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高崎  作者: ぽん
1/5

奇妙な癖

初心者の初投稿になります。

右も左もわからないもので、アドバイスいただけたら嬉しいです。

よろしくお願いします。

まったくもって高崎は困った男である。


高崎はいつでもテレビリモコンを持っていた。彼はその用事がなんであれ、いつどこに行くにしても、彼の鞄の中に数社のテレビリモコンを入れていた。会社に行くときも、街に買い物に行くときも、もちろんデートのときでもだ。そして、街中の電化製品店や、誰かの家や、あるいはちょっとした下町の食堂などでテレビを見つけると、彼は自分のリモコンでそのテレビのチャンネルを変えていく。ひどいときは番組の視聴予約さえした。


高崎は非常に巧妙な男で、テレビを見つけるとさりげなく鞄の中に手をしのばせ、鞄の側面に開けた小さな『穴』から、リモコンのほんの先端だけを出し、誰にも気づかれることなくチャンネルを変えていくのだ。


ある月夜のことだった。高崎は小腹がすき、近くのコンビにまで夜食を買いに行くことにした。彼は財布と携帯電話をポケットに入れ、もちろん例の鞄を持って家を出た。


高崎の住む家はT小学校の近くにある1DKの小さなアパートだったが、一人暮らしの彼には十分の広さだった。殺風景な部屋の中にはテレビは一台としてなかった。ある物といえば、冷蔵庫やベッド、炊飯器といった最低限の生活必需品だけだった。


高崎はアパートを出て几帳面に鍵をかけ、T小学校の前を通りすぎ、歩いて2~3分のコンビニに向かった。11:45のことである。


途中、T小学校の前を通り過ぎると、道路に面していくつもの店が建ち並ぶ通りが見えてくる。今は営業時間をはるかに越えているため、どの店も明かりを落とし、静寂に包まれていた。


高崎はその中でも、最近できたばかりの電化製品店の前でふと足を止めた。


その電化製品店は、道路に面した一部の壁がガラス張りになっていて、店内が見渡せるようになっている。もちろん閉店後は防犯用のシャッターが降りていたが、檻のようなシャッターだったため、夜間でも薄暗い店内の様子が伺えた。奥のほうに非常口のランプが緑色に光っている。


高崎は鞄の中に入ってあるテレビリモコンを店内に向けた。

彼の一振りで薄暗かった店内は、一気に色とりどりのにぎやかな色彩に彩られ、沈黙を守り続けていた機械たちは目を覚まし、騒音を掻き立て始めた。


高崎は、まるで指揮者がオーケストラに要求するかのように、鞄の中で小さく小さくリモコンを振りかざし、ボリュームを18に落とした。それでも、数十もあるテレビがいっせいにあげる音はすさまじく、彼はもっと小さく、もっと小さくとボリュームを2まで落とした。


あたりには静けさが戻り、高崎は納得したように歩き出した。彼は4つのリモコンを使い、総数34ものテレビをつけっぱなしにして、その店を後にしたのだ。


まったくもって高崎は困った男である。

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