獣の国のフルフロラ編7
「はやい、速いですー」私は風を切り、声を後ろに置いていきながらチャリオットに揺られます。
蜘蛛さん達は飛ばされ無い様に背中にガッチリしがみついています、キャッセさんは縄を使い落ちない様に皆さんとチャリオットを結びます。
出発と同時にマルシェさんとリュシオルさんが転げ落ちてましたからね、二人は今無言です、何か話しません?
キャッセさんは、キョロキョロと辺りを見ては、大丈夫だろうか、いきなり襲われ無いだろうか、とブツブツ言いながら尻尾の毛を逆立てています。
そうですよね、リュシオルさんは死なせない様にしたいですし、見せしめに処刑もありえますよね、マルシェさんも気に入ってるみたいですし、まあ、いざとなったら暴れて逃げますか、目標は死亡ゼロです…私はカウントしませんよ。
ほどなくして、お城が見えてきました、チャリオットが止まります、遠くありません?
「ああ、フルフロラ、気を使ってくれたのか、ありがとう」キャッセさんがお礼を言いながら二人と自分の縄を解きます。
「二人とも、歩くぞ、もう城が見えている」テキパキと二人を立たせて荷物をまとめます。
チャリオットがスウッと消え、私達四人と蜘蛛さん四匹になります、国へは乗り物で入ると無礼にあたるんですかね。
私達は徒歩でランクス国へ向かいます。
「なんだか眠くなりますね」いい天気に涼しい風、寝転がったら気持ちよさそうです、蜘蛛さん達は初めて森の外へ出たのが嬉しいのか、自分達で歩いてます、まだ怖いのか二、三歩前ですがね。
「少し寝たいです…」
「俺も…」
マルシェさんとリュシオルさんは私と同意件ですね、キャッセさん、寝ません?
期待を込めてキャッセさんを見ます。
「謁見まで時間がかかるから、城下で宿をとる、それまでは歩く」
「……」「……」「……」沈黙が支配します、違うんです、暖かなお日さまの下で寝たいんです、ベッドはベッドでいいんですが、この気持ちよさそうな自然で、あわよくば木陰で寝たいんです。
「あと少しだ」慈悲をーっと無言で訴えても伝わりませんね、リーンさんの癖でついやっちゃいます。
なんだかんだでランクス国、モフモフの国に入りました、蜘蛛さん達は背中に整列しています。
モフモフの猫耳さんが沢山いますね、何故か私を見るとビクリと固まります、おかしいですね、普通に人間もいますのに、私何か変です?
「城へ行ってくる、そこの宿を取っておいてくれ」キャッセさんは城へ、マルシェさんは宿へ、私はリュシオルさんに断ってブラブラする事にしました。
城下町ということで、かなり発展しています、お店は色々売ってますし、屋台もあります、リーンさんに何を買って帰りましょうか。
楽しいですね、見てるだけで時間が過ぎて行きます、しばらくして、私は猫耳さん達に囲まれました、皆さん槍や剣で私を包囲します。
「魔物を連れて我らがランクスに侵入するとは、女、タダではすまんぞ、大人しくしろ」魔物?蜘蛛さんです?
