プロローグ
世界は二種類の大きな存在によって支配されている。
――一つは聖央教会で信仰されている「マニアンリ」、通称「創生の神々」
――一つはこの世界に突如現れたと言われる「ダーマスアラ」、またの名を「招かれざる者たち」
周囲を大海に覆われるラシューア大陸は主に三つの地域に分かれている。南北をススプール山脈に分断されている東のナチーヤ地方。広大な原生林に覆われた西のロマリア地方。失われた古代文明を背景に他の地域より工業、産業が発達している南のメルアカ地方。またそれぞれの大地はミルテ川、ルクソン川、ボルテーア川という三つの大河によって分たれている。そしてそれらの川の行きつく先は、大陸の中央にある広大な湖、アムルグ海へと繋がる。ダーマスアラの影響が強いのは西のロマリア地方であり、またマニアンリを信仰しているのは東のナチーヤ地方である。
世界は三大陸に分たれ、そして強大な二種類の存在は互いの影響力の拡大のために領土の奪い合いを繰り返した。現在のこの「神々の戦争」というこの大戦争時代、事の発端とも言われる「境界の消失」を知る者は神々のみ。人々は己の利益と、またそれを裏で操る神々によって自身の運命を血と嘆きで埋め尽くす。世界は悲しみと憎しみ、そしてそれらを覆い隠すほどの絶望でこの大地を包んだ。
そんな中、翻弄する運命に操られながらも、人でありながら神の始めた戦いに終止符を打たんと闘うもの達が現れた。ある者は恋人や肉親といった大切な者のために、またあるものは自身の内に秘める正義のために……また中にはただ純粋に闘争のみを追い求めた末に。
自己の運命を剣と世界に捧げ、人々に憎まれ、恐れられ、称えられるもの。人々は彼らを畏怖と尊敬を込めこう呼ぶ。
――神殺し、と。