Eidolon
12 Eidolon
エーグレファン伯領の領都、スパラクス。
町の北端にある広大な伯爵の邸宅を見渡せる位置にホテルを見つけ、その最上階に部屋を取ったベルエールは、相も
変わらずの仏頂面で窓から外の景色を見ていた。
「タミヤ、まだルーエイからは何も連絡はねぇのか」
「はいです、何もないですよ」
「あのアホ野郎、どこで油売ってる」
「アルちゃんから連絡がきて、馬車から飛び出したっきりですよ」
「アルファンか・・・。
てめぇは会った事があるんだったな、どんなヤツだ」
「はいです、とーっても不思議ちゃんですよ。
すぐ消えちゃうですよ」
「てめぇの台詞とは思えんな。
だが、ヤツもこっちにいるはずだろ、今どこにいる」
「分かんないですよ。
盗賊の居場所を知らせた後は、魔術師を探すって言ってたですよ」
「どいつもこいつも勝手なヤツ等だ」
そこには、タミヤの他にルルートもいた。
「いいじゃないですか、どうせ私達は傍観者でいいのですから。
ルーエイがいなくても支障はないはずです」
「そんな事言ってんじゃねぇ。
根性が気に入らねぇって言ってんだ」
「いつまでもそんな事ばっかり言ってるから、みんな従わなくなるんです。
いい加減に学習して下さい」
「てめぇもそうか」
「そうですね、私もそろそろ出かけようかと思ってました。
こっちには美味しいチーズがあると聞いたもので」
「フン、勝手にしろ」
再び窓の外へ目を遣り、伯爵の邸宅を眺めるベルエール。
無駄にだだっ広い敷地の中に、林、庭園、大小様々な建造物が幾つも点在し、その一番奥に目を引くひときわ大きな
邸宅が小さく見えている。
彼の第一印象は、意外と警備が薄いと感じた事だった。
カンブルース公の邸宅の厳重過ぎる警備態勢を見てきた彼には、同じ貴族の邸宅とは思えないほどの小規模で簡素な
その態勢に、違和感さえ覚えるほどだった。
長閑で閑静な佇まいは、とてもクーデターを画策している大本営がそこにあるとは思えない。
これからそこで繰り広げられるであろう騒動を見通せば尚の事、この静寂が余計に掻き立てるものがある。
ルーエイが彼等と合流したのは、その翌日だった。
全く悪びれる様子もなく、いつもの飄々とした顔で部屋に入ってきた彼をベルエールが詰った。
「どこほっつき歩いてんだてめぇ、仕事する気あんのか」
「嫁に会ってきた」
「てめぇにゃ何人嫁がいんだよ」
「ルーちゃん本命のお嫁さんですか?」
「なに言ってる、本命はお前の乳に決まってんだろ」
「ルーちゃん嘘つきです、目が死んでるですよ」
「死んでねえよ。
失礼なおっぱいだな、お仕置きすんぞ」
「おっぱいは何も言わないですよ」
「お前のおっぱいは俺に揉んでくれって言ってるぞ、乳は口ほどに物を言う」
「ルーちゃんやっぱりエッチいですよ」
「くだらん漫才してんじゃねぇよてめぇ等」
「まあまあ、細かい事は気にすんな。
それより、こんな高そうな宿に泊まっていいんか?
