣を着せられ爵位と財産を剥奪され国外追放されたのだ。
「何度も言ってますがオラガルド王国に魔物が現れ始めたのは私がけしかけたわけじゃないんですよ。なんなら神に誓ってもいいです、私はこの件には関わってはません」
「嘘をつくな!ならどうして貴様が追放されたのと同時期に魔物が現れる!」
ネフィアの祖国であるオラガルド王国は他国と比べて圧倒的に魔物による被害が少ない平和な国だった、他国はそんなオラガルド王国を交易路として利用しそのことが莫大な富をオラガルド王国にもたらし大国と呼ばれるまでになったのだがそれも二年前までの事だ。
二年前ネフィアが婚約破棄をされ国を追われて直ぐにそれまでの平和が嘘だったかのように次々と魔物が現れ暴れだし王国中で大きな被害が出てしまったのだ、そのため今までオラガルド王国を交易路として利用していた者達が次々とオラガルド王国から離れていってしまいかつてのが栄華が嘘のように衰退してしまったのだ。
この前代未聞の事態にロムドの父である国王は魔物が現れだした理由を調査するように王命を出し王国一丸となってた調べたがその理由は分からずに終わってしまい国の上層部の者達は頭を抱えてしまっていた、そんな時に誰がぽつりと、これはネフィア嬢の呪いではないのか?そう呟いたのだ。
最初はまさかそんな呪いなど馬鹿らしいと笑っていたのだがどんなに調査をしても魔物が何故出没し始めたのかその理由が一向に分からず追い詰められていくなかで次第にそれが真実だと思われるようになっていったのだ。
「どうせ貴様のことだ二年前のことを逆恨みしてこんなことをしたのだろう!流石は汚れたマギナス公爵家っ!呪われた魔に愛された一族だっどこまでも腐グェっ!?」
「言いましたよねロムド殿下?少しは静かにしてくださいと」
正義は自分にあると決めつけ罵るロムドの頭を踏みつけ黙らせるネフィア、その暴挙に護衛も兼ねているエクスが怒鳴りつけようとするが自分達を見下ろすネフィアのあまりにも冷たい目線と額にクッキリと浮かぶ青筋に言葉を飲み込むことしかできないでいた。
もうその目を見れば分かってしまう、これ以上彼女の機嫌を損なえば本当に自分達は森に捨てられ魔物の餌にされてしまうということが、それに気付きエクスだけでなくシャルナとコランも口を閉じガタガタと震えでした
”魔に愛された一族”それはオラガルド王国にいた頃、マギナス家が他家から呪われた一族として蔑みとともに言われ続けてきた言葉でありネフィアが婚約破棄と国外追放をされた大きな理由でもあった。
―― 二年前 ――
まだオラガルド王国の貴族であったネフィアは建国記念パーティーという国内の殆どの貴族が参加していた場所でロムドに一方に婚約破棄を叩き付けられ最初はどういうことか分からずに呆然としていたネフィアの前でロイドは一人の令嬢の名を呼び自分の隣に立たせた。本来なら婚約者である自分が立つべき位置に立った少女に眉を顰めながらネフィアは彼女が誰か直ぐに思い至った。
王国で一人だけしかいない希少な光魔法の使い手であるシャルナ・ヒース伯爵令嬢だ。気付けばシャルナを守るようにロムドの友人であり護衛も兼ねているエクスがロムドとシャルナを守るように二人の前に立ちネフィアを睨んだ。
「皆パーティーの最中で騒がしくしてすまない!だが皆に聞いて欲しいことがあるのだ!それは我が婚約者であるネフィア・マギナス公爵が行った許されざる悪事についてだ!コラン!」
突然の事態にざわめく貴族達に一言謝るともう一人の友人であるコランを呼ぶと待ってましたとばかりにコランは大きな声で語りだした。
「はいロムド殿下!ネフィア嬢、貴女も彼女が希少な光魔法の使い手であることは知っているはずだ!だが貴女は自分よりもロムド殿下に愛されているシャルナ嬢に醜い嫉妬をして数々の嫌がらせ行っていたのは調べがついております!まず貴女は自分の取り巻き達を使いシャルナ嬢の私物を隠したり壊したりしたのです!その上、根も葉もない誹謗中傷を事実であるかのように語らせ彼女の優しい心を深く傷つけた!」
