大改築プルミエ砦編10
どうしたんだこれは…
帰ってきたら山の上に砦がそびえていた、山では無いが、砦の位置が標高で示せそうなほど上がっている。
砦内の広い場所に着陸する、荷物を降ろしているとフロラとルルがきた。
「リーンさんお帰りなさい」
「リーンお帰り」
なんとなく探る様な気配を感じるが、まあ、「ただいま」と返し、二人に答える。
「リーンさん…怒りません?」フロラがなんだかビクビクしている、別に怒りはしないが、まあ、ルルに一言「疲れて無いか?」と聞く。
「全然平気だぞ」
「そうか、無理するなよ」
「リーンさん、中を案内します」別に明日でよくないか?
「明日にしないか?フロラもミチュアも今日帰ってきたばかりだし」
「大丈夫ですよ、タマさんは横になってますが」寝てるわけではないか?
「先に砦の中を見てくる」大丈夫だろうが、これだけの変化があったなら中はどうなっているやら。
中に入ると、グルダンが地べたに転がるミチュアを見て困っていた。
「今戻った、ミチュアはどうしたんだ?」
「隊長、どうやらフルフロラさんがマタタビの実を買ってたらしくて」
「毒なのか?」
「いや、そんなことないんですがね、猫が食べると酔っぱらうんでさあ」
地べたに身体を擦り付けてかなり汚れている、また明日落ち着いたら風呂かな、などと思いながらミチュアをベッドに運ぼうと揺り起こす。
「ミチュア、せめて部屋で寝てくれ」
ユサユサと猫の様に丸まっているミチュアの肩を揺するとパチリとミチュアの目が開いた。
「ミチュア、部屋で寝てくれ、な」
「リーフムーン…」なんだか視線が熱い気がする。
「ミチュア、動けるか?水でも飲むか?」ぼやっとした顔でミチュアは見てくる。
「リーフムーン…」肩を貸そうとミチュアを座らせ、軽く汚れを払いながら撫でる、「気持ちいい」ミチュアはゴロゴロと喉を鳴らして目を細める。
「私もリーフムーンをキレイにする」言うやいなやミチュアは私の首に手を回し、耳裏の髪の生え際をジャリジャリと舐めだした。
「ミチュア、私はいいよ」
「ダメー、キレイにするの」放してくれない。
酔っぱらったミチュアにされるがままにしていると、フロラとルルが見にきた。
「リーンさんなにして…」
「酔っぱらいに捕まってな、やはり今日は止めようミチュアを寝かせてくる」
二人は私におぶさり、頭をジャリジャリと舐め回しているミチュアを見て固まっていたが、どうしようもないので、そのまま部屋に行く。
流石に一人にはできそうも無いな、四人部屋に連れていき、ベッドの一つに腰掛ける、ルルはついてきたが、フロラはまだ放心しているのだろうか?
「大丈夫なのか?」
「酔ってるらしいから休ませる」ジャリジャリと頭は舐め回されたままだ。
「ほらミチュア、ベッドについたぞ、ゆっくり休め、疲れただろう」無理とは思ったが声をかける。
「はーい」上機嫌にゴロゴロと喉を鳴らしながら解放してくれた。
まったく、可愛らしい女王陛下だ、薄汚れた純白の毛皮を撫でながらゴロゴロと喉を鳴らすミチュアをみて思った。
「ルルも休め、かなり働いただろう」
「オレはフロラに甘いの貰ったから大丈夫だ」
「眠れ無いが目を瞑るだけでも変わるさ、見張りも今日は大丈夫だろ」山頂に砦が移動したわけだしな。
「わかった」と、ベッドに上がり込み私の膝を枕にして目を瞑った。
「なあリーン」
「なんだ?」目を瞑ったままルルが聞いてくる。
「フロラを怒らないでくれよ、やったのはオレだから」私はルルの頭を撫でる。
「私は悪いとは思ってないさ、私が思ってたのは…なんだろうな、忘れた」
「なんだよそれ」
「まあ、最初の要塞は万の敵を呼びそうだったからな、ルルの姉さんのいる村も危険かもしれん」
「じゃあみんなここに呼んだら?」
「ここは平原だ、何かあったときとれる手段が少ない、囲まれたら餓死するまで閉じ込められる」
「そうか」
「ルルには今度村の避難場所と秘密の抜け道を作って欲しいな」
「任しとけ」
「フロラは入ってこないのか?」入り口にフロラがいた。
此方フルフロラ、あれ?私なんか入りにくいんですが、リーンさんには見つかっちゃいましたね、まあ、誰も怒られないならいいです。
私も膝枕して貰いましょう。
フロラがトコトコやってくる、コロンとルルと反対の膝を枕にする、心苦しいが、まあ言うしかないか。
「なあ、フロラ」
「なんですリーンさん」
「あんな状態のミチュアを放置するのはどうかと思うんだが、知らなかったかもしれないが、猫が酔う木の実を食べたんだ、せめて部屋に運ぶとかなかったか?」
「いえ、幸せそうでしたから」
「そうか…風邪を患うといけないから次は気をつけてくれ」
「はい」
「リーンは怒れないんだな」かもな。
「ところでフロラ、ミチュアの国はどうするんだ?」
「国盗りしようかと」?
「戦争でも仕掛けるのか?」
「場合によってはですね、リーンさんにも協力してもらおうかと呼びにきたんです」
「たぶんミチュアの姉ちゃんはそこまで思ってないだろうな」ルルがボソリと呟く。
「まあ、ミチュアとも相談して決めよう、フロラは国が欲しいんじゃ無いだろ?」
「興味無いですね、取ったらタマさんに返します」
「ならミチュアに決めてもらおう」
「そうですね」フロラはそう言いながら、乗り込む計画やら、ランクス国にいる三人を助ける方法を考えていた。
眠らない三人はそれから黙って夜を過ごした、後ろからゴロゴロと喉の鳴るのが聞こえていた。