タミヤが競馬で儲けた金は全部バラ撒いたはずだろ」
「儲けたのは俺だ、タミヤじゃねぇ」
ここで補足説明を。
以前、リサンシューの市長杯競馬で大量の金貨を得たベルエールは、任務の帰路、町に宿泊する度にタミヤに命じて
ネズミやカラスなどの小動物を集めては、全ての金貨をそれらに一枚ずつ咥えさせて野に放した。
金貨がどうなるかは彼等次第。
人の手に渡るか、巣の材料になるか、或いは土の中に埋められるか、川の中に落とすか。
誰にも関与させず、制約も制御も受けない、ただの自然界の営みの中に全額を委ねてしまっていたのであった。
「で、ここで何すんだ?」
「俺達は高みの見物だ。
どうせなら見晴らしのいい所に陣取った方がいい」
「ああ、確かにいい景色だな。
で、見世物はいつ始まんだよ」
「知らん、アンサンが見張れと言っただけだからな。
予測が正しけりゃ、明日くらいには始まるだろ」
彼等の任務は、エーグレファン伯に対しカンブルース公がどう動くのかを見極める事にある。
☆
カンブルース公の隠密部隊エイドロンが、このスパラクスで行動を起こしたのは、ベルエールの予測通りだった。
月のない深夜、隊長ラファール・スフィレンの下に集結した総勢25名の隊員達は、数名ずつのグループに分かれて、
エーグレファン伯の邸宅の襲撃作戦を開始する。
全員が動き易い黒い簡易防具を身につけ、黒い頭巾とマフラー様の長布で頭部と顔面を隠し、指の合図だけで互いの
行動を制御する。
彼等にとって、暗闇に紛れて邸宅の警備をしている領兵部隊を始末するのは、赤子の手を捻るより簡単な事だった。
白兵戦の訓練ばかりする軍とは違い、潜入、諜報、破壊工作、暗殺に長けた彼等の行動を阻止出来る者は、そこには
いないかに見えた。
鉄柵を乗り越え、敷地内に侵入した彼等は、周辺を警備する兵士達をナイフや毒矢で始末し、邸宅へ接近する。
邸宅の内部は、全ての灯りが落とされて真っ暗闇になっていた。
第一グループが、静かに窓をこじ開けて潜入し、伯爵の寝室を目指して活動を本格化させる。
異変が起こったのはその時だった。
唐突に、隊員の一人が、目の前にいた他の隊員を、手にしていた剣で襲いかかった。
仲間が仲間を斬った。
何がどうなってしまったのか、突然の出来事に狼狽える隊員達。
まさか、裏切り者がいたのか。
頭の中に、混乱と焦りが広がる。
声をかけても無駄だった。
襲った男は、気が狂ったように暴れて、手が付けられなくなっていた。
しかし、動揺している暇はない。
その者を除外しなければ、作戦は続行出来ない。
事態は、仲間同士の斬り合いに発展する。
惨劇は、このグループだけではない。
彼等の後に続いて潜入を計っていた後続のグループでも、同様に身内が身内を襲い殺し合うという、未だ経験のない
状況に翻弄されていた。
誰しもが混乱し、疑心暗鬼に陥りながらも、任務を果たすためには仲間を排除せねばならない究極の判断を迫られる。
躊躇すれば自分が殺されてしまう。
それは分かってはいるが、今日まで寝食を共にし、訓練を重ねてきた顔見知りの仲間を斬らねばならないというのは、
並大抵の覚悟で出来る事ではない。
冷徹な意思と覚悟で一人を斬っても、別の者がまた襲いかかってくる。
いつ終わるともない悲惨な状況の中で、次々にバタバタと倒れていく仲間達。
もはや、誰が見方で誰が敵が分からない。
皆、極限状態の中で冷静な判断力を失い、作戦の続行どころではなくなった。
生き残る事だけに必死になっていた。
結局、邸宅に潜入していたグループは同士討ちで壊滅。
外にいた後続グループも、残すところ僅か数人にまで減っていた。
全滅が免れない絶望的状況が見えてきた時、敷地の木立の中から人の声が聞こえてきた。
「おい、逃げろ、ここにいたら全滅だぞ」
一番近くにいて声に反応した隊員が振り向いた先の木の下には、一人の見知らぬ男が立っていた。
