僕は今日も戦いの日々に身を投じ
挿絵入れてみましたが製作途中なもんでして……
まだ鉛筆ラフ段階、しばらくしたらペンで下書きまで持っていったものが掲載されるかも……?
愛用の杖を浮かばせ、その上に立っている彼は眼下の荒廃した街並みを眺めながら飛んでいる。
「そろそろ、かな?」
ぽつりと別の法機使いの気配を感じて警戒すると同時、地上から水の槍が撃ち出された。
彼は余裕をもって回避すると、発射元ではなく術が詠唱された場所を探る。
「水のエレメントかあ……」
第二射が飛んでくる、彼はそれを避けようともせず、手で受け止める。
「レベルは一桁台、低級だね」
発射元に火炎弾を撃ち込んで魔法を破壊、詠唱元に受け止めた槍を投げ返す。
――崩壊寸前のビルが倒壊する。
「やった、かな?」
あれではビルのどこに居ようと確実に死んだ……だろう。それが魔法を使えないであれば。
三十秒ほど眺めていると粉塵を掻き分けながら小さな人影が飛び出して、地面の上を滑っていく。その軌跡には濡れたような色を残して。
「水の膜でねぇ、面白い使い方をするなぁ。まあ僕を狙った以上はちょっとばかし怖い思いはしてもらうけどね」
急降下して真後ろにぴったり距離を詰める。
よく見れば黒いマントをつけた子供だ。しかも魔法使い然とした先の尖った鍔広のとんがり帽子。
「はいちょっと止まろうか」
彼が逃走者の足元に手を向けると水の膜を創りだしていた魔法が破壊される。
そこそこの速度でいきなり地面と接触した子供はつんのめって、もちろん止まれる訳もなくグルグルと前転をしながらあちこち擦りむいて停止した。
それも……トドメかどうかは知らないが大きな瓦礫に頭を打ち付けて尻を突き上げる屈辱的な格好で。下着はなかった。ついでに女の子だった。
「さて、勝手に縄張りに入ったら撃ち落とすのは当たり前だけど実力の違いを先に測ろうか。僕はただ通過するだけだったんだからそのまま無視していればいいのに手を出してきた。これ、意味わかるよね? 魔法使い同士の戦いって言うのは性別年齢関係なく相手が動かなくなるまでやるものだよ」
「ひ、ぇ、えええええええええ!!」
ニッコリとした笑顔、ではなくニッゴリとした笑顔で優しいとてつもなく怖い声で語り掛ける。
いくら相手が魔法使いであっても子供だ。
いくらこんな荒廃した世界で生き延びていても子供だ。
いくら相手が女の子だろうと容赦しないのが彼だ。
いくら怖くて泣き始めようがおかまいなしだ。
「とりあえず何がいい? 魔法全剥奪? 魔物の餌? それともこの先の〝一般人〟のむさ苦しい男どもの中に放り込む? たぶん女に飢えてるから子供だろうと容赦ないだろうね」
「い、ひぃ、やぁ、どれもやあああぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
「それじゃ、そういうことで」
本格的に号泣させたところで無視してさようならだ。
彼の戦い方は直接的な魔法の撃ち合い以外に精神的な攻撃もある。
「さよなら」
高度を上げていくとさっきの倒壊の音で寄ってきたのか魔物の群れが周囲を埋め尽くしていた。
いくら魔法使いでもあれを一人で突破するのは無理だ。
「うーん……どこに行こうか、なぁ? ってなにこれ重いんだけ…………ど?」
下を見下ろしてみれば水をロープのように伸ばして、杖にぶら下がっているさっきの女の子がいる。
マントの下は黒い革の装束(露出過多)だ。魔法使いには独特の個性があるが、この年で露出趣味はどうかと思うぞ?
「あのねえ、この杖定員僕だけなの。だから下りて」
水が巻きついている場所をガンガンと蹴って、解呪と対抗魔法(反対属性)でガツガツロープを削るが、女の子も落とされまいと次々と詠唱して水のロープを絡ませて来る。
「いや、っややいや! 落ちたら死にます!」
「だからって普通ブルームは一人でしょ!? 地べたのウィードみたいに踏み荒らされていればいいじゃないか僕まで巻き込おぉぉぉぉぉむなぁぁぁっ!!」
――落ちた。