第1章 『極魔導師は子爵家三女になっちゃった!』
『極魔導師のデウス』改め『新米ハンターのルシェ』、活動開始!!
窓から入り込んだ風が頬を撫でる………。
「う……うぅん………。」
瞼を開け、ベッドから起き上がる。
「………転生には成功したようだな。」
俺は見知らぬ部屋の中にいた。
「え~っと…………ここはどこだ?」
転生魔法は即席だったからか、現在の状況の記憶が曖昧だ。
………俺はどういう素性の人物に転生したのだろうか。
「…………?」
部屋を見ていると、『ある物』が多いことに気づく。
「……なんか、ぬいぐるみが多いな………。」
よく見ると部屋のイメージ自体が『可愛いタイプ』だ。
「……………!……まさか………っ!!」
立ち上がり、部屋にあった姿見の前に向かう。
そこに映ったのは……………明らかに成人前の13歳前後の少女だ。
肩甲骨の辺りまで伸びた銀髪。エメラルドを連想する程透き通った碧眼。
雪の様に白い肌。僅かに赤みを帯びた頬。
そして、あまりにも前世とかけ離れた小さすぎる身長。
「………………嘘だろ?」
ゆっくりだが、この身体の記憶が戻ってきた。
現在の俺は『ルシェ・グランディア』という女の子。
ここ『アルクス王国』の『グランディア子爵家』の三女。
…………それが転生後の俺の素性だった。
「はぁ………冗談抜きで予想外だ…………。」
しばらく頭を抱えた後、仕方なくクローゼットから一番着やすそうな服を出した。
「とりあえず家族とはこれまでの記憶通りに接するか………。」
着替えを終え、部屋を出る。
廊下は赤い絨毯と絵画で飾られている。
「さすが子爵家。広いな。」
記憶を頼りに食堂に向かう。
ドアを開け、食堂に入ると父親の『ゼクス』がいた。
「ん?……ルシェ、今日は早いな?どうしたのだ?」
「何でも無いよ、お父様。」
「そうか、そろそろ食事を作らせるか……。」
ゼクスがシェフに合図を送るとシェフは隣の厨房に入っていった。
「………ところでお父様。私、相談があるんだけど……。」
「ん?」
「お兄様たちって、剣術とか魔法教えてもらってるよね。」
「あぁ、そうだな。」
「私にも教えてくれないかな………?」
ゼクスが目を見開く。
「………ルシェ、聡明なお前が何故そのようなことを?」
「私、お父様にも言ってなかったことがあるの。」
「それは…………何だ?」
「私…………ハンターになりたいの。」
「な…………っ!?」
記憶が正しければ、ルシェ(俺になる前)は両親が元ハンターと知っていたはず。
「私、お父様がハンターから子爵になったって知って………それで…………!」
「………書庫の日記を見つけたんだな?」
以前、ルシェ(俺になる前)は家の書庫で父のハンター時代の日記を見ている。
これがキッカケということにしよう。
「うん。」
「ならばハンターが如何に危険かも知っているはず。」
そうか、そうだな………ここはあの日記の記憶をフルに活かすか。
「………でもお父様の日記には楽しい思い出が書かれてた。」
「……………。」
「私はお父様の見た物を見てみたい。」
そして、父はこの手の攻めに弱い。
「……………………分かった。」
良し来た!!
「……ただし、父さんに剣術で一太刀入れれる様になったらだ。」
「うん!」
「まぁ、お前は姉たちより好奇心が強かったからな……。」
「訓練はいつから……?」
「今日の昼でもアレックスたちを交えてやるか!」
よし、この調子でこの時代の剣術レベルを父たちから学ぶか………。
もしかすると俺の時代より進んでいるかもしれないし……。
こうして、将来の家離れとハンター就職の言質を取った………。