隊員は無言のまま、一瞬の動きで男を斬りつけ、慌てた男がギリギリで木に隠れた。
その間にも、お互いに斬り合って倒れる隊員達が相次ぐ。
たまらなくなった男が、声に反応した隊員に駆け寄って、首根っこを捕まえて強引に木陰へ引きずり込んだ。
「何をする、放せ!」
「あれ?、あんた女か」
「貴様は何者だ」
「死にたくねえんなら言う事を聞け、ここから離れるぞ」
「ふざけるな、誰が死など恐れるか」
「相手か悪魔でもか」
「あ、悪魔だと?」
「あんたの仲間が悪魔に取り憑かれて暴れたんだ、あんたにそれが倒せんのか。
魔剣を持ってるようだが、それだけで悪魔が斬れるか。
出来ねえと、そこから先もねえんだぞ」
悪魔と聞いて、言葉を失い俯く女性隊員。
彼女に悪魔と対決した経験はない。
剣戟で倒せる相手かも分からない。
それでも、なんとか任務を果たす方法を模索し留まろうとする彼女を見かねて、男が彼女の頭部を覆っている頭巾と
覆面を剥ぎ取った。
隠されていた長い黒髪がハラリと垂れ下がる。
「お、黒髪もいいもんだな」
「貴様、何をする」
「まあいいから来いって」
「放せ、戻らねば!」
「もう遅いって、全員死んでる。
今更一人で行って何が出来る」
「それでも任務は果たす」
「悪いが、あんたには一緒にきて貰う」
男は、彼女の目を見つめてその動きを止めた。
☆
ホテルの窓から、暗闇の中を目を凝らして様子を窺っていたベルエールの元へ、ルーエイが帰ってきた。
一人の女性を連れて。
その女性の出で立ちを見て、ベルエールはすぐに何者かを察し、ルーエイに文句を言う。
「てめぇ、なに勝手に連れてきてんだよ」
「心配すんなって、武装は解除してるし、暴れないように瞳術をかけてる」
「そういう事言ってんじゃねぇよ、連れてきてどうすんだよ」
「色々聞きたい事でもあるんじゃねえかと思ってね」
その夜、部屋で寝ていたルーエイは、悪魔の気配を感じてすぐに起き、夜番をしていたベルエールに、こうも暗いと
状況が分からないから近くで見てくると言い残してホテルを飛び出していた。
「じゃあ、襲撃作戦はどうなった」
「全滅だよ、全滅」
「どっちがだ、伯爵が殺られたのか」
「違うって、この子の仲間の方だって」
「そいつはエイドロンの隊員だろ、奴等はそんなに弱かったのか」
「相手が悪魔じゃあな。
ちょっとやそっと訓練した程度の軍人じゃ敵にもなりゃしねえって」
「悪魔がいたのか」
「だから俺が出てったんだよ。
姿は現さなかったが邪気がムンムンしてら」
「そういえば、あの伯爵の下には魔術師がいるって報告があったな。
その魔術師が悪魔を操ってんのか」
「そんな事知るかよ。
悪魔が魔術師を名乗ってんのかも知れねえだろ。
でも、悪魔がこの連中を操って同士討ちさせたってのは間違いねえ」
それまで、床のカーペットの上に座って黙ったまま二人の話を聞いていた女性隊員は、瞳術のせいでよく動かせない
体を重そうに震わせながらルーエイに聞いた。
「その話は本当か」
「ああ、間違いねえよ」
「なぜ分かる」
「俺の目には見えるんで」
この者達は何者なのか。
暗闇の夜に伯爵の邸宅に現れ、隊長と仲間を殺された惨劇を悪魔の仕業と断定する。
そんな事が出来るのは、どこかの特殊部隊か暗殺者か・・・。
「貴様等は一体何者なんだ」
「どっかの誰かさんのお使い」
「刺客か」
「違う違う、ただの見物人。
あの伯爵が嫌いだって奴は、あんたのボス以外にもいるって事さね」
「怪しいものだな」
「怪しいのはお互い様だが、少なくとも俺達は暗殺者じゃねえ」
ベルエールが尋ねる。
「てめぇ等は、伯爵を暗殺するよう命令されたのか」
「・・・知らん」
「てめぇが答えんでもそれは分かってんだよ。
どういう情報で何人つぎ込んだかが知りてぇ」
「それを知ってどうする」
