閑話 留守番の男2
「さて……」
俺はどうしたもんかとソレを見下ろす、人間より二回りは大きな体躯、全身に丈夫な鱗と皮、俺なんか一撃で殺せる筋力、散々にここプルミエ砦を、いや、今はルルイエ砦か、とりあえずここを蹂躙した化け物リザードマン。
そのリザードマンは糸で巻かれ転がされている、フルフロラさんが連れてきた蜘蛛達が目の前に引き摺って来た。
ちなみにその蜘蛛達は俺によじ登り背中からそのリザードマンの様子を見ている、正直新しい土の鎧を着ていなかったら走って逃げ出したい、なんとなくだが鎧から私が守るという決意を感じて踏み留まっている感じだ。
リザードマンは捌いた事がある、散々に、ただ、今回のソレは………
「ウヒィ」
リザードマンが糸を引き千切らんともがく、うん、生きたリザードマンをコイツらは連れ来やがった、言葉は通じないが解る、解体しろというのだろう。
フルフロラさんに貰った包丁は異様に切れるし、手入れの必要を感じさせないほど高品質だ、後に聞いたがリザードマンくらい簡単に首が落とせるらしい。
「……はぁ、やりやすか」
背中の蜘蛛達が忙しなくなってきたので意を決する、かじられたらたまらない。
「………」
なんとなく教会のお祈りでもしたくなった、まあ、まともに通った覚えも無いから気持ちだけだ、一息に首を落とす、俺にそんな力は無かったはずだが、なんとなく腕の締め付けの強さから察しがついた。
貴重な皮を剥ぐ、フルフロラさんが言ってたが生きたまま剥ぐ方が良いらしい、無理だからやらないが、そういえば血抜きを忘れたがまあコイツらが食うんだから大丈夫かと解体を終わらせた。
うん、骨も残らなかった、俺は思う、コイツら下のダンジョンに侵入した人間持ってくんじゃないか………
せめて生きたままであれば代わりの餌を用意して見逃せるが死体を捌けと持ってきたらどうしようか、一抹の不安が残る中日が暮れる、ああ俺の飯作らないと。
さて、問題はと思う、ランクス国は遠いがフルフロラさん達なら数日で帰って来そうだ、つまり床に入り、当然の様に添い寝をする鎧、今は全裸の隊長ゴーレム、当然土色で作り物の様な造形で硬い、硬い。
本物は一度此を破壊せんと頭を破壊した、コイツは普通に形が変わった程度であったみたいだが、それを知ったら嬢ちゃんに完全に消滅させられるだろう、普段は鎧だが万が一コレを見られたら……
添い寝だ、ただの添い寝だから、ほら、初日はほら、なんだ、硬いだけだったから、可愛いかったからほら、一晩経ってただけだから、その……何も無い、うん。
まあ、見られてたら俺の頭も粉砕されただろうな、しかしなんとか見付からない方法は、せめて見た目を…
「なあ、隊長以外にならない、」
嫌そうに頭を振る、ちょっと強要出来ない。
「まあ、隊長に見付からないようにしてくだせいよ」
もういいか、蜘蛛とゴーレムとアンデッドに囲まれた生活で俺は思ったより受け入れる性格だったんだなと自覚した。
翌日、蜘蛛達がリザードマンをまた引っ張って来た、ここのダンジョンに住み着いたのか?
問題はリシェスの姉ちゃんが一緒に転がされ、凄まじい暴れっぷりだった、連れのデカイゾンビ犬は蜘蛛達を威嚇している、随分なついたもんだ、面倒見が良いんだろう、とりあえず解放して昨日剥いだリザードマンの皮を安く売ってやったら大人しくなった、
蜘蛛達は別に反応が無かったからついでに網に掛かった感じだったのだろう、なんで俺は蜘蛛達まで理解してるんだ?
締め付ける鎧に問い掛けたい気持ちになりながらリザードマンの首を落とした。
リシェスの姉ちゃんに血が降り注いだのは余談だな。