「これだけでも貴族としてあるまじき愚かな行いだということが皆にも分かってもらえただろ!だが何よりも許せないのはお前がシャルナを殺そうとしたことだ!そうだなシャルナ?」
「はい、その通りですロムド殿下、もう恐ろしくて恐ろしくて仕方ありませんでした。私は運良く助かりましたが護衛の人達が何人も犠牲になってしまって……」
ネフィアは自分のはそんなことはしていないのに何を根拠にそんな馬鹿ことを言ってるのだとロムド達を呆れた目で見るが他の者の反応は違っていた。
悲しそうに語るシャルナの言葉に固唾を呑んで見守っていた者達が騒がしくなりいたる所で「そんなことを?」「嘘だろう!?」「いやでも彼女ならあるいは……」そんな声が上がりだした。
「お待ち下さい殿下!色々と言いたいことはありますがまずそれらを私が行ったという証拠はあるのですか?」
このままでは完全に自分がシャルナを殺そうとした犯罪者にされてしまうと慌てて反論するネフィアにロムドは侮蔑の目を向ける。
「当然だ!お前の取り巻き達が素直に白状したぞ、実家を潰されたくなければ言う通りにしろと脅されて仕方なく行ったとな」
「それは証言であって証拠ではありませんではないですか!それに嫌がらせはともかく彼女を殺そうとしたというのはまずありえません!たとえ私に脅されたとしても希少な光魔法の使い手である彼女を殺そうとすれば良くても爵位を剥奪、悪ければ連座で一族全員が処刑されるのですよ、そんなことをする者がいるはずがありません!」
口にこそ出さないが本当ならネフィアは『領地経営とロムド殿下の尻拭いで忙しくて取り巻きどころか友人もいない私がそんなこと出来るわけないでしょ!』と怒鳴りたくなるのを我慢して反論するとロムド達の顔は更に険しさを増した。
「ああそうだな、確かにいくら脅されたからと言ってもそんな危険な真似などする人間はいないだろうな」
それを聞きほっと胸を撫で下ろしかけたネフィアだったが次にロムドが言い放った言葉に耳を疑うことになる。
「だからこそ貴様は人間ではなく魔物を操り彼女を襲わせ殺そうとしたのだろう!」
頭は大丈夫なのかしらこの人?それが正直なネフィアの思いだった、自信満々に告げるのだから何か言い逃れできないような証拠でもあるだろうかと思えばまるで子供のような考えを自信満々に語りだすロムドに白い目を向ける。
「一つ質問ですが何を証拠に私がシャルナさんに魔物をけしかけたと言うのですか?偶然に彼女が襲われただけかもしれないではないですか」
「ふん!襲われた場所は普段魔物による被害などない場所なのだ!しかもその時はシャルナは数多くの護衛に守られ馬車に乗って移動していた最中だったのだ、普通ならば魔物は警戒し近寄ることもしないはずだ。なのに襲われなど誰かが操っていたとしか考えられない!そしてその場所はお前の領地の中だったのだ、どう考えてもお前が仕組んだとしか思えない!」
「ロムド殿下の仰る通りだな、流石魔に愛された呪われた一族だ。どこまで汚いことを平然とする」
「少し言いすぎだよエクス、でもまあ事実だからね言われても仕方ないことだけどね」
「っ!」
ネフィアはエクスが言い放った言葉に今にも人を殺せそうな鋭い視線を向けた。
”魔に愛された一族”
それは代々恐れと侮蔑を込めて言われてきたマギナス公爵家の蔑称だ。マギナス家の人間は理由は分からないが闇魔法の資質を持つ者が多く生まれてくる家系だった。闇魔法の資質を持つ者が生まれる確率は約二十万人に一人いるかどうかだ、そして闇魔法は多くの国で邪悪な魔法として恐れられておりオラガルド王国でも蔑まれている魔法でもあった。
そしてもう一つ何故かマギナス公爵家の人間は人に懐かないとされている魔物達に懐かれ服従させることが出来たのだ、その為に恐れられそう呼ばれるようになったのだ。
「……ロムド殿下それでは私が行ったという証拠にはなりませんよ。仮にですが私が行ったことだとして私達の婚約は陛下が決め政略を目的としたものですのでロムド殿下の一存では破棄することは出来ま「ならばなんの問題もない」っ!」