「俺達は何もしねぇ。
ただ上の人の材料になる情報を集めるだけだ」
「情報屋か・・・」
「まぁな。
答えたくねぇんならそれもいいさ、誰もそれでてめぇを責める気はねぇ。
このまま口を噤んで何も残さず死ぬか、せめて情報だけでも伝えて生きた証しを残すか、決めるのはてめぇだ。
気に入った方を選べ、どの道てめぇの帰る家はねぇ」
その言葉で、女性隊員は自分の置かれた立場を理解した。
どこかの勢力に捕らえられ、捕虜として尋問と拷問を受け、その後殺される。
自分の存在意義は、価値は、もうどこにもない。
嬲られ、辱められ、ただ殺されるだけなんだ。
「向こうが悪魔を使うって情報もあったのか」
「それは・・・知らなかった。
盗賊一味を使って色々やった情報は知っている。
軍を動かすために盗賊を隣りの伯爵領まで行かせたのを知って、今なら邸宅の方が手薄になっていると判断した」
「なるほど、やはり魔術師は伯爵の隠し球だったか」
☆
彼女の名前は、アリーゼ・ファルーシュといった。
その説明で、エイドロンという隠密部隊の実像が見えた。
隊長のラファール・スフィレンという男は、国軍生え抜きの軍人で、先代のカンブルース公に見出され引き抜かれて
領兵となった。
彼は、部隊の編成と運用の能力に秀で、その才を買われて特殊部隊の発足に中心的役割を担った。
彼が創設したエイドロンの隊員は、全員が孤児だった。
戦争や家庭環境その他の事情で家族を失ってしまい、教会や修道院に引き取られていた子供の中から、健康で能力の
高そうな者達を選抜し、教育と訓練を重ねて暗殺者集団を作り上げたのだ。
もちろん、アリーゼもその中の一人だった。
選ばれる子供には、一度だけ選択権が与えられる。
戦士となるか、そのまま孤児として暮らすか。
一旦入隊を決めると、専用の施設内で一生を過ごす事になり、衣食住は保証されるが、生活の全ては管理され、命令、
指示には絶対の服従が要求される。
その上で、読み書きや計算などの学習と、苛酷な軍事訓練が課される事になる。
人を殺す罪悪感と死への恐怖を失わせ、任務を果たす事が絶対の至上命題であり、他の何よりも優先されねばならぬ
と教え込まれる。
途中での除隊は一切認められず、脱走した者は捕らえられた後、死ぬまで施設の管理の下で労務使役させられる。
任務上であろうとなかろうと、死ぬ以外にそこから逃れる方法はない。
だが、ほとんどの隊員はそれを受け入れている。
孤児として明日をも知れぬ貧しく報われない状況下で日々生き長らえるよりも、たとえ短くとも人並みの満ち足りた
生活が送りたいと思ったからだ。
こうして、格闘や剣術、暗殺術を徹底的に叩き込まれた隊員達は、公爵の命を受けた隊長の指示でのみ動く。
現在の人員は、十代後半から二十代前半の第二世代が中心で、第一世代は半数以上が既に任務中に死亡している。
その下には第三世代、第四世代の者達が控えているが、実動部隊が隊長のラファール以下全員が死亡してしまった今、
未だ訓練の途上にある彼等が今後任務を遂行出来るかは不透明だ。
話を聞いたベルエールは、彼等の人生の虚しさに同情する気持ちが芽生えた。
たった一人の人間の命令で命を捨てねばならないのは、軍人などと共通する部分はあるものの、私生活面でさえ全く
自由が与えられないばかりか、正否の判断力もまだ養われていない子供のうちから一つの価値観だけを植え付けられ、
人生の全てをそのためだけに費やすというのは、たとえ食べ物に困らないからだとしても、果たしてそれで幸福だと
言えるのか。
選択肢のない使い捨ての人生に意味などあるのだろうか。
「なるほどな・・・。
孤児を暗殺者に仕立て上げるか、皮肉だな」
アリーゼは、低く落ち着いた声で彼に反論した。
「お前達には分かるまい。
毎日毎日、その日一日をどうやって生き延びるか考え続けねばならない孤児の生活がどういうものなのかを知らぬ
