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悪役令嬢は攻略対象の愛から逃れられない  作者: 葵川 真衣


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40.兄と別荘に1




※※※※※




「シャルロット、別荘に行かないか?」


 夜、レオンスに勉強を見てもらったあと、そう言われた。


「来年になれば、オレは寮に入る。週末と長期休暇以外では外出できないから。その前に、おまえといろいろなところに行って、思い出を作っておきたいんだ」


 レオンスは来年、全寮制の魔法学院に入学する。今のようには過ごせなくなる。

 シャルロットはそれを思えば、心に風が吹くような寂しい心地がした。いつも兄が傍にいるのが当たり前のようになっているので、心細い。


「だから二人だけで別荘に行かない?」

「二人だけで?」

「ああ。使用人は何人か連れて行くけれど、父上はお忙しいし、オレたち兄妹だけで」

 

 シャルロットは考えた。

 日々の鍛練は一人でもしようと思えば可能だった。

 何より別荘の周囲は森が広がっていて、指輪を使う方法を試せる。

 

 指輪をどのように使って願えばいいかまだわからないのだが、他の宝物の使用方法について幾つか本に載っていたのだ。

 爆発などが起き被害が出てしまうといけないと躊躇していたが、別荘近くの森で試してみれば被害は最小限に抑えられる。


「はい、お兄様。行きます」


 シャルロットが返事すると、レオンスは微笑み、シャルロットの額に口付けた。


「ありがとう、シャルロット」


 耳元で囁かれ、シャルロットの胸はどきんと大きく音を立てた。


 今日は自室で勉強を教えてもらっていたのだが、レオンスが退室すると寂しさを覚えた。

 デュティユー侯爵家に行っていたときも、兄に会いたくなって帰ることにした。閉じ込められるのはもう御免被りたいけれども。




 一週間後、シャルロットは兄と馬車で、ラヴォワ家の別荘へと向かった。

 早朝に屋敷を出発し、暗くなる前には別荘に到着した。

 景色の美しい場所で、空気は清々しい。

 

 別荘の管理人に事前に知らせていたので、すでに室内は整えられていた。

 シャルロットは二階の一室を使うことになった。兄の部屋は隣だ。

 壁に扉がついていて、廊下に出なくても互いの部屋を行き来できるようになっている。

 

 夕食と入浴を終え、シャルロットが本を読んでいると、二室の間にある扉が叩かれる音がした。

 この扉をノックするのは兄だけである。

 鍵はついていたが施錠せず、そのままにしていた。


「どうぞお兄様。開いていますわ」


 扉が開き、レオンスが中に入ってきた。

 兄は入浴したばかりのようで、髪の先がまだ少し濡れていて、それが色気をより醸し出していた。


「このあたりは暖かくて、過ごしやすいね」

「はい」


 夜でも寒くなく、バルコニーの外には広大な自然が広がっていて、爽やかで心地よい。


「ここまで移動して、疲れただろう?」

「いえ、そんなことありませんわ」

「肩を解してあげるよ」

「え……そんな悪いですわ」


 レオンスは微笑した。


「遠慮することはない。オレたちは兄妹なんだ」


 兄に促がされて、シャルロットは長椅子に座った。

 レオンスが肩を揉み解してくれれば、身体がぽかぽかと温まり、疲れがすべて消えていくような気がした。


「ありがとうございます、お兄様。とても気持ちよかったですわ」


 兄はにっこり笑った。

 シャルロットは温まったこともあって、うとうととしてしまう。


「眠くなったんだね」


 兄はシャルロットを抱え上げ、寝台にシャルロットを横たえて、羽根布団をかけてくれる。


「おやすみ、シャルロット」

「……おやすみなさい」

 

 抱きかかえられて、またどぎまぎしてしまった。

 兄が退室しシャルロットはすうと眠りに引き込まれた。

 



 あくる日はレオンスと別荘の近くにある泉に行き、散策した。シャルロットは指輪の使いかたを調べたかったが、兄がいつも傍にいるので試せなかった。

 それでその翌朝、一人で別荘から出て森に行った。


 光にかざしてみたり、呪文を唱えたり、魔法陣を描いたり、いろいろ試してみたが、一向に何かが起きる気配はなかった。

 やはり、他の宝物の使用方法では駄目なのだろうか。


 気落ちして別荘に戻ると、起きていた兄に不審そうに見られた。


「どこに行っていたの、シャルロット」


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