土使い襲撃編4
アジールルは遅々とした進軍の中、ニヤニヤと無造作な前髪の下で笑みを浮かべる。
「手柄を立てればオレは有名になる、兵士にだって取り立てられ、金も手に入る」
「金が有れば売られた姉ちゃんも買い戻せる」
「兵士になれば情報ぐらい手に入るだろう」
いつも思う妄想がついつい口に出る。
「あんな女に負けない、オレなら勝てる」
「アンデッドやリザードマンなら押しきれる、数は同じくらいか」
砦の前に半円の陣を構えるアンデッドとリザードマンにアジールルはゴーレム達に指示を出す。
「槍二本で行く」
ゴーレム達は一本の槍の様直線に並びアジールルの前方左右に進軍しながら整列してゆく。
上空から見れば左右狭い感覚で二本の槍が投てきされている様に見えるだろう。
迫る二本のゴーレムランス、進軍は遅々としているが、あの程度の円陣など突き破り蹂躙できるだろう。
「正面からぶち破るぞ」
無機質で直線的な進軍は無謀であるが、物質的なゴーレムなら、損害を無視して遂行できる。
動きが鈍いなら鈍いなりにやり方がある、損害を無視できるから、損害が出る戦略が使える、前方が破壊されたら次を呼び出すまで、永遠に後続を送り込み、疲労させ、瓦解させる、突き進むゴーレムはやがて勝利を掴む。
「ん…」
アジールルが違和感に鼻の下を拭うと赤い…鼻血が付着する。
フンと、無視を決め込み背中の布地で鼻血を拭う。
めまいは無い、砦を蹂躙するぐらいは持つだろうと、アジールルは自己の状態から推察する。
鼻血に始まり、めまい、視野の異常、そこまでは耐えられる、そこからは毛細血管の破裂が始まり、血涙と鼻血を垂れ流す事になり、立って居られなくなる。
それ以上は試した事は無いが、死に至るだろうと、自覚している。
「姉ちゃんを取り返すまでは死ねない」
まだ十代に至ったばかりであろうアジールルの決意は固い。
「一日にして陥落したプルミエ砦を同じ速さで陥落させ、オレの実力を見せ付ける」
しかし、飛ぶ様に現れた騎士を思い出す。
「あいつは強いな、何を考えているか解らないが、あんな身軽な奴はありえない」
まるで力を入れていない跳躍で人の数倍は跳ぶ、いきなりのゴーレムにもまるで動揺せずアドバイスを送ってくる。
「あいつを部下にしたら楽ができそうかな…」
意識を失っても身体を任せられそうな…
姉を売った両親を見限り、自己流に土を操り、山や森で隠れながら一人生活していたアジールルは、親を見限ってから初めて他者に依存したいと考えていた。
「リーフムーンだったか」間近に見える円陣の中央に佇む女騎士を見つけ、アジールルはポツリと呟く。
ゴーレムの突撃を円陣などで受け止める気か?そんな薄い陣など直ぐに突き破るぞ、リーフムーン、オレが直接打ち倒して部下にしてやる。
アンデッドにリザードマンも従えりるリーフムーン、欲しい、欲しくなった、リーフムーンを下したら一軍ができる。
オレにしか従わない一軍があれば待遇も約束される。
勝利したらアンデッドも…リザードマンも…リーフムーンも…アジールルはまだ幼い自らの胸に目の前のすべてを我が物にしようと野望を膨らませる。




