50.近況2
翌日、シャルロットはエドゥアールとともに、半年ぶりに屋敷に戻った。
「シャルロット!」
「お父様」
父はシャルロットを抱き寄せた。
「元気にしていたか?」
「はい」
父は変わりなさそうで、シャルロットはほっとする。エドゥアールが父に歩み寄る。
「ラヴォワ公爵、シャルロットは王宮で毎日健やかに過ごしている。安心してくれていい」
「はい……娘がお世話になり、ありがとうございます」
緊張した面持ちで兄が玄関ホールに立っていた。シャルロットは兄の前まで近づいた。
最後に会ったときよりも痩せていて、顔色も悪かった。クロヴィスが心配するのもわかる。
「お兄様、お痩せになったようですわ」
レオンスはなんでもないといったような顔をする。
「少しね」
「別荘では先に帰ってしまって申し訳ありませんでした」
「いや……オレが悪かった」
レオンスの顔がこわばる。
「シャルロット、王宮から戻ってくるのかね?」
父に訊かれて、シャルロットはかぶりを振る。
「いえ、まだ滞在する予定です」
「そうなのか……?」
兄の表情が哀しげに翳った。シャルロットは気持ちが揺らぎそうになる。
「シャルロットのことは俺が責任をもって見ているから、何ら心配することはない」
エドゥアールが父と兄に力強く伝える。
父はエドゥアールを屋敷内に誘った。
「殿下、せっかくいらしてくださったのですから、どうぞ中へ」
「ああ」
その日シャルロットは、エドゥアールを交え、久しぶりに家族と食卓について夕食をとった。
レオンスがきちんと食事をしているのを目にし、会話も交わせたことにシャルロットは安堵した。
食事後、エドゥアールがレオンスに声を掛けた。
「レオンス。魔法学院で同学年となる貴様とも、もっと話がしたい。明日にでも王宮に来てもらいたい」
レオンスは首肯した。
「わかりました」
そうして、シャルロットは屋敷を後にした。
馬車の中でエドゥアールが言った。
「明日、レオンスが王宮に来れば、貴様も話をすればいい。二人だけで話したいこともあるだろう?」
シャルロットはエドゥアールの気遣いに驚いた。
確かに二人だけで話したいことはあった。エドゥアールは俺様なのだが、配慮してくれる思いやりもあるひとだ。
あくる日、レオンスが王宮にやってきた。
「先に兄妹で話せ」
エドゥアールにそう言われたので、シャルロットは自分が滞在している部屋でレオンスと会った。
「今、この部屋で暮らしているの?」
「はい、お兄様」
兄は室内を見渡す。
「上品で趣味の良い部屋だね。さすが王太子殿下の宮殿だ」
レオンスは睫を伏せる。
「王宮では殿下と仲良く過ごしている?」
「エドゥアール様と食事を一緒にとったり書庫に行きますが、わたくし、王宮で武術の稽古をしたり勉強をしていて、仲良くずっと過ごしているというわけではありませんわ」
「そう」
シャルロットは、シャープになった兄の横顔を見つめる。
「お兄様はどうですか。お疲れのように見えますし、忙しくされているのではありませんか?」
兄は安心させるように微笑む。
「特に前と変わらないよ」
「ですが……倒れられたと聞きましたわ」
「誰に?」
「クロヴィス様から」
「……口止めしていたのに……」
レオンスは髪をかきあげる。シャルロットは兄がクロヴィスに悪感情を抱かないように言い添えた。
「クロヴィス様はお兄様をとても心配されているのですわ」
「おまえが昨日、屋敷に戻った理由がようやくわかったよ。クロヴィスに頼まれたのか」
「それだけではありませんわ」
「彼は大袈裟に話してる。心配することはないよ」
レオンスはシャルロットの頭を撫でた。久しぶりに兄に撫でられ、複雑な思いが交差した。
「……お兄様、別荘で伺った話なのですが……」
兄は手を離し、肩をすくめた。
「あのとき言ったことは冗談だ」
「え」
シャルロットは顔をあげた。
「冗談なのですか?」
「ああ。おまえがあまり可愛いから、からかいたくなって」
明るい笑顔を浮かべるレオンスに、シャルロットは気が抜けるのと同時に非常に腹が立った。




