北の地にアンデッドが降る編9
「あったな」
そこには洞窟があり、見張りにハイオークが二体、もう何かあるのは言うまでもない。
「勇者様ハイオークです」…………。
「勇者と言うのを止めろ、私はそんなんじゃない」
「そんな、貴女は俺の勇者様なんです」知らんよ。
「知らん、私はリーフムーンだ」フロラが魔王と呼ばれるのを嫌うのがわかった。
「はい、リーフムーン様」様もいらないんだがまあ時間も無い。
「グラースは隠れていろ、私は中に入る」
「俺も」
「ハイオークに勝てるのか?魔力もまだ回復してないだろう?」
「俺も役に…」
「私一人ならここを見つけられたかわからん、お前には感謝している」
「え、はい」
「次のお前の仕事は死なない事だ、カピンに死体を届けたくは無い」
「でもリーフムーン様が死んだら俺…」ふむ……ばらしてもかまわんか。
「私はもう死んだ人間だプルミエでな、暫く待ってろ」
返事を聞かずに私は洞窟の上方に移動した、できれば静かに見張りを始末したい、ハイオーク相手だと借りたままのフロラの武器で一匹、二匹目を始末する前に騒がれるかもしれない、ふむ、力を貸して貰うか。
私はアンデッドジャイアントスパイダーを呼び出す、名前が長い忘れ無かったら短い名前を考えよう、仮に骸蜘蛛としておこう。
骸蜘蛛は闇の中音も無く降り立った、ふむ、隠密性が羨ましいな。
「音を立てずに一匹頼む」ふむ、なんとなく了解と雰囲気が伝わってくる。
特にタイミングを合わせるも無く、私は左のハイオークの頭にフロラの武器を降り下ろし腹まで縦に切り裂いた。
右を確認すると骸蜘蛛の前足が延髄から貫通し口から生えていた。
刺した音も気が付かなかった、ふむ、私も精進しよう。
私は手で合図して骸蜘蛛と中へ入る、入ってまもなく女性の啜り泣きや呻き声、甲高い悲鳴も混じって、音だけで中の凄惨な様子が理解できる。
「いやあ、助けて……」
震える声で助けを求め足を引き摺りながら女性が逃げて来た、後ろからノロノロとオークが三匹ほど追いかけ遊んでいる、女性の足は折れている様子で腫れて黒に変色していた。
「あ、……た、逃げてー」
そんな状態なのに彼女は私に逃げろと言う、北の人間は女に達まで勇ましい。
「もう大丈夫だ、任せろ」
私はオークの下に直接魔力の槍を出現させ貫く、汚い悲鳴を上げながら数本の槍に貫かれ宙に磔にされる。
「オークを皆殺しにしろ」
数本追加して始末した私はアンデッドドッグを召喚、そのアンデッドドッグに、これも名前がいるな、骸犬と仮にしておくか、命令する、骸蜘蛛と骸犬を奥にいるであろうオーク達に向けて放った。
「ふむ、治療しよう、無事で良かった」
「あ、あじがどっ…あ、」
「落ち着け、責任を持って助ける、ああ、服もある着替えたらいい」
「あ、なか、中にまだ……」「ああ、何人いるかわかるか?」
「わ、わがんない、いっぱいいて、けがしてて、死んでる人もいて…」
「一人で置いて行くのもなんだが……ん、グラース、ついて来たのか?」
「す、すいませんリーフムーン様」
「もういい、彼女を守れ、外から来たら中に来い、私は殲滅している」
「はい、わかりました」
「あと、水があるから少量づつ飲ましてやれ」と、一応用意しておいた皮袋入りの水を渡す。
二人を置いて奥へ向かう、喰い散らされたオークの死骸を適当に蹴り飛ばし進む、広間に着いた、篝火に照されるオークの死骸と怯える女達、戦場で見た檻車がそのまま何台もあり、中にも女達が怯えた目や、絶望した目で私をいや、オークを喰い漁る骸犬やハイオーク刺し殺して糸でぶら下げている骸蜘蛛をみている。
「助けに来た、これで全員か?」
「あ、あぁぁぁぁぁ」
「助かった、助かった」
「生きてるの私?」
自分の無事に安心したのか、喜びの悲鳴や咽び泣きばかりで答えは返って来ない、仕方ないから近場の女性から歩けるように治療していく、治療されるのが初めてなのか皆驚くも感謝してくれる。
粗方治療が終わったところでもう一度尋ねる。
「これで全員か?」
「あ、あの……」
「ふむ、残りがいるのか?」
二十過ぎだろう女性が反応したので話しを聞く。
「こ、子供も拐われて、私の子も…」
「ふむ、探そう」
私は骸犬の大半を残し残りを走らせた、私は骸蜘蛛を連れ走る、すぐに私は見つけた、そしてフロラがオークを嫌い豚と罵り皆殺しにするのかがわかった。
子供が何人も逆さまに吊るされそれにはもう頭が無かった、豚の癖に血抜きをしているらしい、それをやったであろう豚がなにやら騒がしい、早く殺して……、いや、集まって欲しいからもっと騒がしい方がいいな。
魔力の槍で手足を貫いて洞窟の天井に磔にする、五月蝿いが我慢しよう、それに生存している子供がいるかもしれない、私はその胸糞の悪い加工場を探す。
「いゃぁ」
「静かに、大丈夫だから」
何処からか男女の声が聞こえた。




