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日曜日の視線

江美は読書家だ。休日ともなれば日柄一日中リビングに腰を下ろし、近所の図書館で借りてきた文庫本やハードカバータイプの書籍を読む。今日文字びっしりで、俺が目を向けたら卒倒しそうなくらい細かな活字の羅列をすいすいと読み解いていく。江美曰く、こんなものが「面白い」らしい。本の虫が考える事は全くもって不明で、理解不能の域に達している。

江美が本を読むにあたってのお気に入りのスポットはベランダへと続く窓のすぐ隣。日差しがあったかい、だとか、雨音が心地良い、とかそんな理由で貴重な二人の休日に放置プレイを食らわされるオレの身にもなってほしい。江美は楽しくても、それを眺めるだけの俺は至極ツマランのだ。ついさっきの昼食も手短に済ませた江美は、早速読み耽る。立てた膝の上に両手に収まる程度の本を載せ、黙々と読み進めるちんまりとした江美の姿は、眼福といえなくもないが、なんというか、それはそれ、これはこれでさあ……。


あ。


江美の背中に零れる黒髪が、一束音も立てずにページの上へと零れた。音も無く、って言ったけど、例えるならそう、はらり、と。真っすぐで、なめらかで、きれいに伸びた江美の長い髪。それを指ですくって、耳に掛ける江美の横顔は、うん、やっぱり髪の持ち主にふさわしいくらい、きれい。


「……視線がくすぐったい」


思いのほか熱烈に見つめていたらしい。

聞こえるか聞こえないくらいの音量で赤ら顔の江美が呟いた。読書中に江美から話しかけることなんて滅多にないことだ。


「えー、あー、うん。……なんでも無い、デス……」


意気込みだけが空回りして、情けないったりゃありゃしない。結局視線も合わせられないまま、元の光景に戻った。何のアクションも起こせず、黙るしかなかった。


いいさ。明日も江美はいる。そのときにはたくさんいちゃいちゃさせてもらおう。

ヘタレ×文学少女。

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