ホタルブクロの新緑
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ホタルブクロの新緑
「僕は学び舎のちいさな階段。タツオくんとサリナさんが心を込めてお世話をしているひだまりのお庭に、いま、とっても美しい緑の魔法が満ちているよ。今日は、花が咲く前の瑞々しい季節のお話だよ」
春のまばゆい朝陽が優しく降り注ぐ、ある清々しい朝のことです。
タツオくんとサリナさんは、ふたりでお庭の奥にある、ちいさな特等席の前にしゃがみ込んでいました。
そこには、タツオくんがプロの職人としての確かなこだわりで、土をふかふかに整えて大切に守ってきた「ホタルブクロ(蛍袋)」の群生が広がっていました。
今はまだ、あの可愛らしい釣鐘のようなお花を咲かせる時期ではありません。けれど、地面いっぱいに広がったホタルブクロの新しい葉っぱ(新緑)は、朝露をきらきらと受けて、驚くほどに美しく、鮮やかな深緑色の輝きを放っていました。
タツオくんは、お気に入りのじょうろをそっと足元に置き、深く、深く深呼吸をしました。
「すう……はあ……。すう……はあ……。見てごらん、サリナさん。今はまだ花は咲かないけれど、この新緑の葉っぱ、生命力にあふれていて本当に綺麗だね」
隣にいたサリナさんが、ジャスミン茶のように爽やかな笑顔を浮かべて、葉っぱを優しく見つめました。
「本当ね、タツオさん! お花が咲く前のこの青々とした緑のじゅうたん、見ているだけで胸の奥がぽかぽかと温かくなって、とっても心が癒されるわ」
タツオくんは嬉しそうにうなずき、プロのガーデナーとしての優しい目(アニマ使いの心)で語りかけました。
「そうなんだ。花が咲く前のこの時期に、どれだけ葉っぱが太陽の光を浴びて、清潔で元気な状態でいられるかが一番大切なんだよ。毎日コツコツと丁寧にお手入れをして、余計な雑草(変な影)を関わらせないようにそっと抜いてあげるのが、綺麗なお花を咲かせるための最高のセーフティーネットなんだ」
「タツオさんのそういう真面目で真っ直ぐなところ、本当に素敵だわ」
サリナさんが天天真爛漫に微笑むと、タツオくんはちょっぴり耳を赤くして照れくさそうに笑いました。
そこへ、お仕事の途中に通りかかったお友達のケンジとキヨコが、生垣の向こうから賑やかな声を大にして叫びました。
「おいおいタツオ、サリナちゃん! 朝のラジオ体操のあとに何を見てるんだ? わあ、その緑の葉っぱ、めちゃくちゃ青々としていて立派だな!」
キヨコも目を大きく見開いて、手際よくバケツを持ちながら言いました。
「本当ね! 花が咲いていない今だからこそ、この瑞々しい新緑の美しさが引き立っているわ。タツオさんの職人技は見事ね!」
「みんな、ありがとう! 道具を大切にして、毎日一歩ずつお世話をしてきた甲斐があったよ」
タツオくんが胸を張ると、ケンジがお腹を抱えて笑い出しました。
「わっはっはっ! お前はお庭の手入れに関しても本当の強者だな! 花が咲いたら、真っ先に俺たちを呼んでくれよ! ガハハ!」
みんなの「わっはっはっ!」という豪快な笑い声がお庭じゅうに響き渡り、タツオくんの心の中にあった小さな不安や疲れは、すうっと優しい風に乗って消え去っていきました。
夕暮れ時、空は優しい茜色の黄昏時へと移り変わり、夜空には驚くほど大きくて綺麗な満月がぽっかりと浮かび上がりました。お家でお母様の優しい写真を眺め、ぽかぽかのお風呂に入ったタツオくんは、お布団の中でサリナさんの笑顔と、お庭の美しい新緑の景色を思い出していました。
「焦らなくていいんだ。今は花を咲かせなくても、あの綺麗な緑を大切に守っていけば、いつか最高の季節がやってくるんだから」
タツオくんは明日へのワクワクを胸の引き出しに大切に仕舞い込み、繋いだ手を決して離さない二人の暖かな愛を感じながら、穏やかで深い眠りへと落ちていくのでした。
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