二章 王侯貴族と転移秘法 10
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ユートとサラが事務所を出るのと同時に、命司もまた、エラルを伴って事務所を出た。
ユートの言葉通り、エラルは自分も探索に行きたいと言ったからだ。
悲痛な面持ちで、エラルは命司の隣を歩く。背は、命司より少し高いくらいだろうか。あの中年の騎士と比べると、華奢に思えてしまうほど貧弱そうな体格なのに、しかし重装甲の鎧に身を包み、背中には巨大な戦斧を負って、なおも命司に遅れることなく歩いている。
だがそれでも、王族だと言って納得出来るのは、その全身から滲み出る雰囲気だろうか。エラルはどこか高貴な雰囲気を確かに纏っている。面差しは秀麗で、髪と同色の少し太めの眉は、しかしながら男っぽさを感じさせず、どちらかといえば柔和な性格を表しているように思える。確かに、サラが好みそうな中性的なイケメンだ。もっとも、男である命司にとっては、どうでもいい事だが。
(さて、世間話でもしたいとこだが……相手は王族だしな)
無言で歩く気まずさに、そう考え始めたとき——
「メイジ君……って、呼んでいい……かな?」
不意に沈黙を破ったのは、エラルの方だった。
「……は?」
虚を突かれた事もあり、思わず何のことを言っているのか理解できず、命司は立ち止まった。
「あ、ゴ、ゴメン。いきなり迷惑だよね……」
気恥ずかしかったのか、エラルは頬を微かに染めて、眼前で両手を何度も交差させる。
「あ、いえ、別に構いません……呼び捨てでもいいですし。というか、呼び捨ての方が気が楽で……」
(なんか、気ィ弱いのかな……)
そんな事を考えて、命司は思わず苦笑してしまう。つい、ガキの頃の自分を見ているような気になってしまった。
「……あ、じゃあ、ボクの事もエラルって呼び捨てて。ボクも、その方が気が楽だし……敬語とかも、いらないから」
一瞬の沈黙。
だがそのあとに、
「っはははっ!」
命司は思わず笑ってしまっていた。
「変わった王族なんだな。緊張して損した」
命司の態度に、エラルもまた苦笑を浮かべる。
「そ、そうかな……ただ、メイ……ジ、ボクと年近いみたいだから……友達になれたらな……って、思って……」
(王族って、やっぱそういう辺りは不便なのかね)
王侯貴族の生活なんかに興味はないが、しかし、望む相手と話をするのもはばかられるような生活は、確かに窮屈に違いない。
「俺、客には丁寧だけど、友達には言いたいことズバズバ言う方だから。それでいいなら。ちなみに、メイジ・コーダって名前ね。歳は十九」
そう言いつつ、命司が手を差し伸べると——
「その方が嬉しいかな。じゃ、改めて……ボクはエラル・メ……いや、エラル・ハシュパカル。二十歳。ボクの方が一つ上みたいだけど……学年は一緒……かな?」
——エラルもまた、命司の手を握った。
「さぁ? 俺、学校行ってないから。でもまぁ、年上だろうが遠慮なく呼び捨てるけどな。じゃ、市場に急ごうぜ」
「あ、う、うん|」
駆け出す命司に、エラルも負けずに走り出す。




