大改築プルミエ砦編5
先ほどから、ふふふとフロラから声があがる、わからないでは無いが。
焼き石で沸かした湯気がまだ明るいプルミエ砦から立ち上る。
ルルを手早く洗い湯船に入れ、ミチュア陛下をフロラと二人ががりでくまなく洗う、フロラがきれいに拭いたと言うが、体毛のある陛下に対してでは限界がある、固まった古い血液が溶けて湯で流すと赤い湯が流れた、かなり拷問を受けていたのだろう、フロラに治療され、尻尾まで癒えたそうなので怪我の跡はまったく無い。
まだ若い、獣人に詳しいわけでは無いが、幼さが見えるミチュア陛下がよく精神的に無事であったと思う。
「リーフムーン様どうされました?」
「いえ、なにも」「遠慮は要りません、私は今ただの獣人ですから」寂しげな顔がチラリと見える。
「本当によろしいので?私は人の心根に疎く、がさつな者です、不敬な事を度々言うでしょう」フロラもルルもポカンと聞いている、言った私が一番酷い顔をしてそうだ、何を陛下に言っているんだ。
くるりと私の方にミチュア陛下が向き直る、湯で流しピッチリと張り付く純白の体毛が双丘や腹部の女性的なラインに流れを際立たせ、失礼にも目を反らしそうになる。
「私だっていろいろあって怖くて泣きそうなんだから、そんな警戒した態度取らないでよ」ミチュア陛下から年齢相応な言葉が溢れた、陛下、いや、ミチュアは言ってしまったと言った感じでワタワタと取り繕う様に、「いえ、私は!」いとおしく感じ、静かに抱き寄せ、撫でた。
純白の体毛は滑らかで指に絡まずスルスルと背中を滑る、「あのリーフムーン様」名を呼ばれるが、黙って撫でた、ミチュアはまだ幼い、そんなミチュアに拷問を行い、処刑をする、世の常だろうが私は納得できる様な頭をしていない、がさつなアンデッドだから………
「……」ミチュアは静かに撫でられるままにされており、肩の力が抜けてきた。
「ミチュアと呼ぼう、私達にも様を付けないでくれ」純白の体毛に撫でた跡を残しながら言う、「はいリーフムーン」やや恥ずかしそうにミチュアは言ってきた。
「リーンさん私も」
「リーフムーンオレも」
フロラが手を取り、ルルが湯船から出てくる、「まったく」私はボヤくが、少し前の孤独感に比べ心地良さが今は無き心臓を満たす、ミチュアが楽しげに笑い、フロラとルルが争う、満たされる日常が、欠け代え無く感じる。
「そうだな、フロラの背中を流さないとな」大事な家族、フロラにしろ、ルルにしろ、私の心を満たしてくれり二人を私はいとおしく思った。
フロラの背中を流す、腐敗とは無縁なのか柔らかで女性的な背中である、なんというか布を使うのが申し訳なく感じ、素手で遠慮がちに触る。
触り片が悪かったのかフロラが身をクネらせ、擽ったそうにしている、背徳感もあるが、なんというか、フロラを蹂躙している征服感が強まる、まして、本音が聞こえてしまうのでなんとも言えない。
此方フルフロラ、リーンさん、擽ったいですよ、リーンさん、あ、背中の真ん中はダメですよ、あ、そんな、集中して攻めないで、リーンさん、なんか今日はイジワルです。
「すまんすまん」そんな事言いながら、リーンさん、攻め過ぎです、あぁ、リーンさんがなんかおかしいです。
ふと、私は我に返った、背中を流していたのだが、フロラがぐでっとしている、なんだか今日はしおらしいな。
皆を洗い終えたので、自分も手早く洗う、フロラから、私リーンさんに完全敗北しましたと、伝わってくるが、私にはわからない。
フロラのプラチナの髪が目に入る、埃っぽい、捕らわれた折に地面に転がされたのだろう、私は櫛を使いフロラの髪から異物を除去する作業を始める。
「あの、リーンさん」
「動くなフロラ、千切りたく無い」プチプチと千切れる嫌な感覚を思い出した。
大人しくなったフロラの髪を丁寧に洗い、湯で流す、心なしか髪に輝きが射した様な気がする。
「お二人は姉妹のようですね、たいへん仲がよくて羨ましい」ミチュアが湯船からあがり、涼みながら言う、湯に浸かるのは種族的に向かないのかもしれない。
「私とリーンさんは家族ですから」フロラが言う、ルルがビクッと不安そうに私を見てくる。
「ルルさんはどうします?家族になりますか?」フロラには敵わないな、と思っていると、ルルがおずおずと、「いいのか?」と聞いてくる。
「ただし、条件があります」
「なんだ、なんでもやるぞ」
「私達は家族ですから、愛称で呼びあいましょう」
「ん?それって…」
「私はフロラと呼んで欲しいです」
「私もリーンで構わん」
「わかった、リーン、フロラ、よろしくな」長い時間を生きるアンデッドに家族が増えた。
羨ましいそうにミチュアは見ていた。
風呂からあがり、ミチュアをどう乾かそうか考えていたら、「お気遣い無く」と自ら風を起こし手早く乾燥させていた、今度真似をしてみようと少し思った。
疲れているだろうミチュアを部屋に案内する、個室を勧めたら、皆と同室がいいと言った、牢屋に監禁されていた事を思い出し、頭を下げる、そんな私を見て、一緒に寝ましょうねと言ってくる、皆で寝られる部屋にミチュアを案内した。
「リーン、なんかいるぞ」しばらくしてルルが誰かを見つけた様だ。