「違います、この子達は私が育ててるんです」私がお母さんです。
「ふざけるな、この頭のおかしい女を捕らえろ」編まれた縄を投げられ、私と蜘蛛さん達は捕まりました、ズルズルと引きずられ、牢屋に放り込まれます。
「ここしか空いてないか、仕方ない、明後日には処刑してやる、魔物もな」私は処刑されるみたいですね。
牢屋ですねー、私は縄を抜け出し、ぺたりと簡素なベッドに座ります、蜘蛛さん達はヨジヨジと壁を昇って四隅にそれぞれ糸で巣を作ります、私もハンモック作って欲しいですね、しかし、退屈ですねえ。
石造りの部屋が幾つかに、鉄格子、窓は無いですし、退屈ですねぇ。
「暇ですねぇ」私は何度目になるかわからない言葉を紡ぎます。
「申し訳ありません…」か細い声が隣から聞こえます。
「どなたです?」私はそちらに声をかけます。
「私は、ミチュア、ミチュア・タマ・ランクスと申します、先日まで女王をしておりました」女王さんです、偉い人ですね。
「なんで捕まってるんです?」偉い人なのに不思議ですね。
「私の偽者を連れた者に拘束されまして、明後日には処刑されるそうです」偉い人は大変ですね。
「そうなんですか、では私とお話しませんか?」なんだか優しそうな人の気がします。
「い、いですよ」ん?何か痛そうですね。
そこへ、バァンと入り口が開き、豚が入ってきました、気持ち悪いですね、猫耳が似合いませんね。
「ヒィッ」と偉い人がすくみました。
「新顔がいるなぁ、偽女王様を可愛がったらつぎはお前だな」豚は偉い人の檻を開け、無理やりに引きずり出します、私は豚の後ろに立ち、ミートクラッシャーを構えます、気配には振り返る豚に一撃、真っ二つにしました。
「タマさん大丈夫です?」私は怯えるタマさんを連れて壊れた私の牢屋に入りました。
一晩休んでこれからを考えましょう、私はタマさんをなぐさめながら、明日をどうしましょうかと考える事にしました。
タマさんは真っ白で滑らかな毛並みが傷だらけで赤く染まり、尻尾がありません、生気の抜けた声音のためか若そうな見た目にしては大人びて見えます。
「タマさんは尻尾が無いんですね」私の問いに。
「罪人として断尾されました」暗い声で答えます、悔しそうです。
「あなた様が殺して下さった者に嬉々として斬られまして、お礼を何と申せばよいか、私が死にゆく前に胸のつかえが取れました」ふむふむ、尻尾斬られちゃったんですね。
「ヒィ」蜘蛛さん達が降りてきました。
「森の蜘蛛さん達です、カッコいいと思いませんか?」蜘蛛さん達を紹介すると、それぞれポーズを決めます。
「え、えぇ…ヒィ」蜘蛛さん達は返事に満足したのか、コリコリと豚を食べ始めました。
「タマさん」「はい、なんでしょう」コリコリ、ブチブチと響き渡る薄暗い牢屋で私はタマさんに近づきます。
「私も魔物のエサにされるので?せめて殺してからにして下さいね」諦めた表情をタマさんは浮かべます。
「なんでです?」私はタマさんをソッと抱き寄せ、回復を施します、そういえばトカゲさんにしかまともに使った事無いですね。
「なんだか温かいですね…」タマさんは目をつむり力を抜きます、痛いと痛いですもんね。
傷が塞がり、スラリとした尻尾がまた生えました、長くて白くて綺麗ですね。
「あ、ありがとうござい…え?……あ、あぁぁあぁぁぁ」懐かしい尻尾の感覚が蘇り、ミチュアは号泣していた。
処刑の決まった罪人は断尾される、今まで見てきたものであるし、自分の尻尾を失ったときは、もう自分は死んだものと思っていたのに。
失った女王の地位より、尻尾を斬られた痛みと屈辱がミチュアの生気を失わせていたのに。
虚ろに、プラチナの髪をした女に殺されると思っていたら、無くした尻尾が帰ってきた。
「ありがとう、ありがとう」タマさんが私に頭をグリグリしながらお礼を言ってきます、そんなにされたら照れますね。
蜘蛛さん達が食事を終えてまたヨジヨジと巣に帰った頃「あれ?」と、落ち着いたのかタマさんが離れます。
「あなた様の心臓が動いておりませんが」その事ですか。
「はい、私はアンデッドですから」ポカンとタマさんが動かなくなります。
「あ、私はフルフロラといいます」忘れてました、自己紹介をしませんと。
おや?ほねさんが、何か持ってきました、濡れた布ですね、しかもお湯で濡らしてますから温かいです、さっそく受け取ってタマさんの固まった血を拭います、だんだん綺麗な白になってきますね、タマさんは黙ってますが、なんとなく気持ちよさそうにしています。
何枚も濡れた布を使い真っ白なタマさんになりました、最後に乾いた布と風の魔法で乾かしまして、完成です。
綺麗になってすっきりしたタマさんは、神秘的に見えてきますね、タマさんは姿勢をピンと正し、私に言います。
「生と死を司るフルフロラ様、私を、私の国をお助け下さい、お礼はできうる限り致します」タマさんにお願いされました。
「かまいませんよ」おっけーします。
「ありがとうございます」こうしてタマさんと約束を交わして、この国をなんとかする事になりました。