何とか怒りを堪えロムドを諭そうとするとネフィアの言葉を遮るよう別の者の声がホールに響き渡った。
「陛下っ!?」
「父上っどうして此処に!?」
突然響いてきた声に驚き振り返るとそこにはロムドの父である国王が険しい顔で立っていることに気付き皆が慌てて臣下の礼を取り跪いた。
「良い皆の者顔を上げよ。さてネフィア嬢よ、ロムドが宣言した婚約破棄だがこの儂が許可する」
「おお!ありがとう御座います父上!」
「……陛下が仰るのならわかりました。殿下との婚約破棄確かに承りました」
喜色満面に喜びの声を上げるロイドと全く予想外だった国王の発言に唇を噛みながらも了承したネフィア。だが国王は更に追い打ちをかけるように言葉を続けた。
「マギナス公爵家令嬢ネフィアよ、儂は今回のことを受けてマギナス公爵家から爵位と領地の剥奪及び財産の没収、そしてマギナス家最後の一人である汝の国外追放を宣言することを王家の名においてこの場で宣言する!もう二度と我が国に戻ることは許さん!」
「そんなっ!?待ってください何故なのですか陛下!まさかロムド殿下達が語ったことを信じているのですか!」
思わず相手がこの国の国王であることも忘れ無礼にも声を荒げて詰め寄るネフィアに国王が向けたのは他の者と同じ侮蔑と怒りを宿した目だった。
「理由は二つある先にロイドが述べたものが一つ、そして二つ目はこれまで伝えていなかったのだが耳の早い一部の者はもう知っておるだろうが、儂の第一子にして王太子がマギナス領の視察中に魔物に襲われ重症を負い今も治療を受けておる」
「まさか陛下はそれも私が仕組んだことだと思っているのですか?」
「ふんっ!もしそうならば貴様の首を既に切り落としておる!」
「では何故です?今まで祖国のためにと努力してきた我が公爵家にどうしてこのようなことを!」
「儂はな昔から貴様等マギナス家の者達が公爵という高いに地位にいることがっいや、儂の治めるこのオラガルド王国にいることそのものが気に入らなかったのだっ!
だがそれでも貴様等を公爵家として扱ってやっていたのはその呪われた力で魔物共からこの国を守るためにと仕方なくだ!だがそれがどうだ?大切な王太子は重症を負い、王国で唯一人の光魔法の使い手であるシャルナ嬢には醜い嫉妬で嫌がらせを行いその挙げ句に彼女まで魔物に襲われておるではないか!
これでは貴様等のような呪われた化物共に爵位を与えているか分からん!役立たずの厄介者などこれ以上儂の国に置いておくことなどできるかっ!」
長年の間溜まっていた不満を吐き出すかのように国王は青筋を浮かべ唾を飛ばしながらネフィアを怒鳴り散らす、それはロムド達や関係のない見ているだけの貴族達も思わず竦み上がってしまうほどのものだった。
「……そうですか、それが本心だったのですね陛下?」
「そうだとも。いや違うな儂以外の者も皆がそう思っておる!この国お前等のような呪われて者など必要ないとな!そうであろうお前達?」
国王の言葉に賛同するかのように集まってい貴族の同意の頷きを返し中には拍手を送っている者までもいた、それを見た瞬間ネフィアのなかで何かが切れた。
「いいでしょう貴方達のお望みの通り私はこの国を出ていきます。私もこんな愚か者達しかいない国にはもう愛想が尽きましたからね」
まだ顔を真っ赤にしたまま怒りに身を震わせている国王とは逆にネフィアは先程までの不安気な顔ではなく一切の感情が抜け落ちたかのような無表情で淡々と国を出ていくことを告げた。
もうこんな場所には用の無いと帰ろうと出口に向かって歩いて行くネフィア。そんな彼女を誰もが厄介者がいなくなることに安堵し見守っている中で一人だけネフィアを呼び止めた者がいた。
「待ってくださいネフィアさん!」
まだ何かあるのかと面倒そうにしながらも足を止めて振り返るとシャルナは目の端に涙を浮かべながら両手を組んでネフィアを見ていた、それはまるで懺悔を促すシスターのようにも見えなくもなかった。
「私は一言でいいので謝ってほしいだけなんです!そうすれば私は貴方を許しますしロムド殿下や国王様だって許して下さるはずです!そうですよね?」
