43.王宮に滞在
シャルロットは向かいの席に移動した。
「わたくしに何かしたら、扉を開けてここから飛び降ります!」
エドゥアールは両手を上にあげた。
「今は何もしない」
今は?
シャルロットは眉を寄せたが、馬車が夜道を走り、朝、ラヴォワ家に到着するまで彼は何もしてこなかった。
シャルロットは、別荘で心配しているだろう兄に、家へ帰ったことを知らせる連絡をした。
そのあと王宮を訪れた。
エドゥアールから王宮にいたほうが、指輪について調べやすいだろうと勧められたのだ。
確かにそうだったし、兄が帰ってくれば屋敷で顔を合わせることになる。
今、どんな顔をしてレオンスと会えばよいかわからなかった。
告白の衝撃が大きかった。
嫌だとか、受け入れられないとか、そういうことではなかった。
嬉しく思う気持ちもあった。
自分たちは実の兄妹ではない。レオンスは攻略キャラの一人で。ゲームプレイ中はきゅんきゅんとしていたし、今だってどきどきすることはとっても多い。
けれど自分は今、ここで生きている。ゲームではなく現実であり、兄妹として過ごしてきた。
あくまでレオンスを兄としてみてきた。そのため、混乱状態にあった。
落ち着くまで会えない。それが今の正直な気持ちだ。
エドゥアールは、王宮の一室にシャルロットを案内した。
彼の宮殿にある部屋だった。
「わたくし、エドゥアール様のものになる気はありませんから!」
シャルロットがはっきり宣言すると、彼は小さく笑った。
「シャルロットを手籠めにするために部屋を用意したのではない。ここからなら書庫に行きやすいだろう。それに貴様は今、自分の家にいたくないのでは?」
言い当てられて、シャルロットは唇を噛む。
「違うか?」
シャルロットは溜息をついて、言葉を発した。
「いいえ、違いませんわ」
エドゥアールは目を細める。
「なぜ家にいたくない」
「……家族のことで悩みがあります」
エドゥアールは両腕を組み合わせる。
「貴様の兄は、貴様を溺愛していることで有名らしいな。それでは息が詰まろう。しばらく離れたほうが互いのためだ。ここでしばらく過ごせ」
シャルロットはエドゥアールを仰ぐ。
「よろしいのですか?」
「構わん」
屋敷に帰りたくなかった。今は兄と向き合えない。それでシャルロットは考えた末、王宮に滞在させてもらうことにした。
それから毎日、王宮書庫で本を読み、指輪のことを調べた。エドゥアールも手伝ってくれた。
書庫にある長椅子にエドゥアールと座るのだが、いつも彼はやたらと距離が近かった。
シャルロットは離れようと試みるのだが、そうするとエドゥアールも移動して近づいてきて、いたちごっこなのである。
シャルロットは彼を睨んだ。
「エドゥアール様、わたくしの邪魔をしてらっしゃいますの?」
「まさか」
エドゥアールは大仰に驚いてみせる。
「俺が指輪を見つける協力をしたのを忘れたか? 使用方法を探す手助けもしようと思っている」
願いの叶う指輪は、彼の協力がなければ、決して手に入れることはできなかった。
しかし今、傍で邪魔をされている気がしてならないのである。
「では、どうしてそんなに近づくんですの?」
「別に普通ではないか?」
「普通じゃありませんわ。他のかたをご覧ください。明らかに、エドゥアール様は距離が近すぎます」
彼は周りを見回す。
「そうだろうか」
「そうですわ」
しかし傍には読書しているひとが見当たらず、自分たちだけだった。
いつも書庫の奥で読書しているからだろう。
ここはゆったりと長椅子が置かれていて、居心地が格段によく、シャルロットも気に入っている場所だ。
シャルロットは目をつり上げていたが、美少年のエドゥアールを見ていて心臓の鼓動がだんだん速まってきて、赤くなって視線を移動させた。
ゲームの攻略対象は皆イケメン過ぎる。




