序
地獄の様な時間が過ぎ、日が落ちる…
「てったい、てったーい」彼女の声は可愛らしく響き、土壁を無心で殴りつけるアンデットの群れを地に吸収させるかの様に消滅させる。
「勝てないな…」リーフムーンの呟きは、兵達の勝鬨に紛れる。
珍しい女騎士として、鼓舞の為か、激戦区のプルミエ砦に派遣され、娼婦を見る様に近付く兵を殴り、上官を殴り、見せしめに囲む男達を殴った…
黄昏のファン平原を背に、リーフムーンは土壁に魔力を流し、補修に勤しむ。
誰も自分を相手にしなくなった…
顔を背け、腫れ物を扱う様になった…
怪しい動きはまだ在るが、どうやら自分に対してでは無さそうだ。
土壁のヒビにあの地獄の様な軍団を思い出す…
人の理性を失った力…
折れ、砕け、刺さり、斬られ、焼かれ…
無心で、無言で、ただ命令された破壊を行うアンデット達に兵達は、恐怖を覚えているだろう…
あの女…リッチが動けば、壁を砕かれ、アンデットが流れ込み、浮足だった兵では蹂躙される。
たった一人での補修は、日が落ちても続いた…
配給を手にリーフムーンは当てられた部屋に帰る。
男女関係無しの四人部屋は、自分と、襲って来なかった男が一人…
殴った二人は他に移ったらしい、残った男は顔を合わせるや、ベッドに隠れる様に横になる。
ふと、出て行った兄は今も生きているのだろうかと、思う…
下らない…
家族を思うとは、追い詰められているようだ…
自分が出るしか無いか…
現状が自分も耐えられ無い…
無様に喰われるくらいなら、リッチを刺し違えてでも…
居場所も無いなら、戦場で死にたい…
本当にそうか?逃げたいだけじゃ無いのか…
硬いパンに塩抜きもしていない干し肉をかじり腹を満たす。
明日か…
リーフムーンは思う、今夜は眠れ無さそうだと…