「シャルナ、君はこんな悪女にすらも情けを掛けるなんて本当に優しい人なんだ!」
「ふむ、大切な光魔法の使い手であり被害者の一人であるそなたがそのように願うのならば少しは減刑を考えてやってもよいか。よし、ならばネフィアよ、今直ぐこの場で己が犯した罪を認め迷惑を掛けた全ての者に這いつくばって許しを請うのならば国外追放だけ止めてやってもよいぞ」
「よかった!皆さんもネフィアさんが心から謝罪すれば許してくれるって言ってくれてますよ!」
まるで罪人に対して救いを与える聖者のようにシャルナは笑いながらネフィアに謝罪を促す、そんな彼女に感動したかのように頷くロムド達と国王。ネフィアはそれを暗く冷めたい目を向けてそのくだらない三文芝居のようなやり取りを見ながら吐き捨てた。
「結構です、私は貴方達に謝らなければならないことなど一つとして行っていません、なのに何故謝罪などしなくてはならないのです?それに先程言ったはずですよ。もうこの国に愛想が尽きたと」
その言葉に「不敬な」「立場が分かってないのか」「これだからあの家の者は……」などと騒がしくなってしまうがもうネフィアは止まることはなく一人でパーティー会場を出ていってしまった。そして誰もいない場所まで来るとまだロムド達が居るだろう会場に視線を向けてポツリと消え入りそうな声で呟いた。
「さようなら愚かなロムド殿下。さようなら何も知ろうとしなかった馬鹿な陛下。さようなら父様や母様、そしてご先祖様が愛したオラガルド王国」
それはオラガルド王国を見捨てる決意を固めるための言葉だった、ネフィアにはこれからオラガルド王国がどうなるか分かっているがもう二度と戻らないことをこの時心に決めたのだ。
「これから大変でしょうが頑張ってくださいね」
今まで婚約者だったロムドも見たことがないような華やかな笑みを浮かべならがネフィアは生まれ育った国を出るために歩き出した。
―― そして現在 ――
婚約者だった自分を確かな証拠もなく己の感情のままに大勢の前で罵倒し婚約破棄をしたうえ全てを奪って祖国から追放したロムド達。
そんな者達があれから二年が過ぎ昔のことなど忘れて楽しく一人暮らしを満喫しているところに何の連絡もなく突然現れたかと思えば婚約破棄の時と同じように人の話を聞かずに今オラガルド王国で起きている魔物による騒動は全てネフィアの手よるものである決めつけてネフィアが何を言っても全て嘘だとして罵倒を浴びせ謝罪と魔物達を止めるように迫ってくるのだからネフィアが怒るのも無理はないだろう。
「念の為に一応聞きますけど陛下達はきちんと原因を調べたんですか?きちんと調べれば簡単に分かるはずのことなんですよ?それとも私が思っていた以上に陛下達は無能だったんですか?いえ、すみません無能だからこそこんな事になってるんでしたね」
「なっ!?貴様は王家を馬っ」
馬鹿にしているのか!そう怒鳴ろうとしたロムドだったがネフィアが静かに片足を高々と上げているのを見て黙るしかなかった。
「まったく未だに王国に魔物が溢れかえった理由も分からないなんて王宮は本当に救いようなのない愚か者達の巣窟になっていたんですね……先王様やその配下の方々は立派だったのに跡を継いだのがこれではあまりにも浮かばれませんね」
「何が言いたいのだ貴様は!」
「いえ、ただ先王様達は我が家の重要性に気付いていたのに陛下達は何も知らなかったのかと思うと可笑しかっただけです」
「……どういう意味だそれは?マギナス家の……重要性だと?」
溜息を吐きながらネフィアが口にした先王という言葉にロムドは怪訝そうに眉を寄せて聞き返した、何故なら父王や王妃、多くの重臣達が反対した自分とネフィアの婚約を王命を出してまで強引に結んだのは他ならぬ祖父である先王だったからだ。
「本当に分からないようですね。仕方ありませんから教えてあげますがその前に私も殿下達に聞きたいことがあるんですがいいですか?」
「ふんっ言っておくが王国に不利益になる事なら話す気などないぞ!」
「そんなことは最初から聞く気はありませんから安心してください。どうせもう直ぐ崩壊する国のことなんて聞いても意味がないですしね」
