大改築プルミエ砦編8
「では送ろう」私は荷物とリシェスを括り付け、飛び立つ、全長三メートルほどのスケルトンバードはフワリと舞い上がりかなりの高度をとる、空は赤みが射し、日暮れも近そうだ。
「オイ、リーフムーン、クソ女、聞いてんのか降ろせ、降ろせ、降ろせ、危ない、高い、あぁぁぁぁぁ」リシェスは元気よくデカイ声をあげる、まあこの高さなら下までは聞こえないだろう。
フロラが飛んで帰ってきた時羨ましいとは思っていたが、機会があるとはな。
「普通送るなら馬車とかだろうがぁぁぁ」無いものは仕方ないだろう、しかしスケルトンバードがどうやって骨で飛ぶのかと思っていたが、魔力で飛行に不足している物を補っているのか、風が私達に当たらない様に膜状に包んでいる、風圧で振り落とさない様に配慮してくれているのか。
騒ぐリシェスを無視して私は聞いていた町の近くに降り立つ、荷物を一つ持ってやり、機嫌が悪そうな彼女に続き、予定の家についた。
コンコンとリシェスはノックをする、「リシェスか?」「そうよ」お互い一言のあと、ガチャリとドアが開く、合言葉かと思ったが違うようだ。
「やあ、リシェスよく無事だったね」嬉しそうな父にリシェスは満面の笑みをうかべた。
「こんの、クソ親父がぁぁぁぁぁ」渾身の右ストレートがリシェスから放たれる、おや?
「ぎゃぁぁぁぁぁ」と大袈裟に三回転はしながら吹き飛ぶリシェスの父、何かで防いだな、とんだ食わせもんだ。
「ハァハァ…」肩で息をするリシェスに私は耳打ちをする。
「リシェス、殴ったときに違和感は無かったか?」
「いつもどおりだけど?」いつも殴ってるのか。
「あいつ、魔力か何かで防いだぞ」
「知ってる、なんか首飾りか何かに守りの守護があるらしいから」なるほど、だから全力で殴れるのか。
「どうしました」シレッと復活しているリシェス父。
「いや、面白い物を見せて貰った」またフロラの異空間で研究させてみよう、私ではできんからな。
「娘を送っていただきありがとうございました」
「買い付けのついでだ、用意はできたか?」大量に運ぶのは大変だろうしな。
「あらかた整っております」
「わかった貰っていく、取りにきたんだから安くしろ」
「もちろんですとも、娘も無事でしたから、これくらいで」酒に嗜好品、菓子類、色々な種、量もあってそこそこの値段だ、チラリと見るとリシェスの顔がヒクついている。
「リシェス、どれくらい盛られてるんだ?」
「倍」
「リシェス裏切ったな」リシェスの父はぐぬぬ、といわん表情で娘を睨む。
「リシェス、私の分も殴っといてくれ」私はトゲメイスを後ろ手に渡す。
「ふふ、娘に殴られたぐらいどうもしませんよ」
「クソ親父が、こんな事して殺されたらどうすんだぁぁぁぁ」フルスイングが脇腹にめり込む、骨が砕ける音が聞こえた、しばらくは立てないだろう。
「割引するなら回復してやるぞ」リシェスは興奮してフーフーと肩で息をしている、私は娘を使った交渉でかなりの値引きができた。
「あとは後日にリシェスが届けてくれ」私は護衛にと一番大きいゾンビドッグを置いていったリシェスなら乗れそうだな、トゲメイスはリシェスにやった、かなりお気に入りになったらしい。
荷物をスケルトンバードに括り、もう一度町に戻るすでに薄暗い、久しぶりの人間社会に来たわけだが、どことなく活気が無い、仕方がないのはわかるがどうしたものか。
「どうすんだよこの犬、何食わせんだ」リシェスの声が聞こえる、別にいらないんだが、飼うのか?
どこか寂しいが平和な町を見て回り、私は帰路についた。
漆黒の空の中私は一人になり思う、初めて人を殺したときを、敵だった、それ以外は知らない、どんな人間か、家族はいるのか、わからない、知らない人間を殺した…それからは機会が無かったのもあるが、殴って終わらせた、どんなクズでも殺す事はないと考えていた。
死ぬのは苦しいし怖いだろう、実際フロラに殺され、苦しく怖い目にあった、機会があった、私は何人も殺したが、自分が死んでいたからか感情は無かった、それからしばらくした頃にルルを死なせた、子供を死なせたんだ…
私は、立っていられなかった、一緒に死んでやりたくなった。
死なせた癖に勝手な奴だ。
気がついたらルルはアンデッドになっていた。
本人が明るい性格で救われた、アンデッドにしてしまい、恨まれ罵られたら私は耐えられるんだろうか。
無理だ、フロラに消えたくなるまでと言われた意味がわかった、改めてフロラの凄さを実感する、耐えられないだろう罵声、耐えられだろう怨嗟、耐えられないだろう視線…
悠久の時を生きてきたフロラに私はどうあればいいだろうか、私は私でいられるのだろうか。
一月も経っていないのにこれだ、この先どうなるだろうか、リーフムーンは雑だなあ…ルルの声を思い出す、雑か…もっと雑な考える様に努力すればいいのだろうか?
わからなければ聞けばいいか…なんとなくそんな気がした、一人は駄目だなと思い、帰路に集中する。
そういえば、スケルトンバードを参考にしたら飛べないだろうか、集中できない奴だな私は、苦笑いが出る、魔力が強化されたなら今まで以上に使えば、何かできそうだと思う、下らない妄想でなんだか明るい気持ちになる、私は自分が思うより単純かもしれない、そんな事を思っていたら、砦?に到着した。




