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悪役令嬢は攻略対象の愛から逃れられない  作者: 葵川 真衣


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41/60

41.兄と別荘に2


 シャルロットはぎくりとしながら、はぐらかした。


「朝の新鮮な空気を吸いたくて。少し外に出ていたのですわ」


 レオンスはさらりとした髪を揺らせ、首を横に振る。


「一人では危ない。出るときは、オレと出よう」

「はい……」


 まだ試していない方法が一つあった。月にかざしてみることだ。ここに来てから夜は曇っていたので試せなかった。

 今夜晴れたらこっそり抜け出そう、とシャルロットはひそかに企てた。



 その日の夜は晴れた。

 抜け出す算段をしていると、レオンスに隣室へ呼ばれた。

 兄は突如切り出した。


「おまえとクロヴィスとの婚約だが、考え直したほうがいい」


 長椅子で兄の隣に座ったシャルロットは首を傾げた。


「どうしてです?」

「おまえはクロヴィスを元々怖がっていたよね?」

「ええと……最初は確かに緊張していました。今は誠実な良いかただと思っています」

「婚約は解消したほうがいい」


 兄ははっきり言葉にした。


「結婚は大分先だし、オレから父上に話すよ。いったん婚約は解消すべきだって」

「お兄様、突然どうしたんですの? クロヴィス様との結婚を賛成してらしたのに」


 兄はくしゃりと髪をかきあげた。


「クロヴィスは悪い人間ではないが、おまえとはやはり合わないんじゃないかと思うんだよ。シャルロット、オレとクロヴィスと、どちらといるほうが居心地がよい?」 

 

 シャルロットは思考した。クロヴィスとはあまり話さないけれど、嫌というわけではない。

 沈黙が続いても、落ち着く感じがする。真面目な彼への印象は良かった。

 

 しかしレオンスとどちらといて、より居心地がよいかと問われれば、答えは兄になる。

 兄妹という間柄で気を許せるし、兄はとても優しい。


「それはお兄様ですわ」


 シャルロットがそう答えると、レオンスは微笑み、シャルロットを抱擁した。


「だろう? だからオレは考えたんだ。おまえとはオレが結婚しようと」

「……え?」


 シャルロットが唖然とすると、レオンスは抱き寄せながら続けた。


「おまえを最も幸せにできるのは、オレだと思う。だからシャルロット、オレと結婚しよう」


 兄はまた何を言っているのだろう?

 シャルロットは目を丸くする。


「お兄様とわたくしは兄妹ですわ?」

「ああ、オレたちは兄妹だ。でも本当の兄妹ではなく、いとこなんだ。結婚できるよ」


 確かにそうだけれど、記憶が戻ったあと、シャルロットはレオンスを兄としてみてきた。兄妹仲良くなりたいと。


「お兄様、冗談でしょう?」


 レオンスはシャルロットの髪に指を絡める。


「本当はもう少し経ってから話そうと思っていたんだ。だが今のまま、おまえとクロヴィスが婚約しているのはつらいんだ」


 兄はシャルロットの髪に口づける。


「異性としておまえが好きだから」


 言葉を失うシャルロットをレオンスは切なげに見つめた。


「兄だと思っていたオレにこんなことを言われて、困るだろうね。だがこのまま兄として見守ることはできない」

「わ、わたくし……」


 シャルロットはレオンスから離れ、立ち上がった。そんなことを言われて、今までと同じようにはいられなかった。


 レオンスは哀しげに瞳に影を落とす。


「シャルロット……」

「……わたくしもお兄様のことは好きですわ。でも……お兄様はお兄様なのですわ……」

「突然、混乱させることを告げてしまってすまない。だが、今話したのがオレの正直な気持ちなんだ。今すぐには無理でも、いずれオレを受け入れてくれないか」

「し、失礼します……!」


 シャルロットは逃げるように、隣の部屋に戻った。

 思わず扉の鍵をかけてしまう。


(お兄様)


 今の話は本当のことなのか。

 兄が異性としてシャルロットのことを好きだなんて。何かの冗談なのではないだろうか。

 ゲームではもちろん、こんな場面なかった。

 レオンスは悪役令嬢に辟易しており、表面上だけ丁寧に接していて。

 

 シャルロットは熱い頬を押さえる。今は混乱していて、何も考えられなかった。


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【カクヨム版】
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