第3話 出撃!新たなる勇者
現場に急行した賢介達が目にしたのは、街中で暴れ回るロボットの軍勢であった。
兵隊のような容姿の人型ロボット達が機関銃を手に逃げ惑う人々を撃ち殺して回っている。
「た、隊長……あれは!」
「ああ……だが何故?!」
光一と賢介はそのロボット達に見覚えがあった。
しかし、それを気に留めている間もロボット達による殺戮は続いていく。
「話している余裕はないな……光一、瞳、いくぞ!」
「「了解!」」
賢介の掛け声に二人も続く。
三人は殺戮を繰り広げるロボット兵隊軍団に向けて銃を構え発砲した。
銃弾をうけた兵隊ロボットは次々と倒れていく。
この拳銃も普通の銃ではない。対ロボット用の特殊拳銃だ。
「瞳クン、いきなりだが銃の腕は大丈夫かい?」
「バカにしないでください、銃は私の一番得意とする武器ですよ? 腕前なら光一先輩よりも間違いなく上です」
「そ、そうか……ならいいんだ、うん……」
光一も銃の扱いは得意だが、瞳は言葉通りそれ以上であった。
「俺たちも行くぜー! かかってきやがれゲス野郎どもが〜ッ!」
やる気を漲らせ、バイゴックも突っ込んで行った。
両手の甲からバイゴックローを出し、群がる兵隊ロボット達に踊りかかって次々と破壊してゆく。
「私も加勢しましょウ。フィフスフィスト・レーザーモード起動……」
エスパルトはフィフスフィストの機能のひとつのレーザーモードを起動させ、的確に兵隊ロボット達を一体一体確実に撃ち抜いていった。
戦いながら、光一と賢介は言葉を交わす。
「隊長、こいつらやはり……」
「ああ、間違いないだろう……」
「「ダークシャドーのコンバットボーグ!」」
二人は声を揃えて叫んだ。
「しかしそんな馬鹿なことが……ダークシャドーは壊滅したはず……」
賢介がそう口にしたその時、
「ドゥルアッハッハッハッハッハーッ! ブァァァカものどもがァ! 我らダークシャドー……否! ネオダークシャドーは不滅だ!!」
妙にテンションの高い野太い声が響き渡り、その次の瞬間には何者かが空から落下してきた。
ドシィィィィィィィィィィィィィィィン!!
かなりの重量のものが落下したようで、凄まじい振動と音が響き、落下地点にはクレーターすら生じていた。
そのクレーターの真中に立つ影は、重戦車を想わせるフォルムをしているが、体躯から人型であることが理解できる一体のロボットだった。
「お、お前は……!」
その姿を見た光一が叫んだ。
「ほう、我のことを忘れてはおらぬようだな。この『虐殺将軍ジェノサイダー』を」
虐殺将軍ジェノサイダー。ダークシャドーのロボットの中でも特に強力な『四天王機』の一体で、一度に大量の破壊と殺戮を行うことに特化した凶悪なロボットだ。
しかし、四天王機もダークシャドーの要塞の崩壊と同時に機能を停止し、その後は自爆して全滅したはずだったのだが……
「ドゥルアッハッハーッ! なんて顔だ、我がここに存在することが心底信じがたいようだな? だが、驚くのはまだ早いぞ、なあお前らァ!!」
ジェノサイダーが上を向いて叫ぶ。次の瞬間、どこからともなく『それ』は現れた。
銀色の全身が鈍い銀色をした、カメレオンのような頭をした人型のロボットであった。
「でっけえ声出さなくても、俺は最初からここにいるよ」
ジェノサイダーの手前に現れたカメレオン顔のロボットは、不快そうにジェノサイダーの方を向いて言った。
ダークシャドー四天王機のその一、無色透明のインビジブルだ。別の二つ名として姿なき殺し屋という異名もある。
インビジブルはジェノサイダーとは対になるようなもので、こちらは一人の相手を確実に仕留めるように特化されたロボットだ。
「左様、我ら四天王機は言葉にせずとも互いの信号を察知して駆けつける……」
