大改築プルミエ砦編6
どうやらルルは常に物見をしてくれている様だ、ありがたい事だ。
「もう来たのか、何人だ?」
「なんか荷物を背負ってる二人だ」
「行商人か?危険な僻地にご苦労な事だ」大方ここの情報を売りたいんだろう。
「フロラには伝えておいてくれ、私は挨拶に行く」ルルに方角を聞き、私はいつもの様に駆ける。
「お父さんホントに行くの?アンデッドとリザードマンだよ、危ないよ」
「危ないから行くんだ、利益に危険は付き物、人がやらないから儲かるんだ」
一つ言いたい、声がデカイ、大きいで収まらない声量だ、父と娘らしい、私は背後にいるんだが、注意力も無いのだろうか?
「だいたい人外に何を売るのよ」
「リシェスならいくらで売れるだろう」
「そうね、金貨二百枚…なんで売るのよ」
「ハハハ、高級娼婦奴隷並みじゃないか無理、無理」
……娘はリシェスか、明るい茶髪が肩まで伸び、日に焼けた健康そうな顔をしている、父は小柄で娘より一回り大きい程度の体格、白髪混じりの髪は短く整えられている。
「てかお父さんは何を売るつもりなのよ人外に」
「そうだな、香水とかどうかな臭いがありそうだしなハハハ」
「お父さんそんな事聞かれたら殺され…る…」
「どうしたリシェス…」
リシェスが私の顔を見て固まり、父が振り返る、しまったという表情が次第に青くなり、後ずさる。
「お前ら何者だ、帰るならあちらだぞ」香水は少し気になるなと思いながら、帰る様に促す。
「ひ、あ、すいません、娘は差し上げますので私はお助け下さい」見た目からは想像できない素早さでリシェスの後ろに回りガンガンと背中の荷物ごと蹴り出す。
「あ、この、クソ親父、後でぶん殴るからな、クソ、蹴るな」サイドに移動するリシェスの動きにあわせて父がリズムよく蹴る、荷物を背負う不安定さで、リシェスは前のめりに倒れた。
「では失礼します」
「クソ親父がぁぁぁ」
「囲んで逃がすな、威嚇だけにしろ」流石に見ていられないのでゾンビドッグ達に追わせて包囲させる、避けようと試みているが、威嚇され、動けなくなった様だ。
「リシェスだったか、私はリーフムーンと言う」怨嗟の声をあげたまま転がっているリシェスを起こしてやる。
「あのクソ…あ、ありがとうございます」我に返ると、リシェスは諦めの混じった顔で丁寧に喋り出す。
「私をお買い求めですか?」何を言い出すやら。
「金貨二百枚も払えんよ」少し皮肉を混ぜみるか。
「金貨二百枚なんです?じゃあ私が買いますよ」……フロラが突然現れ買うと言い出す、何を言い出すんだ。
「え、わたわた、私を…」予想外な事を言われてリシェスは動揺を隠せない。
「リシェスを買ってどうするんだフロラ」
「リシェスさんですか、リーンさん、買ったらカルムさん達に任せますよ、奴隷解放は少しずつでもやらないと」
「そんな大金あるのか?」
「そこそこはトカゲさんで稼いでましたから」
「そうか、でもリシェスは商人みたいだぞ、買わなくていい」
「そうなんですか、じゃあ売り物見せて下さい」
呆然としているリシェスを前に私とフロラはいつもの会話をする。
「わ、わかりました、食糧から嗜好品、お酒にタバコに医療品、フォリー商会をご贔屓に」リシェスは商人のプライドがあるのか、テキパキ商品を並べだした。
「いろいろありますね、お菓子までありますよリーンさん」フロラはのんきにしゃがみこんで商品を見ている。
ふと私は思った事を聞く。
「リシェス、買い取りはしているのか?」
「もちろんです」
「例えばリシェスから種を買って育った物を売ったり」
「難しくありませんか?現在重税で食糧はほとんど国に取り上げられますよ」
「なんでだ?私達はもう敵国と変わらん、先日も襲撃されたが追い返したばかりだ」
「リーンさん私初耳ですよ」ルルの後だから言って無かったな
「後で話すよ」
「わかりました」
「そうでしたか、お金になりそうですね、食糧はどこでも売れますし、先日も敗走してた…あ、あのクソどもか」たまに素がでるなこいつは。
「ああ、武器も食糧も奪って追い返したからな」
「すごいですね、どうやったんですかリーンさん」
「私も聞きたいけどいい?あのクソのやられっぷり」
二人が興味津々とグイグイくる、なんだかこれから騒がしそうだなと私は思った。
「あんな感じだ」私は包囲の方を指差した。
「アッハハハハ、クソ親父が、クソ親父がひ…お腹痛いクソっ」
「た、助け…」芋虫の様に丸まり呻いている父をリシェスは腹を抱えて笑う、どちらもいい性格をしている。
「……」私は無言でゾンビドッグを送還した。
「助かった?」威嚇が無くなりリシェスの父は顔をあげる、そういえばフロラはと思うとまた商品を見ていた。
「酒と嗜好品を買おう、あとは適当に食える植物の種を仕入れてくれ細かい事はリシェスに伝えておく」ポカンとした顔でリシェスの父は頷く。
「わかりました、近日中にプルミエにお届けします」もう娘を置いて逃げそうだ。
「じゃ、じゃあリシェス、いつもの場所で」ドサリと荷物を置いて走っていった。
あの素早さはなんだろう…
「リシェスさん、私は乾燥果物と蜂蜜とチョコレートを下さい」後ろからのんきに買い物をするフロラの声が聞こえる。
「リシェス、中までいいか?」私は荷物を拾い買い物が終わったのを見届けてから言う。
「え?はい…」心底嫌そうな顔をしていた。