「っ!!なら何だ!?一体何を聞きたいんだっ」
「そんなに怒らないでください殿下、私が聞きたいのオラガルド王国が出来た当初の国の様子がどんなものだったか伝えられているのかどうか、それが知りたいんです」
「はぁ?」
もっと別な、それこそ王国の重要な機密を聞き出そうとするのでないかと身構えたのに聞かれたのはまったく予想外のことに困惑するロムド、見ればエクスやコラン、シャルナの顔にも何を言ってるんだコイツ?とそんな疑問の色が浮かんでいた。
「そんなことなど知らん、俺は何も聞いてないからな。だが建国したばかりの国には様々な問題が出るはずだからな沢山の苦労があったことくらいは分かるがな。だがそれがどうしたというのだ?」
「そうですね、当時は様々な問題がオラガルド王国を襲い掛かっていたらしいですからね。ではここで皆さんに問題ですが当時一番オラガルド王国の者達を悩ませていた事が何か分かりますか?」
まるで子供に質問をするかのように指を立てながら聞いてくるのに苛立ちながらもロムド達はそれぞれ思い立ったことを言ってみた。
「それは他国との領土争いだろ。王国は他の国よりも魔物の被害が遥かに少ないんだ、そんな平和な土地を他国が狙わないはずない」
「いえ恐らく領地分配での貴族との軋轢などではないですか?今でも一部の者は不満を隠すことなく声を上げていますからね」
エクスとコランは其々武官と文官の家系らしく他国の侵略と王族と貴族達の利害による諍いだと答えた。どちらも有り得そうな答えにロムドとシャルナは納得したように頷いているがネフィアだけは半目になり呆れたように溜息を吐くと子供にでも聞かせるように話し始める。
「まったく違います。いえ確かにそれらもありましたし大変な問題には違いありません、ですがその前にもっと大きな問題があったんですよ、それは今と同じように魔物による被害です。建国当時のオラガルド王国のいたる所に多くの魔物が棲み着いており軍隊を派遣しなければ倒せないような強力な魔物も数多くいたそうです」
「はあっ!?お前は俺を馬鹿にしてるのか!俺は王族として我が国の歴史も学んできたがそんなことはどこにも書かれて無かったぞ!」
「そうよ!貴方が魔物をけしかけるまで他国が羨むほどにオラガルド王国は魔物の被害なんて無かったのよ!嘘を付くならもっとましなことを言いなさいよ!」
「大方俺達を騙して煙にまこうとしてるんだろうがそんなことは無駄だ!」
「全くですね、もしも貴方が語ったように建国当時、魔物が多数いたならその魔物達はどこに行ったんです?まさか王国軍が退治したと言うんじゃないですよね?」
「嘘ではありません。今からきちんとその理由を話しますから少し黙っててくれませんか、それが出来ないならその子のご飯になってもらってもいいのですよ?」
一度も聞いたことがないことを言われて先ほど以上に喧しく騒ぎだすロムド達の後ろを指差しながらネフィアは笑う。
「「「「え?ひゃあっ!?」」」」
縛られながらも首を動かし何とか後ろを見ると護衛のはずのエクスも含めて四人全員が悲鳴を上げて自分達の後ろにいるものから距離を取ろうと芋虫のように体を動かし後ずさった。
いつの間に巨大な黒い狼が真っ赤な目で自分達を見下ろしていたのだ。しかも口か涎を垂らし尻尾を大きく振っている。
『これ食べてもいいの?』
まるでそう言うかのように小さく吠えるとネフィアは苦笑を浮かべて首を横にふる。
「ダメよ、殿下達にはまだ話さなければならないことがあるんだから、でもそうねこれ以上騒ぐようなら面倒臭いしそれでも良いかもしれないわね」
そのなんとも気楽なやり取りに冷や汗を流し顔色は青を通り越して既に真っ白に変わり、体はガタガタと震わす四人だが今度は声を上げることはなく黙ったままだ、下手に騒げば直ぐにでもこの狼の餌にする気だと分かったからだ。
「では静かになりましたし続きを話しますか。そもそもオラガルド王国は元から魔物が多い土地に建国された国だったのですよ……」
