56.王宮の舞踏会1
半月後、王宮で舞踏会が開催された。
シャルロットはいったん屋敷に帰り、そこから会場に行くことになった。
魔法学院の寮から帰ってきていたレオンスが、精緻な刺繍とレースで飾られた可憐なドレスに着替えたシャルロットを見、手放しで褒めてくれた。
「おまえは世界で一番可愛いよ。天使より愛らしい」
「お兄様」
シャルロットは頬を赤らめた。
黒の盛装を身にまとい、見惚れるほど格好良い兄に褒められ、シャルロットは照れてしまった。
「お兄様こそ、素敵ですわ」
兄は唇に笑みを浮かべる。
「ありがとう。シャルロットは殿下と踊ることになるだろうけれど、オレとも踊ってくれる?」
シャルロットは頷く。緊張していて、うまく踊れるかわからないが。
シャルロットは父と兄と王宮の大広間へ赴いた。
華麗な部屋で、フレスコ画の描かれた天井には、巨大なシャンデリアが燦然と輝き、いたるところに金銀の装飾が施されていた。
そこに神々しいほど目映いエドゥアールの姿があった。彼は肩章の飾られた純白の衣装を着ている。
いつも彼と会っているが、今日はまた違った印象を受け、シャルロットは目を奪われた。
「エドゥアール様」
彼はシャルロットを甘やかな瞳でじっと見つめた。シャルロットはとくんと心臓が跳ねた。
さすが攻略対象、きらきらと輝いていて別格だ。
「ドレス、よく似合っている。貴様は誰よりも美しいな」
シャルロットのドレスはこの日のためにエドゥアールが選び、プレゼントしてくれたものだった。
彼はセンスが良く、シャルロットはこのドレスをとても気に入っていた。
エドゥアールがあまりに麗しくて、シャルロットは言葉を発すことができなかった。
彼に手を引かれ、二人で会場の中央に歩み出た。
そこで婚約が発表され、招待客から大きな拍手をおくられた。
オーケストラが美しく音楽を奏でるなか、シャルロットはエドゥアールとダンスを踊った。
彼は動きがスマートで、上手にリードしてくれる。
シャルロットは緊張が解けていくのを感じた。
華やかな会場で周りから祝福を受け、エドゥアールと手を取り合ってダンスをしていると、胸が弾んだ。
ゲームのことが頭からすべて消え失せ、煌びやかなときに酔いしれた。
幼い頃からシャルロットは舞踏会に憧れを抱いていた。それでなくとも今このときは、乙女の夢そのものだった。
何曲か彼と踊ったあと、兄とダンスした。
レオンスとはよく練習で一緒に踊っていたので、踊りやすい。兄のステップは巧みだった。
憂慮していたけれど、舞踏会を楽しく過ごせていた。
「シャルロット、来い」
レオンスとのダンスを終えたシャルロットの手を、エドゥアールが取った。
エドゥアールはシャルロットを連れて、大広間から王族専用の控え室へと移動した。
大きな窓がある優美な部屋だ。ふかふかの長椅子に彼と並んで座る。
エドゥアールはシャルロットの顔を覗き込んできた。
「エドゥアール様?」
どうしたのだろう。今宵の彼はいつも以上にきらきらとして王子様度が高いので、シャルロットは鼓動がかき乱れた。
「貴様に良い知らせがある」
(良い知らせ?)
「なんでしょうか」
エドゥアールは美麗な笑みをみせた。
「実は、指輪の使用方法がわかったのだ」
「え!?」
思ってもみなかった言葉にシャルロットは吃驚した。
「わかったのですか!?」
エドゥアールは胸を張る。
「ああ、見つけた。貴様が前言っていたとおり、王族だけが読める書物に書かれてあった」
「どうやって、その本を読まれたんですの……!?」
確か王位に就いたあとでなければ、見ることができないはずだった。
「貴様との婚約が決まったし、この春、魔法学院へ入学もした。その祝いとして父上に、少し読ませてほしいと頼んだのだ。婚約も父上に嘆願するためで、魔法学院から王宮に戻っていたのも書物を読むためだ」
「そうだったんですの……!」
エドゥアールはそういった思慮深さも併せ持っていた。
「まあ、一番の理由はシャルロットと過ごしたいからだが。先日、方法が載っている本をようやく見つけた。晴れの日の今日、貴様に伝えようと思ってな」




