アンデッドは空から訪れる編14
「あ、リーンさん」
いつもと変わらないフロラが血塗れの部屋にいた、数人の獣人がフロラに向かい跪き頭を下げている、そのフロラは床に座り込み獣人を二人小柄な獣人と真っ黒な獣人を同時に膝枕して頭に手を当てている。
獣人二人は見るも無惨なほど危害を加えられていて、手足首が切断されていた、呼吸も無く控え目に見て死んでいた。
「なあフロラ、アンデッドにしているのか?」
「そうですよ」
私らのやり取りにミチュアは息を飲む、同族が禁忌なる物に変わるのだから仕方無いか。
そこに、返り血に赤く染まるスケルトンが獣人の切断された手足を持ってくる、静かに切断面に合わせられたそれは速やかに同化して血の跡がなけれは見分けがつかなくなる。
ふむ、アンデッドは再生はされないのか、あれは同化なのか?以前フロラが私と同時期に変化させたアンデッドは部位が欠損していたが……
ふむ、わからん、しかしアンデッドになってからこのような惨状を見ても思うところが無いのは幸いというか、ミチュア達は青ざめているし、リュシオルは吐きに行ったのか姿が見えない、レジニアもか。
「フロラ嫌な役をやらせてすまない」
「へ?別になんでも無いですよ」「そうか、それと彼女らは誰だろうか?フロラに従っているみたいなんだが」
「名無しさんです、なんかタマさんが捕まったから処刑されるそうなんで私が引き取るつもりですね」
「解った、ミチュア、問題無いか?」
「え、ええフルフロラ、リーフムーン、それより処刑ってどういう事」
ビクビクした様子でミチュアが血塗れの部屋に入ってくる、それを見た、というよりはミチュアの尻尾を見た名無しが目を見開く。
「ミチュア陛下尾が…」
「フルフロラに治癒して貰いました、貴女方は何者ですか?」
「ミチュア陛下の知る必要の無い存在です」
「ずいぶん失礼ね」
「なにぶん先の無い存在故に」
「ふん、諜報部ね」
「ご存知でしたか」
「噂くらいね、で諜報部がフルフロラに何をさせてたの?」
「強行犯の処分をお願いしました、私どもの実力では確実性に欠けるもので御しやすいフルフロラ様に」
「私の悪口が聞こえるんですが」
「ずいぶんと私の恩人に無礼ね」
「形振り構っていられない立場でしたので」
「貴女がトップなの?」
「滅相もありません」
「じゃあトップの所へ行きましょう、話にならないわ」
「お断りします」
ミチュアは血塗れの部屋で顔を青ざめさせたままに情報を集めていた、もう終わったというのによくやるもんだ。
フロラはアンデッド化が終わった様で、起き上がり動揺している獣人二人に抱き付いている、あれの安心感を思い出すな、最近の事だが懐かしく思う。
さて、そのアンデッドになった二人には首に銀のライン状の体毛が生えた、首輪の様に見える、私やルルと同じだがどうなるやら。
「よろしくお願いしますね、えーとお名前はリーンさんが付けて下さい」
「名前くらいあるだろ?」
「なんか名前無いそうなんですよね、だからリーンさんがこの二人の名前を付けて下さい」
「そんな直ぐには付けられないよ、まあ、二人ともよろしくな」
「よろしくお願いしますリーン様フルフロラ様」
「………よろしくリーン様フルフロラ様」
黒毛に銀の首輪の獣人は口数が少なそうで、小柄で多色の体毛の獣人は丁寧に接してくる、いきなりリーンと呼ばれたがそういえば名乗った覚えは無かった。
「私はリーフムーンと言う、後ろはルルだ」
「よろしくな」
「失礼しましたリーフムーン様、ルル様よろしくお願いします」
「………リーン様よろしく、ルルもよろしく」
ふむ、黒毛の方はなにやらマイペースだな、思ったより動揺も少なそうか、まあこんな酷い目にあってアンデッド化してこの落ち着きは異常か?
ミチュアと名無しの不毛なやり取りを聞きながらふと思い小声で聞いてみる。
「なあ、二人はミチュアの行きたい場所がわかるか?」わかるに決まってるだろうがな。
「はい」
「………もちろん」
「教えて貰えるか?」
「はい、ただ」
「……陛下にナイショなら」
「直ぐには無理か、フロラどうする?」
二人を抱きしめたまま毛並みをグリグリと全身で堪能しているフロラに聞いてみる。
「そうですねぇ、早くしないと残りの名無しさん達が危ないらしいですし、急いだ方が無難ですかね」
「なんで危ないんだ?処刑とか物騒な事を言っていたが」
「なんでもタマさんが危ない目にあったかららしいですね、使えないから処分するつもりなんでしょう」処分か…
「気に入らないな」
「おう」
「もちろん気に入らないですよ」
「ミチュアには悪いが本気を出したくなったな」
「オレもやるぞ」
「………リーン様は私達なんか関係無い気にしないで」何を言う。
「なぜだ?もう関係あるだろ」
「ですね」
「おう」
「………なんで?あったばかりなのに」
「しらん」
「いやリーンそんな言い方…」
「まずはミチュアを王座に戻す、レジニアを弟として認知させる」
「その隙にだな」
「………変な人達」
「素敵な方々ですね」
ぽつりと獣人二人は呟いた。




