獣の国のフルフロラ編5
翌朝、キャッセさんがおずおずと言ってきます。
「フルフロラ、その魔物はな、母親の背中で育つんだ、もしかしたら親が死んでるのかもしれない、いっそ」楽にしてやった方がとキャッセが語る前に。
「解りました、リーンさんは私が泣き落としてでも説得します」お母さんが見つかればよし、居なければ私が責任をとって大きくして自立させます。
「いや…」
「私が責任を持って面倒を見ます」お母さんを探しますよ。
私は、蜘蛛さん達と、朝の散策に出かけました、まあ、結論から言うと、お母さん蜘蛛は見つかりました、全長五メートルほどの身体は、ズタズタで、複眼は三つぐらいしか残っておらず、体の中身は食い破られ、無残でした。
周りには私にしがみつく蜘蛛さんくらいの足がコロコロとあり、大半が食べられたであろうあとでした。
「お疲れ様でした」私はお母さん蜘蛛の亡骸を撫で、蜘蛛さん達を育てようと決意しました、ほねさん達がカタカタとお母さん蜘蛛を運びます、あの、仲間にしたいのは解るんですが、私より空気読めて無く無いです?
「戻りました」私はログハウスに戻りました、三人にお母さん蜘蛛の亡骸を見つけたことを報告して、次の休める場所まで向かいます。
蜘蛛さんは肩に二匹、脇辺りから二匹、四十の複眼で監視は抜かり無いです、後ろは振り向きません、強い子に育てます。
ウサギさんに小型の魔物さん、たまにいるトカゲさんをご飯にして、蜘蛛さん達に与えます、帰ったらご飯どうしましょう、リーンさんにも相談しないと、本格的な生産、畜産形態を考えないといけませんね。
しかし、皆さん慣れたのか昨日より早足ですね、まるで何かから逃げようとしている様な、大丈夫ですよ、私と蜘蛛さん達が後ろを任されますから。
二日目のログハウスは少し壊れていました、体当たりをされた様に壁面にヒビがあります、猪か、熊かとキャッセさんは言っていましたね。
もちろん私と蜘蛛さんは捜索に出ます、足跡を追跡すると、亡骸がありました、全長は二、三メートルほどの猪です、内臓を中心に食い荒らされてました、目玉も無く、暗い眼窩に無念さが感じられます、腐敗が強く食べる気にはなりませんでした。
あの、ほねさん達、せめて見えない所で…
食い荒らされ方を見るに鳥がつついて食べる感じに近いですね、でもそんな大きな気配はしてない気がしますが、どうしたものでしょう。
キャッセさん達は、国へ戻るのが最優先といった感じですね、そりゃそうですね、私達は一抹の不安を抱えたままに二日目を終えます。
三日目、ログハウスの回りの木に異常がありました。
「なんだコイツらは」私達を囲む木々すべてに鳥が、鳥の様な何かがいます、身体と嘴は鳥のそれですが、頭部が人間的で、異様な姿をしています。
「獣人さんです?」横のマルシェさんに聞いてみます。
「こんな魔物見たことないですね」違うみたいです。
「逃げ場は無いか」少年はチラリとログハウスを見ます。
「この子達の仇ですね」蜘蛛さん達が怯える様に背中に回ります。
バチンバチンと鳥の様な何かは嘴を鳴らして威嚇をします、何ですかね、その顔が豚に見えますね、豚は殺しませんとね。
「皆、立て籠ってアイツらが諦めるのを待つぞ」キャッセさんは少年とマルシェさんをログハウスの中に入れます、私は蜘蛛さん達が狙われ無いように後ずさりながら入り口に向かい、蜘蛛さん達を避難させます。
鳥の様な何かはログハウスの屋根にも降り立ち、バチンバチンと威嚇をしながらこちらを見ています、もう、鳥の見た目以外は鳥では無いですね、豚がエサに群がる感じです。
「フルフロラ、お前も」私はモーニングスター(鎖長め)を取りだし、屋根に飛び乗り凪ぎ払います、鎖の先に付いているトゲトゲ鉄球が数ひき肉塊に変えて、数ひき逃します。
「撃ち落として下さい」私の声にほねさんがログハウスを中心に円陣んをくみ、撃ち落とします。
辺りから、殺気立つ気配と共に大量の鳥の様な何かが飛び立ち、空を一時的に暗く染め上げます。
「風で」魔法を使うほねさんが数人で風を乱し、飛行能力を乱します、低空に逃れるのは私と、他のほねさんが始末していきます、あらかた動きが無くなった時、数ひきが飛び去ります、私は鳥の死骸を持ち上げ、そっと飛ばします、鳥の飛び去った方へ、あたかもケガで弱った様に飛んで行きました。
死骸の散乱するログハウスの回りに私が一人になると、「無事か?」キャッセさんが来ました、「はい」私の返事に安堵してくれます、続けて蜘蛛さん達がヨジヨジと登ってきます、みんな無事ですね。
「ご飯ですよ」私が言うと、蜘蛛さん達が鳥の様な何かを食べ始めます。
「フルフロラ無事です?」「大丈夫か?」マルシェさんと少年も死骸を避けながら近くに来ます。
蜘蛛さんとほねさんが後始末を終えて、私達は出発します、ありがたい事に皆さんは私を排除しようとしませんでした、珍しい方々です、「どうしたフルフロラ」少年が声をかけてくれます。
「はい、そろそろ少年の名前を覚えて見ようかと、リュッシーさんでしたっけ?」
「リュシオルだ」
「リュシオネルさん?」
「な……いや、リュシオルだ」
「シオルんさん?」
「まあ、おいおいでいいさ」
「わかりましたリュシオルさん」
「お前、からかってたのか」
「ふふふ、どうでしょう」まあわりと遊んでましたが。
「帰れたらリーフムーンに叱って貰おう」あ、酷いです、リーンさん怒りませんよね。
私達は何事も無く三日目のログハウスに着きました、後は森を抜けるだけです。
その夜、気配に私は一人ログハウスを出ました。




