第3話 不法投棄と少年
そのゴミ屋敷。いや、もうゴミ屋敷じゃないんだけど、以前は汚かったんだ。そこに住んでいた老人だけじゃなくて、いろんな人がゴミを持って来ては捨てていた。僕は知っていた。僕の部屋からその家が見えるから。
今日は近所の後藤おじさんがコンビニ袋に入ったビールの空き缶を5~6本くらい塀の中に捨てようとしてた。その瞬間、おじさんの目の前に竜一君が現れたんだ。本当に瞬間的に。
「ねえ、何してたの。それ、ウチに捨てようとしてたでしょ」
「ここは空き家だ。捨てたって文句言う奴なんかいねえんだよ」
「前はお爺さんが住んでいたし。今は私が住んでいるんだ。空き家じゃないよ」
「ああん。あのジジイは不法侵入して居座ってたんだよ。ジジイがいてもいなくてもここは空き家なんだ。お前も不法侵入だな」
「ふーん。変な屁理屈だね。でもゴミの不法投棄には刑事罰が科せられるんだよ。空き家に捨てるのも同じさ」
「ガキの知ったこっちゃねえんだよ」
そう言って後藤のおじさんはコンビニ袋に入った空き缶を放り投げたんだ。その瞬間、おじさんは苦しみだした。
「うがああああ。お前何をした。くくくるしいいいい」
「私が忠告したのにゴミを捨てるからだ」
竜一君はそこに立っているだけだったんだけど、僕は見てしまった。
街灯に照らされてできた巨大な影が後藤のおじさんをかじっていたんだ。
僕は窓を閉め鍵をかけてカーテンを閉めた。
部屋の電気は点けたまま、布団をかぶって震えていた。
朝までずっと震えていたんだと思う。