ゆっくりだがよく通る声でオラガルド王国の誰も知らない、本来ならば後世に伝えなければならいはずの王族達すら忘れ去ってしまった建国の秘話を話し始めた。
かつて大陸中に戦乱の嵐が吹き荒れていた時代があった、戦乱が起きた理由は豊かな土地を巡る小さな国同士の小競り合いだったのだが、これが各国に飛び火し同じように土地を奪い合う戦争が始まりあっという間に大陸全土を飲み込む戦乱に発展していったのだ。
そして元々オラガルド王国は戦争に負けて国を失った王族が似たように国を失った者達を纏め上げて建国した国だったのだ。土地を巡って争ってる中で建国することが出来たその理由は単純にオラガルド王国が国土とした場所が魔物が多く非常に危険な土地で支配しても面倒事が増えるだけで益がないために他国から無視されていた場所だったからだ。
当時の国王は建国前に想像していた予想よりも遥かに強く数の多い魔物たちの対応をどうするか側近達と共に連日連夜頭を悩ませる日々を送っていた。
そんなある日、国を追われたある一族がオラガルド王国にやって来ると国王にある提案を持ち掛けたのだ、最初はそんな事が出来るはずがない半信半疑だった国王だったが他に良案もなかったために一族が出した提案を認めることにした、その内容は次のようなものだった。
『私達の一族は代々魔物に愛される者が多く生まれます、その能力を使えばオラガルド王国の魔物の被害は大きく減らすことが出来るはずです。被害が減り王国に平和を与えられた暁には私達に安住の地を与えて欲しいのです』
そして結果は目覚ましいものだった。毎日のように届いていた魔物による被害の報せは目に見えて減っていったのだ。国王はこの結果を知ると、その力が本物だと確信し一族に公爵位と王国最大の規模を誇る領地を与え今後もその力を王国のために使わせようと考えた。
そしてこの一族こそがネフィアの先祖であるマギナス家だったのだ。
「ここまでは話せばどうしてオラガルド王国に魔物が出始めたかいい加減分かってくれましたか?」
話し終えたネフィアの顔は晴れやかなのに対してロムド達の顔色は青から白に変わり今は土気色になり止めどなく冷や汗を流し着ている服をグッショリと濡らしていた。
「うっ嘘だ嘘だ嘘だっ!?何がマギナス家が魔物を支配して国を平和にしただ!?ふざけるなよっそんな馬鹿な事があるはずがないっ!?全部お前の考えた嘘に決まっているっ!」
真っ先に反論したのはロムドだがその目はどこか虚ろで焦点が合っていないようだった。それも無理もないことだろう、ネフィアが語った建国当時の話が事実であったなら今回のオラガルド王国に魔物が出没し始めた理由はマギナス家最後の一人であるネフィアを王国から追放してしまったからと言うことになる。
つまり今オラガルド王国を襲っている未曾有の危機を引き起こしたのは自分達と国王だということなるのだ。それが民に知られればどうなるかなど簡単に想像できる、そのためロムドにはネフィアの語った事を否定するしかない。そしてそれは他の三人も同じことだった。
「そ、そうよ!もし貴方が言ったことが事実ならマギナス公爵家があった時にも魔物による被害が出ていたのはどう説明する!」
「シャルナの言う通りだぞ!お前らが魔物を支配していたなら彼女や王太子殿下が襲われたのだ!」
「それともやはりあれは貴方が魔物を操って襲わせたものだったのですか?どうなんです!」
「悪いの頭と耳のどちらかしら?私は愛されていると言いましたが支配しているなんて一度も言っていませんけど?」
「は?何を言ってる同じようなものだろ?だからこそ魔物は命令に従ったんだろ?」
「全然違いますよ。私達はあくまでも魔物達にお願いをしているだけなんです。『オラガルド王国内ではできるだけ大人しく暮らして、人を襲わないでほしい』と頼んだだけです」
「待ちなさいよ!やっぱり同じことじゃないの!魔物に人を襲わないように言ってるならどうして私や王太子様が襲われてるのよ!」
自分の信じたくないことは全て嘘だと騒ぐロムド達を手のかかる子供のようだと思いながらも話を続けるネフィアにシャルナが食って掛かる。
