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悪役令嬢は攻略対象の愛から逃れられない  作者: 葵川 真衣


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39/60

39.距離感がおかしい2


 指輪の使いかたについて記されていないか探したものの、見つからなかった。

 西日が差し込んできて、そろそろ帰ろうとすると、エドゥアールが立ち上がってシャルロットに声をかけた。


「引き続き、俺も探しておいてやる」


 シャルロットはエドゥアールに礼をして、ユーグとともに書庫を出た。

 エドゥアールは決して悪いひとではないのだが、本当に王子様らしい王子様だ。


 馬車に乗ると、ユーグがおもむろに口を開いた。


「シャルロット様……指輪、殿下と一緒に探されたのですか?」


 シャルロットは顎を引く。


「そうですわ。他のひとには内緒にしているのですが」

「地下洞窟で、ずっと殿下と一緒に?」

「はい」

「そうですか……」

「このことは誰にも話さないでいただきたいのです。特にお兄様には。心配されるので」


 シャルロットがお願いすると、ユーグは承諾してくれた。


「わかりました。内緒にします」


 彼はしばらく黙っていたが、ふいにシャルロットの手を取った。


「? ユーグ様?」


 どうしたのだろう。


「シャルロット様。本当に婚約者のかたと結婚されてしまうのでしょうか?」


 シャルロットは突然手を取られ、目を瞬く。

 ゲームがはじまれば、ヒロインが登場する。それにより婚約は解消になるとシャルロットは考えていた。


「いえ、今は婚約の段階ですから。そのまま結婚になるかどうかはまだ」


 ユーグは距離を詰めた。


「もし婚約が解消になれば、ぼく、シャルロット様の婚約者として名乗り出たいのですが」

「え?」


 彼は頬を朱にして続ける。


「シャルロット様といると、心が和らぐのです。今日、殿下といるのを見てつらくて……。やっぱり諦められないと思ったのです」


 どういうことだろう。

 ユーグはシャルロットをひたむきに見つめた。


「今の婚約が解消となれば、ぼくと結婚してもらえませんか?」


 シャルロットは目をぱちくりとした。


「ユーグ様と?」

「そうです」


 彼はシャルロットの手を強く握る。


「ぼくのようなものが、シャルロット様に求婚するなんておこがましいですが……」

「おこがましいなんて、そんなことはありません」


 彼はすべて揃ったひとなのに謙虚だ。ユーグは控えめに訴える。


「では考えてはもらえませんか? 今ぼくたちは友人ですし、シャルロット様は別のかたと婚約中ですから、今すぐ返事が欲しいわけではありません。ただ考えてほしいのです」

「はあ……」


 シャルロットは困惑した。


(なんだか攻略対象の様子が皆おかしいような?)


 平穏ではあるものの、誰も彼も距離感が変だし。

 兄は部屋に閉じ込めるし。クロヴィスは結婚を早めたいと、エドゥアールは婚約する気だったと、ユーグは結婚を考えてほしいと言う。 

 

 一体、どうなっているのか……。




※※※※※




「殿下とシャルロットがかなり親しくなっている……!?」

「はい」


 シャルロットを家に送り届けたあとユーグは、レオンスに呼ばれて彼に今日のことを報告することになった。自分は今、レオンスの目となり耳となることでシャルロットの傍にいることが許されているのだ。

 ユーグは事実を話す。


「今日、王宮の書庫で殿下とお会いしたのですが……殿下はシャルロット様の隣に座り、至近距離にいました。二人は打ち解けていて、親密そうでした」

「なんだって……!?」


 見たことを伝えたが、彼女が指輪を王太子と探していた件などは伏せた。内緒にすることになっている。


 レオンスは苛々と室内を歩く。


「妹は半月ほど王宮に行っていた。神殿の仕事の手伝いをしているとのことだったが……やはり殿下に会わされていたのか……」

 

 彼女はその期間に、地下洞窟で指輪探しをしていた。

 それを話すつもりはないが、エドゥアールの様子を見るにつけても、シャルロットに気があるのは明らかだった。

 

 このままにはしておけないので、二人の距離が縮まっていることはレオンスに報告した。

 レオンスは憤って青ざめている。

 

 ユーグは、シャルロットの婚約を知り、ショックで三ヵ月近く王都を離れたが、よくよく考えれば、レオンスがシャルロットを誰かと結婚させるわけがないし、何か裏があるに違いなかった。恐らくレオンスはいずれシャルロットの婚約を解消させる。

 ようやくそう思い至り、ユーグは王都に戻ったのだった。


「よかったよ、君をシャルロットの傍につけておいて。状況を知れた」

「いえ」


 良心が痛むが、大好きなシャルロットといるため、彼女との将来のために、今は彼女の兄の信頼を得なければならなかった。


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