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悪役令嬢は攻略対象の愛から逃れられない  作者: 葵川 真衣


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32/60

32.妃に迎える


「ここを探しましょう!」

「シャルロット、俺はここに何度も来たが、指輪はなかったぞ」

「それでも念のため!」


 シャルロットは彼とその空間を探しはじめた。

 ここにある気がする。あまりにもゲームの重要シーンの煌めきと同じなので、その一点でシャルロットはあると思った。

 ──が、くまなく探したが見つからなかった。


「ないだろう?」


 シャルロットは思い悩む。他にゲームで印象的だったのは……。

 ──魔法。主要キャラは皆、魔力を保持しているのだ。

 指輪同様、魔法もいにしえから伝わるものである。


「エドゥアール様の魔力は『火』ですわよね?」

「そうだ」

 

 指輪は王家に言い伝えられるもの。

 王族の血を引く者の魔力が必要なのかもしれない。

 シャルロットは一つの予測を立て、エドゥアールを仰いだ。


「エドゥアール様の魔力をここで解放してみてくださいませんか」


 エドゥアールは眉を寄せる。


「ここで火がおこれば危険ではないか?」

「大丈夫です。わたくしも『火』の魔力を持ちますから」


 彼は納得したように顎を引いた。


「なるほど。同じ魔力をぶつかり合わせれば、打ち消すことが可能だ」

「はい。万一、燃え広がりそうならわたくしも魔力を解放します」


 エドゥアールは息を吸い込む。


「わかった」


 彼は目を閉じ、片手を前に突き出した。すると赤い炎がザッと辺りを包み、金の星を照らした。

 瞬間、目映いほどその場が輝いたと思うと、炎が消滅し、きらきら光る星の一つがぱりんと音を立てて弾けた。そこから金の指輪が現れ、空間に浮かび上がった。


「指輪……!」


 光り輝くなか、エドゥアールは指輪を手に取った。


「金の指輪と言い伝えられている。これだ!」

「よかった! 見つかりましたわね!」


 シャルロットはぴょんぴょん飛び跳ねて喜んだ。

 エドゥアールは微笑む。


「これは貴様にやる。だが願いを叶えるには、何らかの方法をとる必要があるぞ。このまま願いを言っても意味はない」


 シャルロットは頷く。


「その方法も見つけますわ。指輪、本当にいただいて良いんですか?」

「ああ。貴様のものだ」

 

 彼はシャルロットの左手の薬指に指輪をはめた。

 シャルロットは目を瞬いた。


(……え……この位置って)


 結婚指輪をはめる場所では? 

 彼は笑顔で告げた。


「いずれ俺は貴様を妃に迎える。だからこの位置だ」


 シャルロットは呆気にとられる。


「わたくしには婚約者がいますわ」

「これからどうなるかわからないだろう」


 彼は跪き、シャルロットの手に口付けを落とした。

 きらきらと煌めく神秘的な空間で、王太子に跪かれてキスをされ、シャルロットは心臓が跳ねた。

 彼は艶やかな瞳でシャルロットを見つめる。


「いずれ貴様は俺の妃になる」

「エドゥアール様の妃になったりしませんわ……!」


 絡めとるような彼の視線から逃れるように目を逸らせた。彼は喉の奥でくつくつと笑う。


「指輪……ありがとうございます」


 エドゥアールは頷き、もう一度手に口付けを落とした。




※※※※※




 指輪が見つかり、喜んでいるシャルロットを見、エドゥアールは彼女をとてつもなく可愛く思った。

 唇を奪いたいくらいだったが、彼女の手に口付けを落とすに留めた。


 彼女を妻に迎えたい。

 

 六歳のとき獣化したエドゥアールは、獣に変ずる己を恥じていた。

 幼い頃、違和感を覚え、衝動に任せれば、金色の豹となって。

 

 母はエドゥアールを気味悪く思い、地下洞窟に閉じ込めた。

 次男のエドゥアールはどうでもよかったのだ。

 父からも縁起が悪いと言われた。


 だが母と兄が亡くなり、エドゥアールは地下洞窟から出され、王太子となった。

 その当時のことは思い出したくない。よく思い出すことも、できずにいる。

 地下洞窟に二度と足を踏む入れることはないと思っていた。


 しかし指輪を探したがっているシャルロットを手伝うことにした。

 シャルロットは獣化のことを、すごい能力で、天からの祝福だと言った。

 素晴らしい力だと。

 

 変わった娘である。元々シャルロットのことが気にはなってはいたが、強く惹かれ、自分のものにしたくなった。

 婚約をしようとすれば、一足先に、デュティユー侯爵令息が彼女と婚約してしまった。

 エドゥアールは苛立ち、シャルロットに無体な真似をしてしまった。

 

 冷静になれば自身の言動を悔いた。

 彼女は、今すぐ結婚するわけではない。

 ただ今は、婚約したというだけ。まだ他の誰のものでもない。

 

 いずれシャルロットはエドゥアールのもとに必ず嫁ぐことになる。


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【カクヨム版】
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