お前達にはな。
文字通りの生存競争だ。
食べ物を得られなかった友人が、翌朝自分の横で冷たくなっている。
そんなのは日常だ。
毎日そんな光景を目にしていると、悲しいだの寂しいだのという感情すら無意味になる。
明日は我が身なのさ。
生き残れるのはほんの一握りだと知っていれば、他人に感情移入する余裕など、いつの間にかどこかへ消え去って
しまうものだ。
そんな孤児の生活から解放されるなら、人を殺める事に何を躊躇うか」
「教会か修道院で暮らしてたんじゃねぇのか」
「拾い物の子供に満足に食わせてやれる教会や修道院が幾つあると思っている。
自力で食料を調達出来ない者は、どこにいてもその先はない」
「だが、隊長がいねぇんじゃ、もう訓練は出来ねぇだろ。
部隊は壊滅状態だ」
「生き残って一線を退いた第一世代の者が数名いる。
彼等が教育と訓練や生活面の管理をしているので、その中から次の隊長が選ばれるだろう」
「てめぇはどうする、戻る気か」
「もちろんだ」
「戻ってどうする。
どうせ、失敗の責任を命で償わされんのが関の山だ。
唯一の生存者だからな」
「だからどうだと言う。
私は、自分の命を惜しいと思った事など一度もない。
責任を取るのも私の務めだ」
全ての仲間を失い、作戦が失敗に終わっても、感情を押し殺して涙すら見せない、このアリーゼという女はそんなに
冷酷なのかと思うかも知れないが、それはルーエイの瞳術の効果で感情の起伏が抑え込まれているからで、その目は
明らかに動揺し狼狽えながらも強烈な怒りを湛えている。
ルーエイは、そんな彼女の心理が分かっていた。
「なんなら、あんたに仲間の敵討ちをさせてやってもいいぜ」
「そ、そんな事が出来るのか」
「今は情報待ちだけどな。
その魔術師って奴の居場所さえ分かれば、後は簡単だ」
「てめぇ、勝手に交渉してんじゃねぇよ」
「いいんじゃねえの、面白そうだし」
「まずはアンサンに知らせてからだ、余計な事やって俺のせいにされちゃ敵わん。
タミヤが起きたら連絡させる、それまでこの話はお預けだ」
ルーエイの提案をベルエールが拒絶すると、アリーゼが頼み事をした。
「ならば、私にも主に連絡をさせてくれ」
「そいつは無理な注文だ」
「状況報告だけなら構わんだろう」
「てめぇは客じゃねぇんだよ、こっちの身が危うくなるような事はさせねぇ。
それに、てめぇ等の中にも連絡用に何人かは潜入せずに観察していた奴がいたはずだ。
報告ならそいつ等がしている」
「しかし、それでは・・・」
「てめぇも死んだって報告されんだよ、もう帰る所はねぇと知れ」
「・・・・」
アリーゼには返す言葉がない。
ベルエールの推測は全てにおいて正しかった。
今回の任務には領兵の情報部員が連絡用に同行していたし、エイドロンにとって作戦というのは成功するか死ぬかの
どちらかしかない。
隊員の命など、使い捨ての道具の一つに過ぎないのだから。
会話が途絶えて沈黙が広がる中、ルーエイがつけ加えた。
「アンサンに連絡するんなら、ついでにエーグレが使ってた盗賊も全滅したって伝えてくれよ」
「なに、そうなのか?
これまで幾つもの貴族の暗殺に関わってたっていう盗賊の事か」
「ああそうだ」
「本当に全滅したんだな」
「ボロ雑巾みたいになって泥水ん中で死んでるのを見届けた。
あれも悪魔の仕業だ」
「悪魔だと?
ここで暗殺部隊を壊滅させたのと同じ奴か」
「だろうな」
「どういう事だ、エーグレファン伯爵は盗賊と魔術師の両方を使ってたはずだな。
自治軍を動かすために盗賊退治と銘打ったのはフェイクだったんじゃねぇのか」
「賞味期限が切れたんだろ」
悪魔を使役する魔術師・ヴィスラール・トルスガランはどこにいるのか。
アルファンがその居場所を捜索しているはずなのだが・・・。
続




