アンデッドは空から訪れる編16
私達の案内された場所は、詰所に併設されていた牢屋だった。
「ここはタマさんが捕まってた場所ですね」
「……先輩も捕まってた」
「ぐぬぅ」
「そういえば私はここにも用が有ったな」
「リーフムーン様の御用事ですか?」
「ああ、フロラを捕まえた奴にお仕置きをな」
「……許して欲しいリーン様、彼ら仕事しただけ、お仕置きなら私が受ける」
「仕方ないな」
私は懇願され毒気を抜かれた、わざわざ必要無い事をして時間を無駄にするわけにはいかないと、牢屋に向かう。
「……リーン様違う、裏に回る」
皆で移動しようとしているとルルが足を止めている、なにやら探りを入れているのだろう。
「ルルどうした?」
「地下に気配がする、捕まえるかリーン」
「とりあえず逃げ道だけ潰してあとから考えよう」
「わかった」
ルルと二人皆との遅れを取り戻し裏に回る、どうやら裏から入る二階の隠し部屋が本部に当たるらしい。
「ここですか」
フロラの言葉に二階を見上げる、梯子でも無いと登ると発想出来ない程壁でしかない、話しによると合言葉で上から縄ばしごが投げられるらしい。
「上か、先に行く、お前も来い」
「……リーン様、なぅ」
私は黒い獣人をヒョイと担ぎ階段でも登る様に二階を無視して屋上に降り立つ。
「安全そうかな他も連れて来る」
「……リーン様もう一回飛びたい」
「帰りに嫌というほど飛ぶさ」
「……え?」 と呆然としている獣人を後目にアンデッドメンバーを屋上に運ぶと、メンバーで最後に運んだサビ模様の獣人が言う。
「リーフムーン様そこに縄ばしごがございますが」
「む」
「投げておきますね」
フロラがヒョイと落とす、しばしして残りの獣人が登ってくる。
「フルフロラは連れもやり手だね、そこのお嬢ちゃんも凄そうだ」
「わかるのか?」
「冗談だよ、そんな小さい子に期待しちゃいないよ」私より強いんだがな…
「それで屋上を破ればいいのか?」
「おい、フルフロラ物騒な連れをなんとかしてくれよ」うぐ…
「リーンさんやり過ぎたらダメですよ」おいフロラやらなくて良かったとか考えてるじゃないか。
「フルフロラここから降りるよ」
簡単に隠された出入り口を降り、部屋に入る、中には一人白黒の斑模様の獣人が待ち構えていた。
結論から言おう、私としてはフロラの活躍を胸の内に仕舞いたい、魔法を使う、私は今までの常識で火を放つ、氷を放つ、風を放つ、そういう物が魔法であると思っていた、フロラに言わせればそんな常識は小石を投擲するのと変わらなかった。
決定的な一つの脅しを込めた魔法が恐怖を煽り、今回の関係者に手を出さないと決定させた。
私やルル、獣人二人は何をされたか理解出来なかった、ただ私ら五人以外がもがき苦しんだ、フロラが術を止め朦朧とする獣人達を一先ず置いておきフロラに尋ねた。
「なあフロラ、何をしたんだ?」
「空気を無くしました」は?
「つまり陸で溺れたと?」
「そんな感じですね、溺れるより酷い事になりますけど」
「死んでないか……」
「一瞬しかしてませんからまず大丈夫ですたぶん」
「おお、動きだしたな」
「……リーン様」
「どうして私達は平気なんでしょう?」
「たぶん空気を必要としないんだろうな、今度水中で活動できるか試してみよう」
「別に水を退けるなり消したら良いじゃないですか」
「……先輩規格外」
「ぐぬぅ」
「それ気に入ったのか」
「なかなかです」そうか。
「さて、お話ですが私はこれをこの国の範囲に拡げて半日くらい持続できますよ」
「おい、グ、フルフロラ、ぁ、陛下まで、巻き込む…んかい」
「んーそうなりますかね」本気みたいだ。
「なあリーン、オレはおかしいみたいなんだ」
「どうしたルル」
「別にミチュアのねーちゃんが死んでもいいんじゃないかって思う」
「……リーン様実は私も」
「私もです、どうしてでしょう、今まであんなに頑張ってましたのに」
「まあ、私も罪悪感は無いよ、どうやら倫理観が変わったみたいだな」
「化け物どもが、降参する、国へ手出ししないで欲しい、要求は飲む」
「ふむぅ、では無暗な処刑は禁止して、この組織を健全な物にして下さい、そしてタマさんに私の変わりに謝って下さい」
一つフロラの個人的な要求があった気がするが、上手くまとめたんだろうか、お相手は全面降伏なんとかなりそうだ。
ミチュアの酔いが覚めて、なぜか私が八つ当たりの対象になった、どうしてフロラを押さえなかったと言われても私がなんとか出来る訳がない。
今回アンデッドになった二人以外はミチュアの配下となった、フロラにはついて行けないとだいぶ嫌われた様だ、仕方ない、獣人二人は悲しそうだったが仕方ない、仕方ないとしか言えないな、私は自業自得が強いが二人は被害者になる、アンデッド化も本人の意識では無かったらしい、そんな二人が上手く生活できる様にしたいもんだ。
「フルフロラ、リーフムーン、近々模擬戦しましょう、どうやら軍が欲求不満で戦争思考らしいの、いいかしら」
「別にいいですよ」
「準備が出来たら使いを送るから待っててね」
「わかりました」なにやら面倒な頼みをフロラは受けていた。
こうして半ば無理矢理にランクス国をミチュアに返す事が出来た。
帰り道、リュシオルをスケルトンバードに括り付ける、背中に獣人二人、フロラはルルと、キャッセとマルシェはミチュアに捕まって逃げられなかった様だ、私はスケルトンバードに縄を掛け、足に魔力を纏いスケルトンバードに引っ張って貰い空へ昇る、騒ぐ三人を見ながらルルイエ砦に帰った。
しまった、土産を忘れたな。