今度はまた別の声が聞こえ、それと同時に強い風が吹き、気づくと一体の忍者のような風貌の全身青色のロボットが立っていた。
四天王機のその二、音速忍者アクセラレイターだ。
「フフフフフ……そうですよ、まったくジェノサイダーさんはうるさくていけませんねぇ」
さらに別の声が響き、直後に賢介の足元を銀色の蛇が通り過ぎて行った。
その蛇がジェノサイダーの隣まで這って行くと、そこで急に蛇の体が膨張を始めさらに不気味に形を変えていき、最終的に全身銀色のマネキンのような姿へと変貌した。
姿自体はマネキンのようなシンプルな人型であるが、顔には六つのそれぞれ色違いの目が妖しく輝いている。
四天王機のその三、変幻自在のメタモルフォーゼだ。
「フン……揃いも揃って我の悪口を散々言いおって! だがまあ、これで全員揃ったなァ!!」
四天王機その四である虐殺将軍ジェノサイダーが声高らかに叫ぶ。
「我らネオダークシャドー四天王、ここに顕現せり!!」
四天王機の全機揃い踏み。
これが何を意味するかを賢介は確信し青ざめた。
「こんなことが……ダークシャドーは壊滅してはいなかった、そして今ネオダークシャドーとして再び活動を始めたというのか……」
「ほうほう、なかなか理解力のある人ですね」
メタモルフォーゼが感心したように言う。
「その通り、我々はネオダークシャドーとして蘇りました。あのお方の力によって……」
「あのお方……首領Dのことか! やはりやつはまだ……!」
「もちろんですよ。首領がいなければ、我々はこの場に存在することはできない。そして彼らも……」
言葉を切ったメタモルフォーゼがさっと左手をあげると、四天王機の周りに様々なロボット達が集まってきた。
「こっ、こいつらまで……!」
光一は息を飲んだ。
集まってきたロボット達はいずれもこれまで戦って倒してきたダークシャドーのロボットだったのだ。
これには賢介と光一はもちろんのこと、今回が初の出動となる瞳も焦りを隠せなかった。
我らネオダークシャドー、この世に闇をもたらさん
鋼の身体に宿りし邪悪な魂がドス黒いオーラとなって見えるほどに、ネオダークシャドーのロボット達は殺気を発していた。
その時、空に一点の光が見えた。
徐々に近づく騒音、はじめは飛行機のように見えたそれは紅蓮の装甲に身を包んだ竜人のようなロボットだった。
騒音を発しているのはその背中に広げられた鋼の翼のジェット噴射の音であったが、騒音はそれだけではなかった。
「メテオォォォォォォォォォォォォォォォォォォ……」
そのロボット自身も叫んでいたのだ。
これから繰り出される技の名を。
「ドラグォォォォォォォォォォォォォォォンッ………………キィィィィィィィィーックゥ!!!」
飛び蹴りの態勢で急降下してくるそれに、ネオダークシャドーのロボット達は回避のために散らばろうとしたが、それも間に合わなかった。
ロボット達のうち一体のゴリラのような見た目のロボットに、急降下してきたレッドドラゴンの足が突き刺さり……
ドガァァァァァァァァァァァァァァァァン!!
凄まじい爆炎と爆発音が辺り一帯に広がった。
その後には白い煙がたちこめる。
「貴様! まさか……」
シェノサイダーが驚きを隠せずに叫んだ。
白煙が晴れた先にいたのは、今は亡きはずの彼らの宿敵の姿だったからだ。
「貴様もまた健在だったのか、メタルドラゴン!!」
紅の装甲へと容姿を変えたメタルドラゴン……しかしそれはメタルドラゴンに有らず。
だが! 彼はメタルドラゴンの意志を継いでいる。
メタルドラゴンの弟にあたるネオメタルドラゴン改めレッドドラゴンは、ネオダークシャドーのロボット達の前に悠然と立ちはだかった。