「それは貴方達二人が勝手にマギナス公爵領を荒らしたからですよ、いいですか?魔物達は確かに私達の頼みをきいて人を襲わずにいてくれましたがそれにはある条件あったんです」
「条件だと?」
「そうです、私達の頼みをきいてもらうのですからこちらも魔物達の頼みをきくのが道理というものです」
魔物達はマギナス家の頼みを聞き入れ人を襲わない代わりに自分達も人に狩られることなく暮らせる場所を求めたのだ。
それを聞いた初代マギナス家当主は国王から与えられた領地に魔物達を呼ぶと一つの法を作り公布した。その内容は『領内にいる全ての魔物に対して自衛のため以外に危害を加えし場合どのような理由があれど重罪とし、その生命を持って償うこととする』とあった。
この法を公布した他にもマギナス家の者達は魔物達が棲みやすいようにと考え領地開発などはあまりせず昔ながらの自然をそのまま残したりしていたのだ。
「なのにシャルナさんと王太子殿下ときたら……」
二年前のパーティーで王太子はマギナス領の視察の最中に襲われた発表されたが実際は違う。
実はマギナス領内には未開発の金鉱脈があったのだがそれがある時に王太子に知られてしまうと直ぐにでも採掘をするようにと命令を出されたのだがネフィアはこれは拒否した。
金鉱脈があるその場所は魔物達が棲んでいる深い森の中心にあり採掘をするならばまず森を切り開かねばならない、そうなれば魔物達は棲家を追われることになりそれはマギナス家が魔物達と交わした約束を破ることになるからだ。だが王太子はこれに激怒し、止めるのも聞かずに許可なく採掘を始めてしまったのだ。
結果、棲家を荒らされ怒り狂った魔物達に襲われ負傷したのだ。
「たとえ王族といえど領主の許可なくその領地に手出しすることは禁じられております、本来ならばいくら王太子といえど重罰に処されるはずだと思っていたのですが殿下はどうですか?今もあの方が王太子をされているのでしょ?」
ロムドは答えずに唇を噛み俯いていた、それをつまらないものを見るように一瞥すると矛先をシャルナに向ける。
「そして次にシャルナさん。貴女が私の領地で何をしたのかは覚えてますよね?」
「わ、私は罪になるようなことはしていないわよ!」
静かな声でネフィアが問いかけたのに対して問われたシャルナは明らかに狼狽し目が泳いでいるどう見ても怪しかった。
「貴方が魔物嫌いであることは誰もが知っている有名な話です、それ自体は貴女の問題なのでどうでもいいのですが他家が治める領地にまでやってきて無害な魔物達を殺すのはどうかと思いますよ、殿下達はどうでしょうか?
それとそのせいで反撃されて怪我を負ったのを私が魔物をけしかけたからだと言われても困りますねからね」
「魔物は全て邪悪な人間の敵なのよ!それを殺してどうしていけないのよ!?だいたいアンタはっ!?」
震え怯えていた顔から一転しまるでオーガのようにな凄まじい形相になったシャルナはネフィアを睨みつけ聞くに堪えない罵詈雑言を浴びせ始めた。
エクスとコランは呆然とした様子でロムドとシャルナを交互に見ていた。二人はシャルナと王太子が魔物に襲われたことは知っていたがその詳しい経緯などは知らなかったからだ。
聞いた話を鵜呑みして視察や移動中に襲われたものだとばかりに思っていたのだ。しかしその前提が崩れてしまった、これでは本来裁かれねばならなかったのはネフィアではなくシャルナと王太子のほうだ。
「私はただオラガルド王国を守るのを止めただけなんですよ、貴方達は私のせいだと文句を言ってますが追放された後まで王国を守る必要があると思います?」
そんなものはあるはずがないとエクスとコランは項垂れたがロムドとシャルナは諦めが悪かった、いや自分達の立場を理解していなかったというのが正しかった。
「ならばお前が王国に戻ることを特別に許してる!それに父上に頼ん爵位も元の公爵にしてやる!だからさっさと戻って王国で暴れている魔物共を大人しくさせろ!」
「そうよ、それくらいしか役に立たないんだから早くその呪われた力を使いなさいよ」
