31.地下洞窟2
それは──ゲームである。
この世界にはない。というか、この世界自体がゲームなのである。
「本当に……わたくしも気になっていて。思い出したいのですけども……」
シャルロットはそう答えて誤魔化し、彼とともに地下洞窟を歩いた。
「ここは広い。もし指輪があったとしていても、発見は難しいぞ?」
「ええ。それでも見つけたいのです」
「幸せになるためにか?」
シャルロットは首を縦に振る。殺される未来を辿らないように指輪が欲しかった。
「俺が貴様を幸せにしてやる」
エドゥアールはシャルロットの手を掴んだ。
「エドゥアール様?」
彼は唇の端を持ち上げる。
「迷子になる、手を繋いでおこうか」
何かされるのではと一瞬身構えたが。彼はシャルロットの手を握っただけだった。
緊張するも、実際迷子になって出られなくなると困るので、そのままにしておいた。
少しすれば建物が視界に入った。ゲームの回想シーンで見た場所だ。
(あれは……)
隣で彼が低い声を発した。
「俺は六歳から七歳までの間、あそこで暮らしていた」
エドゥアールは六歳のとき獣化し、母親に閉じ込められた……。
表向き、療養のために王都から離れたとされて。
彼は唇を引き結び、建物の扉を開いた。中には家具調度品が当時のまま置かれていた。
「あることが原因で、俺は閉じ込められた。本を読むか、剣術の稽古くらいしかすることがなかったな」
エドゥアールは扉を閉める。
彼が閉じ込められた原因は、獣化を王妃が恐れたからだ。
「当時、洞窟内を探検したが、指輪はなかった。もしあるなら俺が通らなかった場所にあるということになる」
それでシャルロットはエドゥアールと、彼が幼い頃行かなかった道を進んでみた。
──だがその日、指輪を見つけることはできなかった。
シャルロットが落ち込むと、エドゥアールは苦笑した。
「そう簡単には見つからないだろう。また探しにくればいい」
シャルロットは気を取り直し、頷いた。
「はい」
これだけ広いのだし、すぐには発見できないだろう。
彼と次の約束をして、その日は帰った。
それからシャルロットは王宮に通うようになった。
兄やクロヴィスに心配されたので、エドゥアールと会っているのではなく、神殿の仕事の手伝いをしていると説明した。神殿では人手が足りず、王宮に行った際に引き受けたと。エドゥアールからも家にそのように連絡を入れてもらった。
実際は地下洞窟で、エドゥアールと指輪を探しているのだが……。
探検して疲れると、昔エドゥアールが暮らしていた建物で休憩をとる。
そこには食べ物や飲み物が置かれていた。
エドゥアールが侍従に中を整えさせ、食事を用意させたのだ。
二人でいても、お茶会の日のようなおかしな真似をされることはなかった。
一緒に指輪を探してくれ、シャルロットは彼に感謝を覚えていた。
地下洞窟を捜索して、半月経った。
ゲーム自体に指輪のありかのヒントが隠されているのではないかと、シャルロットは考えはじめた。
(ここはゲームの世界だし)
『聖なる乙女のラビリンス』では重要なシーンにおいて、金色の星がよく使われていた。恋を自覚したり、攻略対象と想いを交わし合ったり、グッドエンドを迎えると、金色の星がきらきらと画面上で舞うのである。
シャルロットはダメ元で訊いてみた。
「エドゥアール様、この洞窟に金色の星のようなものが、きらきらと舞う場所ってありませんか?」
「あるが」
シャルロットは目を見開いた。
「えっ!?」
(あるの!?)
「ここに閉じ込められたときに、綺麗だったからよく見に行っていた。だがそこには指輪はなかったぞ」
「わたくし、そこに行ってみたいです! 連れて行ってくださいませ!」
シャルロットはエドゥアールを急き立て、今まで歩いていなかった逆方向に足を踏み入れた。
すると実際に、きらきらと金色に煌めく空間に出たのである。
(これは……っ! ゲームの重要場面のきらきら星と非常に似ているじゃないの……っ!)
シャルロットはテンションが爆上がりした。