どこまでも上からのその発言にネフィアは怒りを通り越し憐れみすら感じていた、エクスとコランも二人のその態度に口をパクパクとして固まっている。
「貴方達は馬鹿ですか?いえ間違いました大馬鹿でしたね。質問しますが何故私がそんな面倒なことをしなければならいんです?」
「何故だと!今も多くの民が魔物によって苦しんでいるのだから貴族なら助けるのは当たり前のことだろうが!」
「私はもう貴族ではありませんよ、マギナス公爵家を取り潰したのはロムド殿下と陛下ではないですか。まだ若いのもうボケてしまわれるなんて可哀想な人ですね」
「誰がだ!貴様こそ俺の話を聞いていたのか!?帰国も認めるし爵位も戻してやると言ってやってるのだ!」
「そんなもの私は必要ではありませんのでお断りします」
「っ!?」
なおも食い下がろうとするがネフィアが自分を見る目がかつて自分がネフィアに向けていたもと同じだったことに気付きロムドは口を噤む。
二年前、多くの者達の前で罵倒し全てを奪って国外追放したくせに今更なにを虫のいい事を言ってるのだとその目は語っている。
ロムドは何も言えず助けを求めるようにエクス達を見るが二人はどうにもすることが出来ないと分かっているためサッと目を逸らしてしまった。
「た、確かにあれは俺が悪かったことは認めてやる。だが他の者は関係がないだろ?それに一番苦しんでいるのは民なのだ!」
「関係ありませんよそんなこと。私達マギナス家の者があの国でなんて言われていたかは知ってますよね?」
「……魔に……愛された一族だ……」
嘘を言うわけにもいかずに苦い顔で答えるチラリとネフィアの顔を覗くとそこには笑みがある。ただしその笑み凍りついたかのような冷たいものだ。
「その通りです。それは本当のことですから別に怒ってませんよ。ですが他にも色々なことを言ってましたよね?呪われている汚れているもっと沢山のことを言いました、それも王族や貴族だけでな貴方が言った民達すらもね」
「…………」
もう押し黙ることしかロムドには出来ない。昔からマギナス家がそのように陰口を叩かれていたのは事実であり婚約者であった自分がネフィアを邪険にしたことで増々悪化してしまったことを知っているためだ。
「あれほど私達を嫌い悪く言っておきながら自分達の都合が悪くなったら助けてくれだなんて、それに二度と王国に戻るなっと言ったのはそちらなのにオラガルド王国の者には恥じというものがないのですか?」
確かにそれはロムドの父である国王が宣言したことだ、それにあの場にいた多くの者が歓声を上げる中でネフィアがどんな顔をしていたかも今でも覚えているロムド達は絶望で顔を歪めたがシャルナだけはまだ食ってかかった。
「それでも血の通った人間なの!?これだけ多くの人が困ってるんだから助けるのは当然よ!それを見捨てようなんて!」
「最初に私を見捨てたのは貴方達の方でしょう。陛下が『お前等のような呪われて者など必要ない』そう言ったとき多くの貴族達が頷きましたよね」
「……」
「そしてその中にシャルナさんもいたことを私は覚えています。ですから私も貴方達にハッキリとい言います。私にはロムド殿下達もオラガルド王国もまったく必要ありません」
―― 半年後 ――
オラガルド王国は度重なる魔物による被害を受け国として成り立たなくなり滅び去った。そしてオラガルド王国の国民達は王国を捨てて他国に逃げようとしたが周囲の国々はそれを拒否し入国を禁じた為に国外に出ることができなかった。
これは周囲の国々もこの事態がネフィアの呪いだと勘違いしていたからだ、もしもオラガルド王国の者を助けるようなことをすればもしかしたら自国までも同じように魔物をけしかけられるのではないかと怯え、王族や貴族だけでなく平民すらも国から出れないように国境を封鎖したのだ。そのため今では魔物達の国と呼ばれるほどに多くの魔物が棲み着き、最早人間が住める場所ではなくなった地で元オラガルド王国の者達は魔物に怯えながら救いを求めながら生きていくしかなかった。
それを知ったネフィアは楽しみにとっていたとっておきの酒を取り出すと一人魔物達に囲まれながら楽しそうに祝杯をあげたのだった。